小話3 コビトと食事

 器が小さければ容量も小さい。細身の大食いユーチューバーもいたりするので体質は人それぞれだろうが、私の場合は身長相当だった。

 コース料理は到底食べきれない。飲み会の席では、大皿で来れば極力少なめに盛り、個別に配膳されれば隣に一皿二皿は回す。結果、飲まないし食べないので割り勘だと損をすることになる。ビュッフェ形式でも同じ理由で割を食う。何も考えずに取ってしまうと後悔することになるので作戦を練った。パスタや肉料理など重めの品は避け、好きなデザートのために胃のスペースを空けておくのだ。

 特に楽しめないのが食いだおれ旅行である。旅先で土地の食べ物を楽しみたいのに、言葉のとおり具合を悪くし倒れかねない。幸いいつも旅行に出かける友人二人がよく食べる人たちなので、私が食べきれなくても代わりに気持ちよくもりもりと食べてくれる。ちなみに三人の身長は大きさ順に大、中、小となっている。

 インドカレー屋に行けば、ナンは半分食べられればいい方だ。前述の二人はナンをおかわりしてルーが足りないと困っている。ラーメン屋には一人で行けない。入りづらいのではなく食べ切れないからだ。

 上司に食事に連れて行ってもらった際には、「君はおごり甲斐がないなあ」と残念がられたことがある。ならばどうして私をステーキ屋に連れて行った。ギリギリ食べ切れる一番安いメニューを選ばざるおえないのだから仕方ない。とはいえ、一緒に行った女性が気を遣ってボリュームたっぷりのメニューを頼んでいるのを横目に申し訳なく思った。

 祖父母の家では、「たくさんお食べ」と言われてもすぐに満腹になり、せめてサラダを摘んでいたら親戚に「ウサギみたいだな」と呆れられた。ウサギは私の一番好きな愛らしい生き物だけど、良い意味で言われたとは思えない。

 エンゲル係数は低めになるので家計には優しい。小さなお茶碗に小盛りにご飯をよそい、食後にデザートを食べているものだから夫には、「米を食べなさい」と窘められる。少食にも別腹はあるのだ。

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