徒然ww
京野うん子
★序段 つれづれなるまゝに
【徒然草 序段 原文】
つれづれなるまゝに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
【本文】
日も落ちて、職員室。窓の外は暗い。
カタカタとキーボードを打つ音だけが響く。
俺以外に人の姿はない。
一人職員室に残ってテスト問題を作成中だ。
「……三大随筆を全て答えなさい、と。出来た! 終わったー!」
期末テスト問題が出来上がった。すっかり冷めてしまったコーヒーに口をつける。
ふぅ、やっぱり冷めたコーヒーは不味いな。
しかし、何だろうな。一仕事終えた後の、宵の口のリラックスしてる時ってムラムラしてくるのは何故だろうか。何故か解らないがやたらにムラムラする。
ムラムラするのだ。
『徒然ww 序段 つれづれなるまゝに』
「お疲れ様です卜部先生。もうお帰りになられます?」
帰り支度をする俺に声を掛けてきたのは我が心のマドンナ、2年5組担任の社会科教師、
水泳部の顧問で、今も薄手のパーカーの下はピッチピチの競泳水着という挑発的な格好で俺のムラムラした心をさらに乱してくる。
推定Dカップのナイスバディに幼さが残る可愛い顔立ち。正直付き合いたい。
「お疲れ様です。ちょうど帰るところですが何か?」
「実は、テスト問題のチェックをお願いしたいんですけど……」
自分の仕事がやっと終わったのに、今から他人の仕事なんて…と他の先生だったら断る所だが、我がマドンナの頼みだ。快く引き受けよう。
「大丈夫ですよ。今から見ましょうか」
「わあ、ありがとうございます! 終わったら一緒にご飯どうですか? お礼にご馳走させてください」
マジか? 二人っきりか? これは誘ってるのか?
「いいですね。二人で、でしょうか?」
「はい、二人きりで。私着替えてきますね」
「わかりました。では問題をチェックしておきます」
軽くウィンクをして職員室から出ていく。これは……そういう事だろうな……。
ご飯の後に部屋に誘われちゃったりして、その後は大人の……
っとイカンイカン。ムラムラしてる場合ではない。ちゃちゃっとチェックを終わらせてしまおう。
えーと、地理か。何で国語教師の俺に頼むのかはわからんが、中学の地理ぐらいならわかるだろう。
何々?
〈問い1 観光地としても有名な、日本で二番目に大きい砂丘の名前を答えなさい〉
楽勝だな。答案用紙に答えを記入していく。
あ、ムラムラしていたせいか、記入ミスをしてしまった。
〈答え 鳥取恥丘〉
鳥取の人に怒られるわ!
砂場はないけど濡れ場はあるよ、ってか。やかましいわ!
気を取り直して次の問題にかかる。
〈問い2 一年中、西から吹く風の事を何というか答えなさい〉
これも簡単だ。すぐに答えを記入する。
あ、また記入ミスをしてしまった。
〈答え 変態風〉
ヤバすぎるだろ! なんだかパスタの料理名の最後みたいになっちまった。
茄子とベーコンのペペロンチーノ 変態風
って、どんなパスタだ! これが一年中はマズイだろ。
イカン、これはイカン。ムラムラしてるにも程がある。
こういう時は一度全部吐き出してしまうに限る。
性字家活動だ。
性字家活動とは頭に浮かんでくるどうしようもない卑猥な言葉を紙に書きなぐる事で、煩悩を払う神事だ。
答案用紙をひっくり返し、裏面にひたすら書いていく。書いていく。
出し切った所で表に戻し、問題に取り掛かる。よし、大丈夫そうだ。スラスラと問題を解いていき、チェック終了だ。
「お待たせしました。チェック終わりました?」
抄子先生が着替えを終えて戻ってきた。水着もいいがブラウス姿もいい。早く付き合いたい。
「はい。特におかしいところは無いと思いますよ。誤字やミスプリントも無かったです」
抄子先生に問題用紙と答案用紙を返す。
「あ、問題やってくれたんですね。流石ですね! 満点じゃないですか。あれ? 裏面に何か……」
答案用紙をひっくり返し裏面を凝視する抄子先生。優しそうな表情がみるみるうちに鬼の形相へと変化していく。
答案の記入ミスは書き直したが、裏面に書いた性字を消すのを忘れていた。どうしようもない卑猥な言葉が抄子先生の目を汚していく。
ちんこ、おっぱいに始まり、48手の箇条書きやお世話になっているセクシー女優の名前など、どうしようもない卑猥な文字の数々。
抄子先生は顔を真っ赤にして拳を震わせている。やがて俺の方に真っ赤な顔を向けると、強烈な張り手を繰り出した。
「このド変態!」
罵声と共に、バチーンッ! っと俺の頬を凄まじい衝撃が襲った。
「さようなら!」
怒って出ていってしまった。一人職員室に取り残される。ああ、デートが……大人の夜が………。
冷めたコーヒーのカップを熱くなった頬にあてて冷ます。痛みを通り越してもはや快感である。なんだろう、また異様にムラムラしてきてしまった。
「帰りにレンタル屋寄ろうっと」
出来れば抄子先生似の教師物がある事を願って、職員室の照明を消した。
【徒然草 序段 現代訳】
やる事がなくてぼーっとしているうちにムラムラしてしまい、一日中ペンを握り締めて、心の中に浮かんでは消えていくどうしようもないことを、紙にとりとめもなく書いていたら更にムラムラしてしまった。
【解説】
※
世間では「気の向くままに」と訳される事が多いですがこれは誤りで、徒然の本当の意味は「暇すぎる」が正しいです。
なので序段で吉田兼好は、「暇すぎたから適当に書いてたらワケわからんくなったわ」って言っています。
筆者は暇な時間があるとついエッチなサイトなどを見てしまうので、上記のような現代訳文が生まれました。
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