第40話 妖しい光

 オルムの手の中で鬼丸が妖しい光を放つ。

(さぁ主殿。私の言う通り動いて下さい。)

 頭に鬼丸の声が響く。


 オルムは目を開けるとスルトと対峙するヴァナルに声をかける。

「ヴァナル。少し離れてくれ。」


 オルムの纏う空気が変わった事に気付いたヴァナルはスルトから距離を取り様子をうかがっている。



 オルムはヴァナルがスルトから離れ、スルトが此方の様子をうかがっているのを確認すると、刀を鞘にしまい目を閉じ大きく息を吸った。


 オルムが目を開き刀を構える。

「いざ参る!」

 オルムの瞳が紫色に妖しく光る。


 スルトがレーヴァテインを構えオルムの動きを観察しているとオルムの姿が消えた。

 しかし、周りからは無数の足音が微かに聞こえた。

「ほう。高速で動き回り気配を撹乱させているのか。ならば!」

 スルトはレーヴァテインを地面に突き刺す。

「"炎神の領域"!」

 レーヴァテインを刺した場所から地面を炎が拡がっていく。

「これで近ずけまい!」

 スルトは辺りを見渡す。

「足音が消えた…何処だ!?」


「"空壁(くうへき) "」

 オルムは上空に飛び上がっていた。

 空中を蹴りスルトに向かって急降下する。


「小癪!」

 スルトはレーヴァテインを引き抜きオルムに突き出す。

「"炎神の矛"」

 レーヴァテインの剣身に炎が渦巻きオルムに向かって伸びていく。

 レーヴァテインから放たれた炎がオルムを包み込む。



「"空蝉(うつせみ)"」

 オルムはスルトの足元に現れた。

「ぬぅ!」

 スルトはレーヴァテインをオルムに振り下ろす。


 がレーヴァテインがオルムに届くより早くオルムは刀を抜いた。


「"闘神之太刀 羅刹"」

 オルムの振った刀身は甲高い音を立てながらスルトに振り抜かれた。


 すると、スルトの右腕の肘から下がズルリとズレる。

 スルトは左手で押さえようとするが、右腕は血の糸を引きながら地面に落ちた。



「おのれ小僧が!!ロキの子だからと優しくしていればつけあがりおって!!」

 スルトの身体を炎が包み込む。

「骨も残さず灰にしてくれるわ!!」

 スルトの右腕は出血も止まり、炎が右腕の形になる。

「"炎神の逆鱗"!!」

 レーヴァテインとスルトを炎が包み込む。


 腕を斬り落とし距離を取っていたオルムにスルトが突進する。

「死ねい!!」

 突進の勢いのままスルトはレーヴァテインを振り抜いた。

 レーヴァテインから放たれた炎を纏った斬撃が地面を抉り溶かしながらオルムに迫る。



「"闘神之太刀 夜叉"」

 オルムが鬼丸を振り抜くと無数の斬撃がスルトの放った炎に向かっていく。


 斬撃の一つが炎に触れると、ジューと音を立て炎の勢いを弱める。

 そのまま無数の斬撃がスルトの放った炎をかき消した。

「うぬぅ…!水か!ならば水ごと蒸発させてくれるわ!!」

 スルトは再びレーヴァテインに炎を纏わせ放った。


「スルト。俺は地獄の炎を扱える者を知っている。お前より早く動く者も知っている。お前よりバカ力も知っている。お前じゃ俺は殺せないよ!」

 オルムは刀を鞘にしまい、構えた。



「"闘神之太刀 毘沙門天"」


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