第39話 地下の戦い
「あつっ!」
オルムは堪らず火の粉をはらう。
「蒸し焼きになりそうだね。」
フルプレートの仮面で暑いはずのヴァナルは涼しい声色だ。
「何でアンタはそんな鎧着てるのに平気なんだよ。」
オルムはヴァナルに問いかけた。
「ん?気合いじゃない?」
ヴァナルはしれっと答えると、刀を構えた。
「まぁ少しは楽になるように助けてあげるよ。"水龍の加護 ウォーター ウォール"」
ヴァナルが神聖術を唱えるとオルムの身体を薄い水の膜が包み込む。
「さっきよりはましだけど、まだ暑いな…。」
オルムも刀を構える。
スルトは2人のやりとりを見ながら歩み寄る。
「まだ余裕がありそうだな。お前達の本気が見たくなったわ!」
スルトの姿が歪んだ。
オルムがスルトに斬り掛かるとスルトの姿は目の前から消えオルムの背後に現れた。
「聖鎖 グレイプニル!」
ヴァナルの振った鞭が鎖に変わりスルトに向かって行く。
しかしスルトをすり抜けオルムに絡みつく。
「ヴァナル!何処を狙ってるんだ!」
鎖に囚われ身動きが取れないオルムが騒いでいた。
「ん?奴を狙ったんだけど…ね!」
ヴァナルは後ろに向けて刀を振った。
そこにはスルトが居て、ヴァナルの刀をレーヴァテインで受けていた。
スルトはまた姿を消すとオルムの前に現れた。
「やばっ!ヴァナル!鎖を外せ!」
もがくオルムにヴァナルはやれやれとため息をつくとグレイプニルを解いた。
動けるようになったオルムはスルトに突きを放つ。
「九式 虚空!」
オルムの剣閃を交わしているスルトに傷がついていく。
「なるほど…先出しの虚像か。」
スルトはオルムの刃を腕で受けると、レーヴァテインを突き出した。
すると金属音が響き渡り腕で受け止めた刃は消え、レーヴァテインにオルムの刀が止められていた。
オルムは後方に飛び距離をとった。
「流石は地下魔剣国の王だね。二人がかりでも隙がない。」
ヴァナルが刀を構えながらオルムの刀を見る。
「オルム君。その刀は森で会った時と違う刀だね?あの刀はどうしたんだい?」
「…今は居ない。でも、必ず迎えに行く。」
オルムは鬼丸を握り締めた。
「そうかい。でも、君の動きに違和感がある。さっきまでの技はあの刀の特性に合わせた技じゃないかな?今、君が所持している刀には合わないんじゃないか?」
ヴァナルはスルトに向かって走り出す。
「鬼丸の特性に合った技…。」
オルムは目を閉じ鬼丸に語り掛けた。
(鬼丸…。お前の力を貸してくれ…。)
レイヴンやヘル達と一緒に居た鬼丸の身体が紫色に光り出す。
(私の全ては主殿のモノ。この身、力を委ねます。)
すると鬼丸の姿が消えた。
「鬼丸!?」
ヘルとレイヴンは消えた鬼丸を探したが見当たらない。
「あの光…多分、鬼丸はオルム様に呼ばれたんだと思うよ~。具現化した思念体から本体であるオルム様の刀に戻ったんじゃないかなぁ?」
レイヴンは真面目な顔をしてヘルを見た。
「オルム様が誰かと戦ってるんじゃないかなぁ。それもかなり強い敵と。」
「オルム…。」
ヘルは鬼丸の消えた場所を見つめた。
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