第38話 炎の巨人 スルト

「カークの奴、オルム君を地下魔剣国に飛ばすなんてさ。やっと追いついたよ。」

 横穴から白いフルプレートの鎧の聖剣士が歩いてきた。


「聖剣国騎士団長ヴァナル=フェンリ…。」

 オルムがヴァナルに目を向け、名前を口にすると

「覚えててくれたんだ!また会えたね!森で見かけた時より力が解放されてるみたいだね。王女が心配していたよ。君が力を全て解放してしまわないかと。」

 ヴァナルはおどけた様子を見せながら、オルムを観察していた。


「お前がロキとボザの3人目の子か。1番ロキに似ているな。姿形ではなく、纏う空気がな。」

 スルトはヴァナルに目をやると笑みを浮かべた。


「僕がルーン王に?やめてくれよ。ただ遺伝子だけの繋がりしかない奴と似ているなんて。家族や絆は環境が作り上げるんだ。僕の親はボザ王女だけだ。」

 ヴァナルはスルトの言葉を否定した。

「オルム君。ボザ王女に君とヘル君を保護してくれと言われてね。僕が君達の護衛に遣わされたんだけど、ヘル君は?」

 ヴァナルは辺りを見渡す。


「皆とははぐれた。保護?何を言っているんだ?それに今はスルトをどうにかしないと。」

 オルムはスルトに目をやった。


「話は纏まったか?では、少しお前達の力を見せてくれないか?」

 スルトはレーヴァテインを地面に突き刺すとスルトの周りに火柱が上がる。

「我は地下魔剣国の王"炎の巨人 スルト"さぁお前達の力を見せてくれ!」

 無数の火柱の中でスルトは両手を広げ立ちはだかる。


「これは戦わないといけない感じかな?どうするオルム君?」

 ヴァナルは刀を抜き、オルムを流し見る。


「どうせやるしかないんだからやってやるさ!」

 オルムも刀を抜きスルトを見据えた。


 スルトに向かってオルムが走り出した。

「解放。"七式 天雷"」

 オルムの刀が雷を纏う。

 一度鞘に納め、中で威力を増幅する。


 オルムは縮地でスルトに刃が届く位置まで距離を詰めた。

 そのまま反転し回転の勢いで刀を抜き放つ。

 鞘から放たれた刀身は蒼い稲妻を纏いスルトに襲いかかる。


「ふむ。」

 スルトはその場で上半身を捻るとオルムの斬撃をかわした。

 しかしオルムは手を休めず斬り掛かる。


「僕も手伝うよ。"聖鎖 グレイプニル"」

 ヴァナルが腰に提げていた鞭を振るうと鞭は鎖になりスルトの手足にまとわりついた。


「ほう…!」

 スルトはその場に腰を落とし、レーヴァテインを地面に突き刺す。

「"炎神の舞"」

 スルトの周りに無数の炎の玉が浮かび上がる。

 炎の玉はオルムとヴァナルめがけて飛んでいく。


「"裏一式 曼珠沙華"」

 オルムの周りに無数の刃が浮かび上がり向かってくる炎の玉を相殺する。


「いいねその技!便利だね。」

 ヴァナルは鞭を刀に持ち替え、向かってくる炎の玉を次々と斬っていった。


「うむ。中々にやりおる。久々に楽しめそうだ。」

 スルトはレーヴァテインを地面から引き抜くと、オルム達に振り抜いた。


 オルム達の足元から炎が上がる。


「さぁ。もっと力を見せてくれ。」

 スルトはゆっくりと歩み出した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る