第31話 カーク=リノラス

 村には旅人として入り込んだ。

 道行く村人や兵士に暫く村に滞在したいから、国境警備隊の隊長に挨拶しておきたいと理由をつけ、居場所を聞き出した。


 村の外れにある修練場に居ると聞き向かった。


 そこにカークは居た。


「おや?ここは兵の修練場。君達の様な旅人が来る場所ではないよ?」

 木偶に向かっていた手を止めこちらを向いた。

「ん…?君達はただの旅人では無いみたいだ。僕に何か用かな?」

 カークはレイヴンとヘルを見ると剣を向けた。

「君達、魔剣国の者か。こんなに堂々と敵地にくるとは…。何しに此処へきた。」

 カークから殺気が湧き出す。


「僕は別に用は無いけど、オルム様が君に用があるんだってさ。」

 レイヴンは頭の後ろで手を組みながら殺気を流す。


「オルム…?」

 カークの肩がピクンと跳ねる。

「不思議だな。その名前を知っている気がするが、覚えがない。消えた記憶の中に君が居るのかな?」

 カークは少し悲しそうな顔をした。


「やっぱり駄目だったじゃないですかぁ。残念~もう用無しですねぇ。」

 レイヴンは背負った大剣に手をかける。

「やめろレイヴン。俺達は争いに来てる訳じゃない。ただ俺を覚えてなくてホッとしたような、寂しいような…なんだか複雑だな。」

 オルムはレイヴンを制止しながら笑みを浮かべた。


 ヘルがオルムとレイヴンの前に歩み出た。

「カークさん。貴方ならこの4人を相手にすればどうなるかは分かりますよね?私達には争う気はありません。少し話を聞きたいだけなのです。それに聖剣国ミカエラにも悪い話では無いはずです。まずは話を聞いて貰えませんか?」


 カークは剣先を向けて構えを崩さずに考えた。

「君達は魔剣国の者だろう?何故、我が国に利益となる話を持ってきた?それに、君達4人からは異様な気配がする。君と赤髪の彼女は魔剣士の気配が強いが、オレンジ髪の彼女と君達のリーダーは気配がおかしい。今まで感じた事の無い気配だ。」

 鬼丸とオルムの腰に差した刀に目をやる。

「君達は堕天士なのか?堕天士にしても、我が国の騎士団長とも気配が違うんだ。君達は何者だい?」


 警戒するカークにオルムは歩み寄る。

「話を聞いて貰えるなら全部話すよ。リノ。」

 オルムはカークに優しく笑いかける。


「君は…やはり過去の僕を知っているようだね。始めてあったはずの君なのに不思議な感覚だよ。」

 カークは剣を収めた。


 オルム達はカークに連れられて、国境警備隊隊長室へと案内された。


「この部屋は機密情報を扱ったりもするから決壊を二重にかけてある。だからこの部屋の会話は聞かれる心配はない。」

 部屋に通されるとソファーが用意されていた。


 オルムとヘルはソファーに座り、レイヴンは壁を見渡している。

 鬼丸はソファーの後ろに立った。


 対面の椅子にカークが腰掛けると口を開いた。

「さぁ。話を聞かせてくれるかい?」


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