第30話 前途多難
「おーい!ヘル!鬼丸!レイヴン!」
オルムの声は虚しく木霊する。
「まさか、アイツを訪ねたらこんな事になるなんて。失敗したな…レイヴンめ…後で説教だな。ヘルから。」
オルムがライトの魔法を唱えると光の玉が浮かび上がり辺りを照らす。
光を頼りにオルムは歩き出した。
ーーーーー数時間前ーーーーー
「そろそろ目的の村ですね~!オルム様の同期ってどんな人なんですかぁ?」
レイヴンは頭の後ろで手を組み足を大きく振りながら先頭を歩いていた。
「あぁ。名前は""カーク=リノラス"。トールとは対称的な天才だよ。トールは才能に溺れ他者を見下し、プライドの高さ故に負ける事を嫌う奴だったけど、カークは才は有るのに慎重過ぎる奴だ。常に相手を警戒して情報を集め、確実に勝ちに行く。その才能を買われて、聖剣国に配属になってすぐに国境警備隊の偵察隊長に任命されてる。」
オルムは腕を組みながら歩いていた。
「へー。でも、向こうはオルムの事は覚えてないんでしょ?どうやって情報を聞き出すの?」
ヘルはオルムのすぐ後ろを鬼丸と歩いていた。
「ぶっちゃけ宛は無い。」
オルムはさらっと答えた。
3人の目が冷たい。
「いや…多分アイツの事だから自分で記憶操作を破って記憶戻してるよ。」
小さくなりながら話を続けた。
「昔っからそうなんだ。自分が知らない事があるのが許せないらしくて、何事も徹底的に調べる奴なんだよ。」
「仲がよかったの?妙に詳しいけど?」
ヘルは首を傾げる。
「アイツも俺と同じ施設で産まれた幼馴染なんだよ。俺は聖剣士としての才には恵まれてなかったから落ちこぼれとして呼ばれてたし、アイツは才能開花させて聖剣士クラスのトップにすぐになったから、俺自身が引け目を感じて距離を置いてた感じかな。アイツは俺をアイツのグループに入れようとしてたみたいだけど、俺は学院では完全に孤立してたから周りが全て敵だったんだよ。」
オルムは苦笑いを浮かべる。
「主殿。主殿の同期は全て斬りましょう。」
鬼丸とレイヴンから殺気が湧き出す。
「ちょっとあんた達、気持ちは分かるけど落ち着きなさいよ。昔の話でしょ?」
ヘルは2人をなだめた。
「ははは。まぁ俺が勝手に距離を置いてただけだよ…でも、これから進む道で敵として現れるなら誰だろうと斬り捨てていくけどな。」
オルムは空を見上げた。
「不思議なのは、オルム様はそれだけ刀を扱えるし飲み込みも早いのに何故落ちこぼれなんて呼ばれてたんですか?その実力があればトール様ともいい勝負だったのでは?」
レイヴンはクルリと後ろを向くとオルムの顔を覗き込んだ。
「近いって…女性状態で…」
オルムは顔を赤らめた。
ヘルと鬼丸はレイヴンを睨む。
空気が痛い。
オルムは苦笑いを浮かべる。
「確かに、剣術自体は嫌いじゃなかったしそこまで苦手ではなかったけど、座学と神聖術が全然で…。」
オルムは頭をかく。
「剣と刀は扱いが違いますからね。座学は兎も角、神聖術も主殿の本来の魔力の質を見れば合わなかったのでしょうね。本来、主殿は堕天士として妖術を使うのですから。神聖術や魔道術は扱いにくいでしょうね。」
鬼丸は淡々と話し先を指さした。
「見えましたよ。目的の村"ヌァザ村"です。」
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