第29話 出立
「うん!これなら大丈夫そうね!」
ヘルは左目でオルムを凝視すると笑顔で頷いた。
「ありがとうヘル。2人も手伝ってくれてありがとな。」
オルムは包帯を巻き直すヘルの頭を撫でながら鬼丸とレイヴンに笑いかける。
「べ…別にお礼言われるような事はしてないわよ。オルムには私の手伝いをして貰う約束があるから、その分の前払いよ。」
ヘルはオルムの手をどかすでもなく顔を赤らめ俯く。
「なるほど。これがツンデレと言うやつですね。」
鬼丸は顎に手を当て、ヘルを眺めた。
「ツンデレ?何それ?」
レイヴンは鬼丸の言葉に首を傾げる。
鬼丸はレイヴンに耳打ちをした。
「なるほど~!確かにヘルの事だぁ!」
レイヴンは手をポンッと叩くと笑った。
「なんなのよ…。」
ヘルは包帯を巻き終えるとオルムを促した。
「そろそろ森の外に出て情報を集めない?オルムも強くなったし、仲間も増えたし各国の動きも知りたいし。」
「賛成!僕も外の世界を見てみたい!」
「そうですね。情報は集めないと。」
ヘルの意見に鬼丸も目を輝かせているレイヴンも同意した。
「そうだな。まずルーン王を倒すとなると魔剣国の情報が欲しいな。国境の小さな村に俺の同期が配属されてたはずだからそいつから何か聞き出せるかな?」
オルムは腕を組んで考えた。
「同期と言っても記憶操作でオルムの事は覚えてないんでしょ?」
「向こうは覚えてなくても俺は覚えてる。クラス対抗の時はトールと互角に戦えてた奴だよ。情報を集める天才だ。学院の生徒の情報を全て調べ対策を考え戦った。剣の腕も確かだしな。記憶が無くても、性格は変わらないだろうし色々な情報は集めてると思う。」
ヘルはなるほどと頷くと納得した。
「じゃぁ先ずはその村に向かいましょ。」
一同は森を出口に向かい進み出した。
森の出口付近には無数のアンデッド達が集まっていた。
「見送りに来たのね。今まで従ってくれてありがとう。これからはこの森を守ってね。」
ヘルがそう言うとアンデッド達は声にならない声を発した。
ゆっくりと剣を頭上に構えるアンデッドや背筋を伸ばし座る動物型アンデッド。
跪き剣を地に置き、こうべを垂れるスケルトン。
様々なアンデッドが森の王ヘルの出立に立ち会った。
森の出口までアンデッド達は王の通り道を創り、見送った。
「さぁ。オルム行きましょう。ソナタの道を開きに。」
ヘルはオルムに手を差し出す。
光に照らされヘルの白い髪が煌めいた。
「あぁ。鬼丸、レイヴン。そしてヘル。行こう。世界を斬りに。」
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