第28話 救われた命

 うん。ヘルはどうやら天才らしい。

 魔力の流れや集中するべき箇所を事細かに教えてくれた。

 鬼丸やレイヴンも初めは真面目に聞いていたが、話しが難しくなるとレイヴンは鬼丸にちょっかいを出し始めた。


 鬼丸はレイヴンより話しが分かるらしく聞いていたが、レイヴンのちょっかいにイラつきを感じたのか、そのままレイヴンに斬りかかった。


 今は2人して向こうでじゃれあいという名の試合をしている。

 どちらかと言うと、俺も頭を使うのは得意ではない。

 どちらかと言わなくても得意ではない。


 あの2人が少し、いや。

 かなり羨ましい。


「オルム!聞いてるの?」

 ヘルの言葉と共に大鎌ナグルファルの刃先が目の前に突きつけられる。


「はい!聞いてます!」

 背筋を伸ばしヘル先生の授業に再度集中した。



 レイヴンと鬼丸は剣を交えながら会話していた。

「ねぇ鬼丸。オルム様が本当は何者なのかキミは知ってるの?」

「堕天士です。」

 剣と刀がぶつかり金属音が響く。


 レイヴンは大きく剣を振り抜き鬼丸の体制を崩す。

「ふーん…でも…。」

 レイヴンが優勢になった。


「ただの堕天士じゃないよね?」

 レイヴンはニヤリと笑い鬼丸に追撃をかける。


 鬼丸も体制を立て直しレイヴンの攻撃に合わせ踏み込んだ。

「貴方もいずれ分かりますよ。主殿と運命を共に過ごせば。」


 レイヴンの攻撃は空を切った。

 レイヴンはすかさず身体を捻ると、今まで右手があった場所を鬼丸の刃が通過する。


「そっか~!まぁオルム様が堕天士でも違う何かでも、僕の主様だから大丈夫だよ!」

 鬼丸とレイヴンは剣をしまいオルムに目をやった。


 頭を抱え、ヘルの大鎌で脅され、それでも楽しそうに笑うオルムが視線の先にいた。


「私は主殿に忠義を尽くします。あのまま信長様のもとにいても錆が酷くなり朽ちていくだけだった。主殿に出逢い、刀を振るって貰えた事で主殿の魔力により私の錆は落ちた。」

 鬼丸はオルムを見つめ微笑む。


「それは僕も一緒だよ。トール様が死んで、所有者の居なくなった魔剣や聖剣は折れない限り死ねない。あのままストームブリンガーとして放置されてたら僕は暴走して厄災になっていたから。オルム様が僕に魔力を与え所有者となってくれたから僕はここに居られる。これからどんな事があろうと僕は命に変えてもオルム様を護るよ。」

 鬼丸とレイヴンは顔を見合せ笑いあった。


「おーい!2人共ちょっと手伝って欲しいんだけどさぁ!」

 オルムが手を振っている。


「御意!」

「はーい!」

 鬼丸とレイヴンはオルムに駆け寄って行った

 。

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