第22話 解放

「主よ。そろそろ本気を出したらどうですか?」

 紫淵はオルムに冷たい目を向ける。


「本気と言われてもな…。」

 オルムは相手を見ながら頭をかく。


「オルム様~!本気出しても大丈夫ですよぉ!僕はそう簡単には折れませんから!」

 レイヴンはオルムに向かいブンブンと手を振る。

 右手には妖しい装飾の黒い大剣レイヴンブランドが握られている。


 オルムは目を閉じ刀を構える。

「解放。"一式 閃風(せんぷう)""二式 乱火(らんか)""四式 軽地(けいち)""五式 金剛(こんごう)""六式 影閃(えいせん)""七式 天雷(てんらい)"」

 オルムは技を次々と連続して繰り出していく。


 レイヴンは紙一重でかわしたり、剣の腹で受けたりして耐えていた。


「主よ。あと少しです。九式まで使えるようになれば、裏解放を覚える準備は整います!」

 紫淵はオルムの動きに注意をはらいながら激を飛ばす。


「"八式 天剣(てんけん)"」

 レイヴンの上空から剣閃が降り注ぐ。


「かわしたり受けたりしてるだけだけど、結構楽しいかも!」

 レイヴンはニコニコ笑うと剣閃の動きに合わせ身体を捩り、かわしていく。


「さぁ!後、一つ!」

 紫淵にも思わず力が入る。


「"九式 虚空(こくう)"」

 無数の斬撃がレイヴンに襲いかかる。


「これが九式?まだ八式の方が避けにくかったよ?」

 紫淵を見ながらレイヴンはガッカリした顔をした。


「レイヴン!ちゃんと集中して!」

 レイヴンの態度に紫淵は危ういと感じた時。


 レイヴンが剣の腹で受けようとしたら、斬撃は剣をすり抜けレイヴンに突き刺さる。


「うわっ!何これ?!」

 レイヴンは驚きながらも次の斬撃に備え構える。

 しかし次々とレイヴンの動きをすり抜け、斬撃が刺さり、レイヴンは傷だらけになっていた。


「これはヤバいかなぁ…。」

 レイヴンの顔を目掛けて突きが放たれる。


「レイヴン避けろ!」

 オルムは放った後にはっとした。


「仕方ありませんね。」

 紫淵はレイヴンに駆け寄り、迫る斬撃に対して刀を振った。

「解放。"裏六式 蓬莱(ほうらい)"」

 紫淵が刀を振るうとレイヴンに迫っていた斬撃は跡形もなく掻き消えた。


 オルムとレイヴンは呆気にとられていた。


「蓬莱は斬った場所の空間を喰らう技。そして。」

 紫淵は後ろを振り返り岩に向かって刀を構える。

「解放。"裏七式 煙霞(えんか)"」

 刀の刀身が歪んで見える。


 すると、先程消えた斬撃が岩に向かい放たれる。


「煙霞は蓬莱で喰らった空間を引き出す事の出来る技です。ただし喰らう事の出来る空間は一つだけ、煙霞で放たなければ次の空間は喰らうことは出来ません。」

 刀を鞘に仕舞いながら紫淵はオルムを見た。

「主よ。貴方ならすぐに使えるようになりますから。」


 オルムとレイヴンは紫淵の顔を見てたじろく。

「紫淵…本当にお前ってこういう時いい顔するよな…。」

 ニコニコ笑う紫淵を見てオルムは項垂れ、レイヴンは目を輝かせながら紫淵を見た。

「僕も覚えられるかなぁ?!」


 紫淵はレイヴンの方を向きにこやかに言った。

「2、3回折れてもいいなら。」


「………やっぱりいいや…。回復しよっと!」

 レイヴンは頭の後ろで腕を組むと、木の上に登り眠り始めた。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る