第21話 天邪鬼
レイヴンは岩の上に座り足をブラブラさせながら、オルムに話しかけた。
「ねぇ、オルム様。これからどうするんですか?世界を壊すって目的があるとしても、具体的にはどうするんですか?」
首を傾げる。
オルムは素振りをしながら、レイヴンに答えた。
「魔剣国のルーン王、聖剣国のボザ王女を斬る。そしてルシフェラの審判者達も全員斬る。この世界から王を無くすんだ。異界の軍勢を纏めて、この世界を壊すんだ。ルーン王、ボザ王女、審判者達、きっと奴等が何かの引き金になる筈だ。だけど、その為にはまだ力が足りない。」
オルムは柄を強く握り締めた。
「止まってますよ。もう100回追加です。」
紫淵は木の上からオルムを見ていた。
「ぐぅ…。」
オルムはしまった!という顔をすると素振りを再開した。
「なるほど。でも、オルム様の中にある魔力量は紫淵はともかく、普通の魔剣や聖剣自体より遥かに多いです。なのに何故解放しないのですか?」
レイヴンは岩から飛び降りるとオルムの横に立った。
長身の大剣を背負った者が近くにいると圧迫感が凄い、とオルムは少し距離を置く。
「レイヴン。主の邪魔をしないで下さい。ヘルも何か言ってあげて下さいよ。」
紫淵は困った顔をしてヘルを見た。
「…むぅ。」
ヘルはレイヴンを睨みつけるとそっぽを向いた。
「僕、ヘルに嫌われてるのかな?オルム様~!ヘルに嫌わないでって言って下さいよぉ!」
レイヴンはオルムに抱きつき潤んだ瞳で見つめた。
「男状態でやられても可愛くないし嬉しくない。離れろ。」
オルムはレイヴンを無理やり剥がすと素振りを再開した。
「ぶぅー!じゃぁ女性状態ならいいんですか?」
そう言う問題じゃないとオルムはため息をついた。
レイヴン=ブランドは元々実態を持たない故に、具現化の際に男性にも女性にも性別を変化させる事が出来る様だ。
(なんなのよ。別に嫌ってなんてないわよ。ただ…モヤモヤするの。自分に素直になれるレイヴンが。私もオルムと…。)
ヘルはオルムとレイヴンのやり取りをぼんやりと見つめた。
紫淵が木の上から飛び降りヘルの横に座る。
「ヘルも素直になっては?兄に抱きついても、仲の良い兄妹なら普通ですよ?」
紫淵はヘルの肩に手をかけて微笑んだ。
ヘルの顔がみるみる赤くなる。
「だっ…誰が私より弱いオルムを兄なんて!!オルム!稽古をつけてあげる!レイヴンも!!」
ヘルは大鎌を召喚するとオルム達に斬りかかった。
「まったく。素直じゃないですね。」
ヘルに追いかけ回されるオルム達を眺めながら紫淵は微笑む。
(こんなに穏やかな時間が続けばいいのに…。)
微笑みながらも少し寂しそうに見えた。
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