第23話 本当の敵?

「むぅ…。」

 ヘルとオルムは武器を構え、向かい合っていた。


「どうした?いつもの余裕はどこにいった?」

 オルムは自分が優勢の為、強気にでた。


「オルムのクセに生意気!ヘルファイア!」

 ヘルが呪文を唱えるとオルムの足元から黒い炎が上がる。

「解放。"四式 軽地"」

 オルムが自分の周りをぐるりと剣先で地面に円を描くと、地面が盛り上がり足場が出来た。

 その足場に飛び乗り炎をかわした。


 刀身に雷がが迸る。

「"七式 天雷"」

 刀を鞘に納め、鞘の中で力を増幅する。

 足場からジャンプし、ヘルに斬り掛る。


「まだよ!」

 ヘルは大鎌を構えるとオルムに斬り掛る。


 オルムはヘルの斬撃を身体を捻り躱し、回転の勢いで抜刀し斬り掛る。


「そこまで!」

 紫淵の声が響くとオルムの刃はヘルの首筋に添えられていた。


(オルム…。本当に強くなった。もう私じゃ勝てないや…。)

 ヘルは刀をしまうオルムを見つめながら下を向く。


「ふぅ。」

 オルムは一息つくとヘルに歩み寄る。

「ヘル。これで俺は、君の…。」

 頭をかきながら言葉を詰まらせる。


「何よ…。」

 ヘルは瞳を潤ませながらオルムを見上げる。


 ドサッ!


 木の上から何かが落ちてきた。

 レイヴンである。

「いてて…オルム様~。何かが来ますよ。」


 その言葉にヘルはハッとした。

 意識を森に巡らせた。


「凄い数の魔物が入り込んでる…。これは…魔剣士の魔力…?」

 辺りをぐるりと見回すと一点を見つめる。


 一同は言葉を失った。

 確かに死んでいた。

 確認して埋葬したはず…。

 それなのに。


 そこには、死んだはずのトールが立っていた。


「トールなのか…?」

 オルムが話かけても返事はない。


 ヘルの顔が青ざめる。

「有り得ない…あのトールは反魂の術でも、剣の具現化の依代でもない。あれは生きてる。アンデッドじゃない。」


(主よ。お逃げ下さい!アレは…あの方は!)

 紫淵はオルムに声を掛けるとすぐに具現化した。


「何故、その身体に居るのですか?王よ。」

 紫淵は具現化するとトールに話しかけた。


「この者の闇は我と相性がよい。そこの宿主よりな。だから、此方に転移した。何か問題でもあるのか村正よ。」

 トールは仮面に手を当て外した。


「紫淵…これって…。」

 ヘルは左目を抑えながら震えている。

「最悪の事態が起きましたね…。」

 紫淵はトールから目を離せない。


 レイヴンも珍しく静かにトールを見ている。


「トールじゃないならお前は誰なんだ!?」

 オルムは刀を構える。


 冷たい汗が背中を伝う。

 対峙しているだけで、押し潰されそうな気配。

 隠そうともしない強大な魔力。


「お前か。今まで我の宿主としていたお主に免じて一度だけ許してやろう。次は無いぞ。」

 オルムはトールから湧き出る殺気に生唾を飲む。


「主よ。おやめ下さい。生きていたければ…。」

 紫淵は明らかに動揺している。

 額から汗が流れる。


 トールはニヤリと笑うと手を広げた。

「我が名は、"第六天魔王 信長"!!この世界を統べる王である!この世界に混沌をもたらす者である!元宿主よ。妖鬼士であるお主が本当に斬らねばならぬ相手だ!」

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