第17話 魔剣ストームブリンガー
「弱すぎる…。俺の中で未だ燻り続けるこの黒い気持ちは晴れはしない。オルム=ミドガルズ、灰すらも残さず滅してやる!」
仮面の魔剣士は再度左手の義手に魔力を集める。
「迸れ!"雷鎚ミョルニル"!」
左手から雷が迸る。
オルムの身体から焦げた匂いが立ち込める。
「このまま滅してやる!」
魔剣に魔力を集中すると禍々しいオーラが湧き出る。
「"魔剣ストームブリンガー"よ。力を解放しこの者の魂を喰らい尽くせ!」
ストームブリンガーから湧き出た魔力がオルムの身体を包み込む。
「ダメ!オルムは死なせない!」
ヘルは仮面の魔剣士の威圧感を跳ね除け大鎌を構え魔剣士に飛び掛る。
「少しは成長したみたいだが、所詮は失敗作。お前の鎌など俺には届かないさ。今も昔も。」
飛び掛るヘルを見もせず魔剣士はヘルに回し蹴りを放つ。
「…っぐ!」
ヘルは脇腹に蹴りを喰らいながらも魔剣士に大鎌を振り下ろす。
「ちっ!」
魔剣士は堪らずオルムを離し後方へ避けた。
ドサッ
オルムは地面に叩きつけられる。
「オルム!」
ヘルは体勢をすぐさま立て直しオルムを庇うように立ち塞がる。
「忌々しいな…。その眼だよ。オルム=ミドガルズといい、ヘル、お前といい。昔から何度打ちのめそうとお前達は向かってくる。」
魔剣士は音が聞こえそうな程強く歯を噛み締める。
「いくら足掻いても、お前達はここで死ぬんだよ!」
魔剣士はストームブリンガーに再度魔力を集中した。
「ストームブリンガーよ。俺の魔力を喰らい奴等を滅っせよ!」
ストームブリンガーに魔剣士から迸る雷の魔力が集まっていく。
「お前達の魂は俺の魔力になるんだ。」
魔剣士はニタリと笑うとヘル目掛けて斬り掛る。
「つっ…!」
ヘルは避けきれないと判断し、大鎌を盾にして目を瞑ったーーーーー
「なっ…。」
魔剣士の驚く声が聞こえた。
(私、生きてる?)
ヘルが恐る恐る目を開けると、ヘルの前に黒いローブのような物を羽織ったオルムが立っていた。
焼け爛れたオルムの傷は見当たらない。
「オルム?」
ヘルはオルムに呼びかけるが返事はない。
オルムの表情も見えない。
見えるのは魔剣士の歪んだ口元だけだった。
「オルム=ミドガルズ。お前のその姿は…あの時と同じ…。」
魔剣士は左の義手をさする。
「お前が…お前なんかが…うぁぁぁぁ!!」
魔剣士は雄叫びをあげるとオルムに向かい左手で掴みかかる。
「オルム!避けて!」
ヘルはオルムに向かって叫ぶがオルムは動かない。
「お前…トールか?変わらないな…。己の力を過信して、相手を見下す。確かに学院一の天才だったお前に俺はよくボコボコにされてたよ。でもな…あの時もそうだが、今も…俺はお前を殺したい!!」
オルムから殺気が湧き上がる。
オルムの目に光は無い。
オルムが無造作に刀を振ると
トールの左手が宙を舞った。
「お前…お前!!オルム=ミドガルズ!!」
トールは義手を付け根から外しオルムに投げる。
オルムはよけずに投げつけられた義手を斬り捨てた。
「お前はいつも俺の大切なものを傷つける。あの時も、お前は訳もなく俺の友達の首をはねた。言葉も喋れない、ただいつも俺の涙を吹いてくれた友達を。そして今は、俺に出来た家族を…。」
オルムは悲しそうな顔をしてヘルを見る。
「ヘル。ごめんな。痛かったろう。」
オルムはトールに向き直ると刀を構える。
「お前はもう赦さない。お前は俺の敵だ!」
オルムの瞳が紫に光る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます