第16話 仮面の魔剣士
「ようやく…ようやく見つけた。オルム=ミドガルズ。俺はお前を認めない。お前みたいな落ちこぼれが王の素質だと?堕天士だと?認めない。認めない!!」
仮面の魔剣士からの威圧感にヘルは動けなかった。
「なんで?アンタがこの森に…?」
ヘルは仮面の魔剣士を知っている様だ。
ヘルの小さな肩は震え、呼吸が荒くなる。
「よお。泣き虫ヘル。お前生きてたのか?前の戦で死んだと思ってたよ。」
仮面の魔剣士はヘルを見ると冷たく言い放った。
「まぁ出来損ないのお前が、そこの落ちこぼれと一緒に居たのは驚いたが…ふんっ。お似合いだな。お互いの無能をさらけ出して傷を舐めあって居たのか?」
仮面の魔剣士はヘルとオルムを一瞥すると口元を歪ませ嘲笑う。
「お前は誰だ!…学院の同期なのか?俺を探してた?認めない?何なんだ!?」
オルムは刀を構えながら仮面の魔剣士の威圧感に息を飲む。
「はっ!落ちこぼれが囀るなよ。聖剣士にすらまともになれなかったんだろ?どうせその刀もこの森で拾ったんだ。そうに決まってる。そうじゃなきゃお前なんかが堕天士の象徴である刀を持ってる筈がない。」
仮面の魔剣士から湧き出る魔力が強まっていく。
「オルム!逃げて!!早く!」
ヘルは必死にオルムに叫ぶ。
仮面の魔剣士はヘルを睨む。
「うるさいなぁ…。泣き虫は捨てられても泣き虫か。昔は散々可愛がってやったのに。お前は最初から捨てられる運命だったんだな。結局、失敗作は失敗作か。」
そう言うと魔剣をヘルの顎先にあてがう。
「処分しとくか。王への手土産も用意しとかないとだからな。」
魔剣を握る手に力が入る。
「あっ…うぅ…。」
ヘルの瞳から涙が零れる。
「こんな所で…。死にたくない…。私は…私は…。」
ヘルは目を閉じ小刻みに震えている。
「王に自分を認めさせたいか?無駄だよ。あの御方はお前なんかを見ちゃいない。あの御方が求めるのは力だ。力無き者はあの御方の創る国には必要ない。」
仮面の魔剣士は剣先をヘルの喉元へ滑らせていく。
「さよなら。失敗作。」
魔剣に力を込めた。
「やめろぉぉぉぉ!!」
オルムは縮地で仮面の魔剣士まで距離を詰める。
ヘルと魔剣士の間に割り込むと刀の鞘で魔剣を跳ね上がる。
しかし。
仮面の魔剣士の膝がオルムの腹にめり込む。
「がはっ…。」
オルムは後ろに仰け反りヘルの上へ倒れ込む。
「オルム!しっかりして!」
(主よ。ここは私が!)
「やめろ…紫淵。こいつは俺が倒さなきゃいけない気がするんだ…。」
オルムは膝をつき刀を杖に立ち上がる。
「ふんっ。お前なんかが俺を倒す?思い上がるな!」
魔剣士は左手でオルムの首を掴みあげる。
(金属の感触。義手なのか。)
「まだ思い出さないか?お前に斬られた左手が疼くんだよ。お前の様な落ちこぼれに敗北した俺はあの後どれだけ惨めな思いをしたか…。卒院の後、俺は魔剣国でルーン王直属の部隊に入った。記憶操作でお前の事も忘れて。だがルシフェラに潜入任務の際に王が記憶を戻して下さった。そしてルシフェラで実験資料を見ていてお前の名があった…。そこで全て思い出したよ。俺はお前を殺す。お前を殺して俺の中の膿を消すんだ。」
仮面の魔剣士は左手に力を込める。
「神の雷よ。我が手より迸れ。"雷鎚ミョルニル"」
魔剣士の左手から雷が迸る。
「お…まえは…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
オルムの身体に電流が流れる。
「ちくしょ…う…。俺は…オレは…。」
オルムは身体から力が抜け意識が遠くなる。
「オルム!」
(主よ!)
ヘルと紫淵の声が遠く感じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます