第14話 似た者同士
オルムがヘルヘイムの森に居る頃。
魔剣国アザゼラの動きが活発になっていた。
聖剣国ミカエラの領地である小さな村を襲い略奪を繰り返していた。
ーーーーー聖剣国ミカエラ 王の間ーーーーー
無数の人がザワついていた。
「こんな時に王は何処に行ったのだ?」
老人がヴァナルに問い掛ける。
「僕が知る訳ないじゃないですか?今、現に僕はここに居るんですから。」
仮面で表情は見えないが、声は何やら楽しそうだ。
「大体、何で僕に聞くんですか?」
ヴァナルは首を傾げながら聞き返した。
「騎士団長殿は王の直属の親衛隊長でもあり御子息に在らせられるからだ。」
老人はヴァナルを疎ましそうに見た。
「なるほど。確かに。でも、知りませんよ?王としての御用件なら僕も親衛隊長として同行しお護り致しますが、母としての行動には関与しないので。」
ヴァナルはあっけらかんと答えた。
(小僧め…。偉大なる王の威光のおかげでお前の存在が確率されただけだと言うのに…。)
老人は黙ってヴァナルを睨みつけた。
「さて。母上は何処かなぁ?」
ヴァナルは金属鎧を鳴らしながら王の間から姿を消した。
(ヘルヘイムの森で会ったオルム君だっけ?中々面白そうだったなぁ。ふふふ…まぁまた会えるよ。きっと。)
ーーーーー魔剣国アザゼラ 王の間ーーーーー
「王よ!報告致します!」
王の間の扉が開き、魔剣士が駆け込んできた。
「五月蝿いな。まぁいい。申せ。」
ルーン王は眉間にシワを寄せながら怪訝そうに魔剣士を見下した。
「はっ!中立国ルシフェラに放っていた間諜の消息が途絶えました!ルシフェラの堕天士実験施設に潜り込んだまでは連絡がとれて居たのですが…。」
魔剣士は跪き床を見つめながら肩を震わせる。
「奴めしくじったのか…。折角俺が拾い記憶を戻してやったのに。もしルシフェラから何か言われても知らぬ存ぜぬで通せ。奴はもう我が国の所属ではない。いいな?」
ルーン王は莫大な魔力を隠すこと無く魔剣士を威圧する。
「かっ…かしこまりました。その様に計らいます。」
魔剣士は威圧感に震え逃げ出したいのを抑えながら頭を垂れた。
話しが終わると足早に王の間を立ち去った。
「トールめ…捕まったのか?それとも殺されたか?…まぁいい。ある程度の情報は集まった。ルシフェラの成功体堕天士。オルム=ミドガルズか…。」
ルーン王は傍に会った赤い液体の入ったグラスに手を伸ばす。
「ふふふふ…楽しくなりそうだ。」
グラスを口元に運ぶと中身を一気に飲み干し、グラスを投げ捨てた。
「ふんっ!」
キンッ!
グラスは割れることなく半分に別れ床に転がったーーーーー
ーーーーー死者の森 ヘルヘイムーーーーー
「ふふふ…よっしやぁ!ヘルから一本とったぁ!!」
オルムは飛び跳ねた。
「まっ…まぐれだもん…。」
泣きそうになりながら項垂れるヘル。
「主よ。少々大人気ないのでは?」
半ば呆れたように紫淵がオルムに話しかけた。
「いやいやいや!勝負には大人も子供も関係ないさ!」
(今までの散々ボコボコにされてきたんだから大人気ないのはどっちだよ。)
「子供じゃないもん…。」
「まぁ、私からしたら主もヘルも子供ですけどね。」
紫淵は二人を見ながらふふふと笑う。
「所で、紫淵っていくつなんだ?見た目的には俺と変わらない位だと思うんだけど…っ!」
オルムの脇腹に紫淵の峰打ちが打ち込まれる。
「女性に年齢を聞くのは失礼ですよ主。」
目が笑っていない。
「…ごめんなさい。」
オルムは一言だけ放つと気を失った。
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