第7話 瘴気の森
「紫淵。本当にこんな森に堕天士が居るのか?」
俺は、紫淵に言われた森に居た。
どうやら以前の戦争の跡地の様だ。
紫淵曰く、神聖術と魔道術がぶつかり合い霧散した力が森の植物に吸収されて瘴気を発しているらしい。
「にしても、何で刀に戻ったんだ?」
(…瘴気の中で思念体を保つのが難しいのです。それに…)
紫淵は頭に直接語りかけてくる。
「それに?」
俺は瘴気の霧の中で歩みを進める。
(こんな見通しの悪い中歩いたら、転んじゃうじゃないですか。)
「…お前。そっちが本音だな?」
紫淵がサラリと漏らした本音に溜め息をつく。
「で?こんな森に堕天士が本当に居るのか?」
俺は周りを見渡す。
見渡す限り、霧。
方向感覚もおかしくなってくる。
足元には瘴気に溶かされた鎧や剣が転がっている。
「…おい。この瘴気って、俺には害はないんだろうな?」
周りの状況に不安を覚える。
(この森の瘴気は死者にしか作用しません。なので、主が死なない限りは害はありませんよ。)
「へー。さいですか。死なない限りはね…。」
害はないんならまあいいかと思っていると。
「何かの気配がする。しかもひとつじゃない。無数に動いてるな。」
俺は足を止め周りを見渡しながら刀を構える。
「この感じ、魔剣士や聖剣士か?でも何かがおかしい。気配に生気を感じない。」
段々と近ずいてくる気配に意識を向ける。
霧の中から魔剣士がフラフラと剣を引きずりながら近ずいてきた。
「おい。アンタ魔剣士か?こんな所で何してんだ?」
構えを崩さず魔剣士に問いかけるが返事はない。
するとーーーーー
(主!来ます!)
ダラりとしていた魔剣士は急にコチラに向かって剣を振りかぶる。
頭上から大振りで剣が振り下ろされる。
「おい!急に何するんだ!」
俺は鞘のまま振り下ろされる剣をいなすとそのまま相手の脇腹に打ち込む。
しかし、相手は怯むことなく返しの剣で斬りかかってくる。
(主!峰打ちでは駄目です!斬って!)
「はぁ…」
俺は溜め息をつきながらも意識を相手の剣へ向ける。
「解放。"一式 閃風(せんふう)"」
刀を抜き放つ瞬間刀身が淡く光る。
オルムが刀を振り抜き、鞘にしまうと剣筋にそって風が吹いた。
ズルッーーーーー
剣を振り抜こうとしていた魔剣士の動きが止まる。
魔剣士の首筋から血が流れる。
ボトッ
魔剣士の首が地面に落ち、土に汚れる。
斬られた身体の断面から血が吹き出すと同時に、魔剣士の身体はその場で崩れ落ちた。
ドシャーーーーー
「何なんだ…。命の臭いがない。血の生臭さが。まるで…。」
(最初から死んでいたんですね。)
紫淵の言葉に、やはりと確信を持った。
「まだ、近ずいてきてるな。全部死人なのか?」
(おそらくはそうでしょうね。)
瘴気に包まれた戦跡の森。
この森は戦の起こるはるか前からこう呼ばれていた。
"死者の森 ヘルヘイム"
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