6度目の春


「パパ-、ママー、見て。見てー。こんなもの見つけたよ」と、我が息子の治は満面笑みで、うれしそうにかけてくる。

その姿を、見ながら息子の成長を喜ぶ

あれから、6年もたったんだなあ。きっと、隣で微笑んでいる妻も同じ気持ちだろう。

僕らの前までくると、小さな手の平をグーに握ったまま差し出す。

こんなあたりまえの光景を、感謝する。ありがたい。



6年前

診察室から、出てきた妻になんて声を掛けたらいいのか。

顔からは、落胆の色がにじみ出ている

「また、だめだった」ボソッと妻は呟く。

子どもが、できにくい身体とわかってから私達夫婦は

これまでの10年間、時間、お金生活のすべてを犠牲にして不妊治療にかけた。

当初は、治療さえすれば子供が授かると安易に思っていた。

そんな甘い考えが、体力や精神的に追い打ちをかけた。

ある時

空全体が突然灰褐色になり、わたし達は慌てて家から出る。


……なっなっんだ。見上げると、巨大な宇宙船⁈色とりどりの計器がひかっている。

UFO‼まっ、間違いない⁉

映画やテレビでしか、見たことないが。

驚きとともに、身体がこわばる。声も、出ない。

やっと、振り絞ったように妻が、……え、え、えんばん、、、と低い声を出す。

俺たちの頭のなかは、警察か?いや、違うだろう。と、自問自答していた。ただ、不安の色が顔に出ていた。


数分経ったとき、頭の中に直接語り掛けてくるように、声が聞こえた。

その時、緊張がはしる。妻も、同じ状況らしい。

(落ち着いてください。私達は、遥か何億光年のステラ星からきました。今、この星では内乱が起こっています。私達は、敵に追われて逃げてここまで来ました。ですが、この星は私たちの星に比べて失礼ですが、文明がかなり遅れています。まさか、この星にいるとは思わないでしょう。急遽私の、幼い息子だけ置いていきたいのです。守って育ててほしいのです。無理を承知なのは、分かっています。情勢が、安定したら必ずむかえにきます。引き受けては、くれないでしょうか?

「あ、あ、あなた」妻の顔は喜びに満ちている。反対する理由もみつからない。


すると、頭上にある計器部分の1部がスライド式に空き、目を開けられないほどの眩い光の中、3人⁈が、ゆっくりと降りてくる。

私達の前に現れた顔は、黒くて吊り上がった大きな目がこちらをみている。身長は1mぐらいの小さな身体は灰褐色で輝いている。

そして、彼らは申し訳なさそうにさらに小さな赤ちゃん?を差し出す。

この子が、、(妻とお互いの顔を見つめる。)

小さいが可愛いとは、お世辞にも言えない。

「……」

「あなた…」

困った様子を察したのか、次の瞬間目の前の子が人間の赤ちゃんに変わった。

私達は人に幻想を見せることができます。よろしくお願いします


そして、巨大なUFOは音もたてずに一瞬にしていってしまった。

「あなた、私達の赤ちゃんよ」

「ああ」







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