「えっ?」

気がつくと 羽が生えていた。

背中にはグッと床に引っ張られるような違和感を感じた。どうやら肩甲骨辺りにそれはあるようだ。

試しに力を入れてみたら、羽を、 、

「広げれた!」彼女の表情に喜びの色が垣間見えたのも束の間

調整するかのように少しづつ力の入れ具合を変え

優雅に広げられる。羽は、窓から差し込む光で目ばゆく光り耀いている。



目が覚めた。(また、この夢だ。)たしか、半年前ぐらいからだろうか。この、鳥の夢をよく見るようになった。最初は、雛だった。鳥かごの中で、ピーピー口をあけて泣いていた。何故か、夢に出てくるのは、この鳥1匹だけだった。



早く、起きなくちゃ。健人様が、朝御飯を持ってきてくれる。

私、愛莉 優は、誰もがうらやむ理想の結婚をした。松田 健人様ー25歳にして、我社で営業トップ、高身長、高学歴、イケメン、彼の妻の座を社内中の独身女性が狙っていた。と、いっても言い過ぎではない。

私こと、天然の28歳ダメダメ派遣社員の私―林野 愛莉が、なぜ彼と結婚できたのか?

会社である時、重要書類をシュレッダーにかけてしまった。

普通なら、pcに原本があるはずなのに、その時に限ってバグってしまい会議に間に合わない。その時に、 近くにいた健人が「僕、その件については大体は把握してるんで」と、持ち帰って徹夜で仕上げてしまった。その件で、健人の株は、ますます上がった。

私といえば、シュレッダーにかけた張本人。


会社からは、クビと言い渡され

退職届けを持ち、自分の備品を整理している時だった。皆が、なるべく来ない時間帯を、選んだつもりだ。

ここでは、派遣先が同じ斎藤 良一や、先輩の中原 里美に迷惑かけながらも仕事を、3年は続けて来れた。懐かしい顔が、浮かぶ。涙がこぼれた。備品の筆記用具や、付箋などにシミができる。


これからは、あたりまえの景色も、建物も、会社の人にも会えない。裏口から、出たとたんに頭上から、声がする。

「なんか、幽霊みたいだよ」

「・・・」

「おはよう、愛莉さん」見上げると長身の 健人だった。

「なんだか、すごく早くない?。ああ、そうか。ごめん。良かったら、君に次の就職先世話したいんだけど、話だけでも聞いてくれない?」「・・・それは、ありがたいかも」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る