最終話 『私たち』の存在意義
ブランクを目指し、ひたすら歩き続ける。
ハク『すぅ…すぅ…』
泣き疲れて寝てしまったハクをおぶって進むクウ。
クウ『…アキ、まだか?』
アキ『もうちょっと。ここを越えたら見えるはずだよ。』
どこまでも続くような果てしない草原。
緑の海。
時折吹く風が背中を後押ししてくれる。
もう、後ろにはあの丘も、あの休憩所も見えない。
アキ『っしょっと…きつくなってきたね…!』
ハク『ああ…へばるはよ、アキ。』
アキ『うん!』
いつの間にか草原は消え、険しい崖道になってきた。
風は優しさではなく、私達を試すように吹き付ける。
クウ『ふーっ…ふーっ……』
アキ『…変わろっか?』
クウ『いいや…大丈夫だ…頂上まであと少し…耐えてみせるさ。』
アキ『…もう。素直じゃないんだから。』
クウの体に手を添える。
クウ『…ごめん』
アキ『気にしなくっていいんだよ!だって私達はみんなでここまで来た『仲間』なんだから!』
ハク『んん…なか…ま…すぅ』
クウ『…寝言だな』
アキ『さ、ゆっくり進もっか』
手を取り合って進み、やっと頂上へ到着する。
アキ『ねぇ見て。あそこ。』
下に見える景色。
そんなに広くはないが、建物が数個建っている街があった。
クウ『ハク、起きろ』
ハク『ん…う?』
クウ『あそこだ。あそこに見えるのがブランクだ』
ハク『ブラン…え?もうそこまで来てたの?』
クウ『そりゃずっと寝てた訳だしな』
ハク『起こしても良かったのに…ここからは私も歩くよ。』
クウ『そうか。ほら。』
アキ『よし!じゃあ行こー!』
そこからは特に苦労もなく着いた。
『君たちも、博士に作られたんだね?』
クウ『…厳密に言えば私は違うがな』
『まあいいさ。今日から君たちも仲間だ。よろしくね。』
3人が通されたのは一際大きかった建物の部屋。
『別々がいいならそれでもいいけど…』
ハク『いいえ。これでいいです』
3人一緒がいい。
ハクの提案だった。
クウ『やっと、私たちの旅が終わったんだな』
アキ『長いようで、短かったね。』
ハク『うん。でも、私はこれで…私の…』
いいや、違うか。
ハク『「私たち」の存在意義がわかったよ。』
それは…
『私たちなりに、生きること。』
誰からも知られなくてもいい。
誰からも見られなくてもいい。
私には、私たちには─
─たくさんの仲間がいるから。
ハクへ
この手紙が届いているなら、君は無事にブランクへ行けたのだろう。
…すまない。私の、私達の我儘が君達を創ってしまった。
私はもう死んでいるだろう。
君の目の前で。
だが、君は生きている。
どうか、生きてくれ。
それが、私の最後の贖罪だ。 ジン
わたしをさがして 竜牙 @ryuga_0730
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