第5話 はるか先を目指して
宛もなく歩く3人の心霊的存在、ハク、クウ、アキ。
ハク『ねぇ、アキ…もう、どれくらい歩いたかな…?』
アキ『わ、わかんないよ…おっかしいなぁ。博士はすぐ近くにあるって言ってたのに…』
クウ『兎にも角にも…進まなきゃ意味ないだろ…』
ハク『でもさ…ちょっとは休もうよ…』
クウ『だけども…』
アキ『あ、あそこで休もうよ!』
小高い丘の上。
小さな屋根がついている休憩所。
アキ『クウ、見てよ!』
クウ『なんだ?…おお、これはすごいな…』
一面に広がる緑の海。
風が草を掻き分け、波に見える。
アキ『綺麗だね〜!』
クウ『ほらハク。見てみろよ』
ハク『あちょっと!…わあっ…!』
初めて見る自然。
とても…
とても?
ハク『これ…どうやって『表現』するのかなぁ…?』
アキ『それはね、「美しい」って言うんだよ!』
ハク『「美しい」…?』
アキ『うん!博士がそう言ってたんだ〜!』
クウ『アキ。少し気になるんだが…』
アキ『なあに?』
クウ『博士、って誰だ?』
アキ『あれ、言ってなかったっけ。ジン博士、って言うんだ!』
ジン博士。
クウ『…ハク。』
ハク『──もしかして』
クウ『そうだ。ハクを…いや、私達心霊的存在を創り上げた人だ。』
アキ『でも博士は後悔してるって言ってた。たった一つの命令で意味の無い生命を産んでしまったって。だから博士は極秘に私達だけの街を作った。その街の名前は…「
ハクの目から涙が落ちる。
ハク『もしかして…あの人は…』
あのガクという人物。
あれはきっとジン博士が名前を変えて、密かに私達を救おうとしていたのだろう。
クウ『…なるほどな。それでアタシ達に…』
ハクは歩き出す。
ひっぐ、えっぐと嗚咽を吐きながら。
クウ『ハク。お前は強い。だから、がんばれ。』
アキ『私も行くよ。2人だけじゃダメでも…3人なら乗り越えられるでしょ?』
ハク『みんなっ…ありがっ……』
クウ『気にするな。アタシはハクと同じだ。ハクの気持ちは私にも分かる』
ハク『クウ…』
アキ『私はよくわかんないけど…私にも力になれることがあるでしょ?私はそれに全力を尽くすよ!』
ハク『アキ…』
クウ『さあ、行くぞ、ハク。』
ハクと同じ手が背中を押す。
アキ『うん。行こうよ。』
アキの小さなでも背中を押す。
私はもう、独りじゃない。
ハク『ありがとう、みんな。』
私達は歩き出す。
ブランクを目指して。
私の物語は、もうすぐで終わるだろう。
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