EP50:side.氷の世界 scene.1


〈???視点:?月?日〉


外の紅葉はすっかり夕暮れ色になって明るい光が白い無機質の部屋を染めている。紅の葉っぱがひらひらと風に乗って病室の窓際に止まった。少女は手を伸ばして紅葉を手に取る。外へ一度も足を踏み入れられない少女にも等しく秋は来る。外では四、五人長椅子に腰掛けて談笑しながら紅葉を観賞していた。その中の一人が少女に手を振った。少女は柔らかく微笑んで手を振り返した。

 一片の蝶々がひらひらと紅葉の間を抜けるように飛んでいく。黒い、揚羽蝶だ。少女はいつの間にかその蝶を目で追っていた。

 「あの蝶はどこまで飛んでいくのかしら? 冬を越えて春まで飛んでいくのかしら?」少女は一人部屋のベッドの上で独り言ちた。「私は――」。

 紅葉が淡い白のものに変わる頃、少女の波はパタリと止まった――。



































〈三人称視点〉


あのイカのような怪物を倒した夜、宇美矢 晴兎は眠れない夜を過ごしていた。


自身の新しいステータスを見ながら新たな能力を確認していたのだ。


と、ふとその時ヒラリヒラリ、と飛ぶ一匹の黒蝶を見かけた。


「あれ……なんだか眠くなって…」


するといきなり眠くなってきたのだ。






数分後ぐっすりと寝る頃には頭上は無数の黒い蝶が飛んでいたが知る由もない。




____________________________________________________________「っ!?ここは?」

気がつくと知らない場所にいた僕こと宇美矢 晴兎は辺りを見渡した。


なんと一面氷の上だった。


とにかく、何もしないで凍え死ぬ訳にはいかないからと思って動き出すことにしたのだった。

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