40 最後

「愚か者め」

ヴィクターの槍は、辺りの景色同様、ぼんやりとして、

青く光る棒となっている。


俺はあちこち重症を負って、ほぼ上半身しか動かない状況だ。


しかし、どうあっても、逃げるつもりはない。


「レナを守るしかない」


ヴィクターは槍を振りかぶる。


その時俺は片翼を思いっ切り、羽ばたかせる。


すると俺はヴィクターの方に勢い良く飛んでいく。


不意をついた。


が、

ヴィクターはスッと避ける。


「くだらない」

避けるとともに俺は槍で斬られる。


「グ!」

ヴィクターと互い違いになり位置が入れ替わる。


俺は胸を斬られ、

そして床に転がる。


「無駄なあがきをしますね?」


俺は全身に傷を覆い、もう立ち上がれない。


「・・・」

ただ、ヴィクターを睨む。


「全く、見苦しい」

ヴィクターは俺を憐れむ表情で見ている。


「ヴィクター・・!!」

俺は初めて名前を言う。


「汚らわしい。私の名前を呼ぶな!」

と返す、ヴィクター。

しかし


「ヴィクター!」

俺はまた名前を呼ぶ。


「・・・・」

ヴィクターは下を向き、俺の言葉を無視している。


「おい。ヴィクター!」

俺は挑発するように、更に繰り返す。


「ヴィクター!ヴィクター!!ヴィ・・」


「黙れ!!!」

ヴィクターは顔を上げ、狂気の怒りの表情を見せて

怒声を上げながら、槍を俺に突き刺す。


(ズッ)

そして俺の胸を貫いた。


ヴィクターの怒りで、勢いよく、

そのまま、俺を貫いたまま、壁へと突き刺さる。


そして、怒り収まらない様子で、しばし止まるヴィクター。


死にかけの俺を、憎しみの表情で見つめている。


(ヴィ・・クタ)

「いい加減にしろ!」

と言い槍に更に力をかける、ヴィクター。


そして、


俺は力尽きた。

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