解説(登場順)

・アキレスと亀

 アキレス(はやい)と亀(おそい)が競争をする。亀はハンデをもらってアキレスより前からスタートする。アキレスが亀のいた地点に着いたとき、亀はその分先に進んでいる。アキレスがさらにその地点に着いたとき、亀はやはりその分先に進んでいる。これを続ける限りいつまでたっても速いアキレスは遅い亀に追いつけない。


・選択公理

 「与えられたいくつかの集合のそれぞれから、一つずつ要素を選びだして新しい集合をつくることができる」という集合論の公理の一つ。この公理を認めることでいろいろなパラドックスが出てきてしまうため、一部の界隈では悪名高い。


・全知全能のパラドックス

 全知全能の人が「自分には持ちあげられないもの」を作ることができるとすると、できない行為が存在することになり、全知全能であることと矛盾する。作れないとしても同様に矛盾する。


・自己言及のパラドックス

 典型的には、「この文は間違っている」というタイプの文のこと。「張り紙をしてはいけないという張り紙」もこの一種で、自己を含めて言及しようとすると発生するパラドックス全般を指す。


・双子のパラドックス

 双子の兄弟の兄が光速で移動すると、特殊相対性理論によれば兄の時間が遅れる。しかし、兄から見れば弟のほうが光速で動いていることになる。


・抜き打ちテストのパラドックス

 月曜から金曜の五日間のうちどこかの日で抜き打ちテストをするとする。木曜までテストをしなかったとしたら、金曜にテストがあることがバレてしまうので金曜にはできない。次に、水曜までしなかったとしたら、金曜ではないことはすでにわかっているので木曜であることがバレてしまう。よって木曜にはできない。以下同様に考えると、抜き打ちテスト自体を実施できなくなってしまう。


・バナッハ=タルスキーのパラドックス

 球を3次元空間内で、有限個の部分に分割し、それらを回転・平行移動操作のみを使ってうまく組み替えることで、元の球と同じ半径の球を2つ作ることができる(Wikipediaより)。


・シュレディンガーの猫

 作中でおばあさんが指摘したとおり、「いくらミクロの世界だからってなんでもかんでも荒唐無稽なことが起きていいわけない!」という量子力学に対する批判。直感に反するのでパラドックスと呼ばれないこともない。


・無限の猿定理

 十分長い時間、猿にタイプライターのキーを叩き続けさせれば、どんな文章でもほとんど確実に打ち出すことができる。たとえそれがシェイクスピアの大長編であっても。


・サンクトペテルブルクのパラドックス

 コインを表が出るまで投げ、その回数に応じて賞金がもらえるゲームを考える。賞金を適切に設定することにより、もらえる賞金の期待値が無限大に発散してしまうようにすることができる。

 

・ヘンペルのカラス

 「全てのカラスは黒い」ことを証明するために、全ての黒くないものを調べる。その中にカラスが見つからなければ、「xは黒くないならば、xはカラスでない」と結論できる。対偶を取ると「xはカラスならば、xは黒い」となり、カラスを一羽も調べることなく「全てのカラスは黒い」と結論できる。


・ハゲ頭のパラドックス

 髪の毛が一本もない人は「ハゲ」である。一本だけある人がいたとしてもそんなのハゲである。一本だけの人をハゲと呼ぶ以上、さらに一本増えただけの二本髪の人もハゲである。数学的帰納法より、全ての人はハゲである。


・飛ぶ矢のパラドックス

 矢が目標地点に届くためには無限の地点を通過しなければならない。


・ラッセルのパラドックス

 例えば、りんごやスイカなどが入っている「果物」の集合の中には「果物の集合」それ自体は入っていないが、「果物でないものの集合」の中にはそれ自体が要素として入っている。「果物」「イヌ」「本」のような、自分自身を要素として含まない集合すべての集合を「R」とすると、RがR自身に含まれるとしても、含まれないとしても矛盾する。


・グルーのパラドックス

 「鬼の親分に出会う前までに発見された緑色のものと、鬼の親分に出会って以降に発見された青色のもの」という概念に「グルー(grue)」という名前をつける。親分に出会う前のパラドッ……ももたろうは、帰納的に考えて「全ての鬼は緑だ」と推測することができるのとまったく同様に、「全ての鬼はグルーだ」と推測することもできる。しかし、この二つは親分の色に対する真偽が異なる。帰納的方法に対する批判。


・人食いワニのパラドックス

 人食いワニが旅人に「これから俺が何をするか当てられれば見逃してやる。ただし当てられなければお前を食う」と言う。旅人が「お前は私を食うだろう」と答えると、ワニが旅人を食べようとしていたとしても、そうでなかったとしても矛盾する。自己言及のパラドックスの一つ。


・親殺しのパラドックス

 タイムパラドックスの一つ。本文参照。

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パラドックスたろう 鯵坂もっちょ @motcho

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