第408話 カイル
俺はおもむろに城にゲートを出し、謁見の間一に繋げた。正規の手順を待ってはいられないからだ。
謁見の場に入ると、丁度どカイルが家臣達と会議をしている最中であった。俺の突然の訪問に皆、目をを丸くしていた。
俺は表舞台にはもう40年以上顔を出していないのだ。謁見の間にいた者で、カイル以外俺の顔を知るものはいなかった。
「叔父上、お久し振りと言いたいですが、突然何をなさりに来られたのですか?」
いち早く我に返ったカイルが聞いてきた。
そして慌てた家臣が怒鳴りだした。何者だ?とか、無礼なというような声が聞こえてきた。俺はあえて天使と分かるような格好やスキルを使った。久し振りに羽まで出した。
俺はあえて強めな口調で言う事にした。この国を統べる王たるカイルよ。我がこの国をいや、この世界を去る時が来た。今よりこの国の行く末を左右する大事な引き継ぎと、アイテムなどの授与を行う。この者達を部屋から出すのだ」
俺の様子と口調に皆震えていた。なんとなく事の重大さが分かったのか、カイルが会議を中断した。
「すまないが皆下がってくれ。この方は大丈夫だ。この国統一したかの御仁だ。それに本気を出せば城ごと数秒で吹き飛ばす事ができる。本来このような訪問の仕方をされる方ではない。深刻な事態と思ってくれ」
そして部下はその場で会議を続けさせ、カイルの私室に移るこ事になった。
部屋にはカイルの妻もいた。カイルの妻はリギアに挨拶をしていた。夫婦で訪れた場合、妻は相手の妻にまずは挨拶をする風習だからだ。
「これはリギア様ごきげん麗しゅう。相変わらずの美しさで羨ましい限りでございますわ。今日はいかがされましたか?」
といった感じだ。
席に座るとおもむろに俺はカイルに話し始めた。
「会議中悪かったな。こちらも切羽詰まっており猶予があと1日しかない。俺達はいよいよ明日この世界から元の世界に戻る事になる。この国を覆っていった結界を作っていたダンジョンを攻略したからだ。」
おもむろにダンジョンコアとドロップ品を出した。
「これからは外からも攻めて来ることもあるだろう。この国を守る為の切り札をお前に与えていく。この魔道具だ。これの使い方などを説明するが、危険性や利便性も合わせて説明をする。管理に気をつけるんだ。使い方を誤れば悲惨な結果を招く」
と念を押した。そしてそこまで話すと、逆にカエルが質問をしてきた。
「このような大事なお話の時におば上も一緒というのは珍しいですね。」
リギアが話を切り出した。
「カイル。貴方はご両親から私達の事を何と聞いておりますか?」
「単に叔父上と叔母上と聞いております。それ以上の事は聞かされてはいないのですが、何か有りましたか?」
悲しそうにねそうなのですねと呟いていた。
カイルの見た目は俺の収納の中にあったスマホやタブレットの中にある、己自身の筈の写真とそっくりである。
俺は何も言わずにタブレットを取り出した。40年以上触っていないが、バッテリーはまだ残っている。タブレットにある写真を見せた。
「カイルよく聞くんだ。これは元の世界に俺が召喚される前の俺の生まれた国の文明の利器だ。俺は元々四十代半ば、ちょうど今のお前の年ぐらいに召喚され、その時に十八歳の体になったんだ。もう記憶にはないが、事実としては理解している。この文明の利器の中に、風景を切り取り保管する絵のような技術がある。その写真に元々の家族の写真も入っていたんだ」
タブレットの写真を見ているのであるが、なかり驚いていた。
「見ての通り、俺がお前の年だった時の写真と、今のお前がそっくりなんだよ」
「確かに親子というくらいにそっくりですね」
「それを踏まえての話だが、お前のご両親はお前に真実を告げなかったのだな。責めは。お前が二十歳の時ぐらいに伝えてあげてくれと言っておいたのだが、あの方達のお前への溺愛ぶりと、性質からは言えなかったのであろう。なんとなく気付いているとは思うが、俺とお前は似過ぎているんだ」
そして一呼吸おいて俺はおもむろにカイルに告げるのであった。
「すまない。俺とりギアがお前の本当の、生みの親なんだ」
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