第354話 ドラコン戦
奴は地上に落ちたが、戦力はある程度落ちただけで、まだまだ健在だった。
口からは先の得体の知れぬ何かを吐き出してくるし、炎のブレスを吐きまくってくる。
ブレスの中にあの得体のしれぬ物体が混じっている為、俺に炎は効かないぞ!と思いつつもブレスも避けなければ危ない。
やはり転移して近づこうとしても転移した先に奴の腕が振るわれたりし、転移後に攻撃に転じる事が中々できない。そう頭と体がきちんと機能しきれていない為、正確な距離の転移ができなかったのだ。いつもだとあと数時間は横になっている。そうしないと正常な体調に戻らないし、感覚等がおかしいのだ。
これまでは、このような状態で戦う事がなく、初めての経験だ。
感覚がおかしいから治るまで休もう、その間は殆どの場合、蘇生した相手とまったりというか、いちゃいちゃしながら過ごすのが俺の定番になっていた。だが今はそのような状態とは違うのだ。なんとなく先程地下室で分かったのは、生き帰らせた三人が無事に生きていた事、ただそれだけだった。名前すら分からない。ただ、何をしたかの記憶だけはある程度はっきり戻った。
体の感覚異常に関してはいかんともしがたかった。
それでもこいつの場合、万全の状態で戦っても例えば首を切断してる間に最後の力を振絞った反撃を食らい、致命的なダメージを食らってしまうだろう。
そういった強さではある。真正面から突撃を仕掛けるが、ことごとくあしらわれる。アンタレスとライトソードが効かないというよりも受け止められてしまうからだ。
アイスホールで閉じ込めようとしたが失敗に終わった。
奴のアイスホールへの攻撃はブレスとあの得体の知れぬ物だ。炎によりえらい勢いで溶け出て行くし、あの物体が当たると直ぐに消えていくからだ。そういつもの熱湯によるワンサイドゲームができないのだ。
サラマンダー送り込む事も考えたが、そいつの属性は火だ。強化してしまう恐れがある為にサラマンダー送り込む事はできなかった。
俺も得意属性は火なのだ。相性が悪いと言えばそれまでだが、向こうも炎は効かないという事は分かっているようで、ブレスを吐かなくなった。ただ目くらまし位には使ってくる。
咆哮を立てるが、頭の中にはレジスット成功とこだまする。相変わらずレジストではなくレジスットと響いてくるのだ。
つまり奴の咆哮には本来何かしらの効果があるのだろう。俺に全く効いていないというのが分かると、イライラしているようだ
「何故だ?何故効かぬ!クソがー」
と吠えていた。俺もうんざりしてきた。地上に落としてからかれこれ30分以上戦っているが、一向に埒が明かない。俺も多少消耗してきてしまった。このままだと、ごっそりやられる。そして俺はついに決断した!封印を解除しようと。
呪いで有る長期間の赤ちゃん返りだけは、あのダンジョンをクリアした時のクリア報酬としてスキル自体についている呪いは解除されている。
だか、一度発動してしまったものの影響で多少なりとは赤ちゃん返りが発生するのだ。一番酷いのは頭痛が激しい事だ。そして意識を失わなくても意識的に赤ちゃんプレイに似たような事をすると痛みが引くのが分かっている。
例えば誰かのおっぱいを吸う。
「おっぱいをチュパチュパさせてくだちゃい」
こんな感じで言わなければならないのだ。
「乳首を吸わせろ!」
では効果がないのが分かっている。そう、試したからだ。
この俺がである。そんなみっともない真似を妻達以外の前でしなければならない。しかし今回はどうやら背に腹は代えられないようだ。少なくともレフトアイとトリシアが現状生き残っている。死者蘇生を使う前の間の相手としてお願いしなければならない。もしくはすでに刻印を結んだ妻達にお願いするかだ。
ただ俺のその姿を知っているのは、今生き残っている者の中ではトリシアとレフトアイだけだ。
俺は封印を破る事を決断し、実行した。奴の真正面に転移し、そこに奴が腕を振りかざしてきた。腕が俺に当たる直前に時間停止を発動したのであった。
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