第343話 見られていた

 俺の傍には愛しのナタリーが穏やかな寝息を立てている。病み上がりには少しきつかったのか、行為の後直ぐに寝てしまったのだ。そして彼女が眠り始めてから既に4時間が経過していた。


 いつもの事だが、まずはステータスを確認する。すると俺の新たな刻印者となっているのが確認できて安堵をした。この世界でも刻印が可能と分かったのだ。ただ、少しオロオロしていた。


 そうやってしまったからだ。

 彼女があまりにも不憫過ぎていたのもあり、彼女の求めに応じつい勢いで妻にしてしまいました。心が綺麗で、多分顔付きやスタイルは俺の好みが反映していると思う。なので俺の心に刺さる見た目でもあり、夢中になっていた。皆の許可を取っていると言っていたとはいえ、出会ったその日に妻にしてしまったのだ。恐らく今までで最短の筈だ。

 その昔、社会人になって暫くした頃にはよく有ったが、合コンして即お持ち帰りして・・・いやよそう。


 彼女には予め確認はした。


「いいのかい?俺の妻になるという事は、普通の人としての人生から大きく外れてしまう事になるんだ。おそらくこの世界とさよならをしなければならないんだよ。それでも俺を選び、俺のつ・・・」


 口を口で塞がれて最後まで言わせて貰えなかった。


「はい大丈夫です!リギアさん達からランスロット様が気絶している間に詳しく教えて貰いましたから。ただ、彼女達には申し訳ないと思う事だけが気掛かりなのです。ランスロット様と付き合いの長い彼女達を差し置いて私が先に名実共に妻にして頂くなんて、その、申し訳なくて。まだ5人が苦しんでいるのに私が幸せになっても良いのでしょうか?」


「それは気にしなくても良いよ。彼女達を抱かないのは、年齢的な問題で、幼い体で年齢を固定したくはないからなんだ。それに、まだ彼女達を治してあげるのには後半日は待たないと俺の魔力が戻りきらないし、多分復活してから丸々一日一緒にいてあげないとだから、お互い様だと思うし、10年苦しんだんだ。十分幸せになる権利は有るよ」


「はい、聞いております。私はですね、このお屋敷に来た時には既に天涯孤独の身でしたから。元々親兄弟もみんな亡くなっており、孤児院で育てられておりました。折角拾って頂いた命ですし、ランスロット様のお役に立たせてください。既にランスロット様と共に長い人生を歩む覚悟は出来ておりますし、好いた方と添い遂げる希望を叶えてはくれませんでしょうか?ですので貴方の妻の一人にして頂ければ幸せです。それにこの世界には未練はありません。ただ、私の世話をしてくれていた姉妹達に申し訳ない思いがあるだけです。それと残りの5人も元気になったら愛してあげてくださいね。」


 そして俺は彼女の覚悟を確認し、それはそれは彼女を丁寧に、それこそ壊れ物を扱うかのように本当に丁寧に、そう丁寧に扱い愛し合った。


 病み上がりというのもあるのだが、何故かそうしなければならないと感じ、それはそれは大事に扱ったんだ。そして刻印が刻まれた事を確認し、彼女も起きているし、お腹も減ってきたので食事にしようかという事になり、彼女に服を着させてあげた。彼女は恥ずかしがったが、甘えますと言っておとなしくされるがままにしていた。


「ナタリー、歩けそうか?」


「どうでしょう。試してみましょうか。倒れてもランスロット様が支えて下さりますから!」


 立てるかどうかなど分からない。当然そうなのであるが、彼女を立たせてみた所うまく立てて、あまつさえ歩く事が出来た。おそらく肉体を再生しているので、筋力も本来あるべき量がついているのだと思った。自分の足で歩く事が出来たので、喜びを感じ更に泣いていたが、暫く俺の胸で泣かせてあげた。


 じゃあ行こうかとお姫様抱っこをして食堂に行くと、大勢が俺達を待ち構えていて、食堂に入ると祝福をされた。おめでとうございますと。ここではナタリーが名実共に俺の妻になった事を皆が知っていたのだ。そしてどこからともなく聞こえてきた言葉が衝撃的だった。


「あれが愛し合う、所謂セックスというやつなのですね」「こうやって男性と女性が抱き合うのですね」


 そんな言葉が聞こえてきたのだ。何を言ってるのだ?と思ったのだが、ナタリーに感想を聞いている者もいた。ナタリーは赤裸々に、そう正直に答えていたが、当然の事ながら俺は真っ赤である。


 何故か皆俺達に何があったのか、何をしていたのかを何もかも知っていたのだ。トリシアも俺の所に来て


「ねぇランス、私の時にもあれ位優しくしてくれる?素敵だったわ。羨ましかったな」


 俺は愕然としながら


「どれ位ってどういう事だ?」


「物凄く丁寧に、それこそ壊れ物を扱うように扱ってたじゃない。あんな感じに抱いて貰えて幸せだなと思ったの。私もセックスって勿論初めて見たけど、ナタリーさん綺麗だったな。素敵だったな。あれ程丁寧に愛撫されていて羨ましかったよ」


「ちょっとまて?見たってどういう事だよ?」


 トリシアからはっきりと言われたのだ。セックスを初めて見たと。文字通りならばどう言い訳かナタリーとの情事の一部始終を皆に見られていたのだ。愕然としながら確認するのであった。


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