第271話 出産

 真の魔王の行方が分からないまま2週間が過ぎていた。


 魔王城の中をくまなく捜索したが、手掛かりになるような物は見つからなかった。


 既に破壊してしまったのか 、元々なかったのか分からないが、少なくとも現在調査した結果としてはこれといったものはないという結論になった。


 その為魔王城をこれ以上調査してもどうにもならないという結論になり、魔王城を破壊する事とした。


 魔王城を俺が収納に入れ、上空から魔王城放り出すという実にシンプルな破壊の仕方だ。ドラゴニュート達と一緒に落下していく魔王城を眺めていた。


 そして凄まじい振動と音と共に魔王獣が粉々になり、更に再生できないように特大のファイヤーボールを打ち込んで行った。


 城の中には特段囚われている者もおらず、魔物しかいなかった。もちろん周辺の魔物は駆除済みだ。


 そして半径90 km 以内の特に魔物が多くいるエリアを中心に、この2週間の間に魔物の駆除を粛々と進めていた。もはやそこがかつて魔王が君臨していた場所とは誰も思わない、そういう 状態にまでする事ができた。


 そして探索を続けていたある日の朝、ウリアとアイギスが二人して破水したのだ。皇帝宮には特別に作ったお産の為の部屋がある。

 何故かダンジョンのドロップアイテムの中に分娩に必要なベッド等があり、一通り揃っていて、妻達専用でお産の部屋を作ったのだ。


 そしてこの世界の仕来たりで、出産する場には女性しかおれず、俺は入れない。皇帝だろうが国王だろうが同じで駄目なんだと。

 そう、迷信で縁起が悪いとか。

 そしてセレーシャは医者を目指していたと言い、お産も助手で経験があるというので、妻達に伝授すると言っていた。


 俺はそわそわしながら部屋の外で待機だ。

 レニスが入り口をがっつり見張っていた。

 転移も禁止を申し伝えられたり、閉め出しはぬかりなかった。


 そして20分待たずに産声が二つ同時にしたのだ。


 双子か!と思ったのだが、二人が同時に産んだのだった。


 ナンシーと、シェリーが出て来て、ナンシーが


「おめでとう!母子共に順調で、二人共女の子よ!」


「よし!俺の初めての子は女の子か!俺もついに父親か!へへへ」


 俺の言葉にナンシーとシェリーの顔が一瞬凍りついた表情を見せ、シェリーが


「何を言っているの?ランスの3人目の子供よ。手帳を見て!貴方に言われたの。記憶が消えていっているから手帳に記録したと。忘れたら指摘してって」


 俺は固まった。しかしなんとか恐る恐るだが手帳を見ると、確かに俺の字で日本にいた時の事が書いてある。日本ってなんだったけ?等と考えていた。

 改めて手帳を見直すと、確かに子供達の事が書いてある。


 そうだと思い、スマホを出し、写真を見ると、確かに子供達と写った写真があり、何となくそんな気がした。


 愕然としていたが、赤ん坊にもう会えるというので、部屋に入る。


 ウリアとアイギスが各々赤ん坊をだっこしていて、俺は泣きながら二人に祝福とお礼を述べ、赤ん坊を恐る恐る触ったりして、その小さな手に指を握らせ、文字通り祝福を授けたのであった。


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