第272話 開き直り

 手帳を見ていて確かに地球に妻子がいたのであろうと理解はした。

 確か年齢が若返ったと書いてあり、18歳の頃以後の記憶は無くなると予測をしていて、実際にそうなったらしい。


 まあ、仕方がない。記憶がないから実感がない。

 多分もしも記憶があると今の状況は罪悪感が半端ないのだろと感じていた。


 シェリーに言われたのだ


「あのね、召喚された当初、私を助けてくれた同時でまだ記憶がちゃんとある時に頼まれたの。記憶が段々希薄になり、自分が自分じゃ無くなるのが怖いから、たまに指摘して手帳を読ませてと。たとえもうそんな事をしなくても良い等と俺が言っても絶対に従わずに伝えて欲しい。たまに思い出させて欲しいと。これはランスに命を救われた私の使命なの。だから私の言う事をちゃんと聞いてね。ソウルメイト全員と、今後そうなる仲間には既に伝えてあるの。私だけは本当のランスを見ているのよ」


 普段優しいシェリーが強い口調で話すものだから俺はただただ正座して頷いた。多分シェリーには辛い事を頼んでしまったのだと気が付いた。なのでシェリーの俺への想いを汲んで一緒に手帳を見ていた。

 何故かシェリーが目の周りを拭っている。どうやら知らず知らずの間に涙を流していて、俺の心は揺れていたのだ。そしていつの間にか過呼吸になり、慌てたシェリーに処置をされていた。


 どうやら心の奥底は忘れた筈の記憶に反応していたようで、シェリーに黙って体を預け、背中を擦られていた。シェリーの心臓の鼓動が心地よい。


 そういえば以前はスキルをこまめにチェックしていたが、今はしていないのに今更気が付いたりした。


 また、俺は暫くの間はお祝いの客の相手をして過ごす事になりそうだった。


 そうは言っても午後は魔王の捜索に出掛けるので、中々忙しくしていた。


 時々明智君の様子を見に行ったりしていたが、子供が生まれて1ヶ月位経ったある日、明智君が死んだのが分かった。奴隷が死んだとのアナウンスが有ったからだ。


 俺は慌てた。奴はそれなりに強く、魔物相手程度では遅れを取る事は無い。勿論俺よりは遥かに弱いが、にわかに信じたくない状況だ。

 つまり、かなりの実力者がシューマン山にはいる事になる。

 急ぎ主要な戦闘要員を集め、緊急防衛と、シューマン山に出向くメンバーを決めるのであった。

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