第262話 目覚めと再会

 俺は急激に目覚めたが、頭がクラクラするし、気持ち悪い。そして記憶の混濁がある。

 ただひとつ言えるのは俺の 左手が何か暖かな柔らかいもので包まれている?それだけは分かるが、心地いい感じだ。

 そして目を開けると、そこは俺の寝室のベッドの上である事が分かった。

 そして左を向くとそこには見知らぬ美しい若い女性が椅子に腰掛けて俺の手を握っていた。


 いつものスキルの影響だろうか。その女性の事はいとおしく思えているが、名も分からないのだが、善良な性質の女性と思えている。

 毎度の事だが 、死者蘇生を使ったのであろう。

 今の俺の状態は死者蘇生を使った後に気絶し、意識を取り戻した時のいつもの症状だからだ。

 ということは俺はこの女性を蘇生させたのだろうか?

 記憶の混濁も毎度のことではあるが、おそらく死者蘇生をした時にはこの女性が何者で、名前もちゃんと分かっていたのであろう。

 時間と共に記憶が戻る筈である。


 俺はこの女性に確認する事にした。


「 すまないが記憶や意識が混濁していて状況が理解できていない。君は何者で今こうなっている状況が君が分かっていれば教えてほしい 。おそらく俺は誰かを死者蘇生したのであると思っているんだ。その時の症状が出ているからなんだ」


 そういうとこの女性は俺が意識を取り戻した事が分かり、俯いていた顔を俺に見せ、涙で濡らしたその顔をを手で拭っていた。

 顔全体がようやく分かったが、歳は17、18歳位だろうか。 銀髪のストレートで、さらさらでかなり長い髪と見える。

 そして息を飲む程整った顔をして、俺好みの清楚な感じの綺麗な娘だ。 そして その口から放たれた第一声も美声であった。


「 あの、私クラリスと申します。この度はお救い頂き、また命をお救頂だきまして誠にありがとうございます。

 できれば死なせて頂きたかったのです」


 俺は 死者蘇生をしたというのをだんだん思い出してきて、クラリスという名前にも心当たりがあり、だんだんどういう人物か思い出してきた。


 そして、俺はもう一度口を開こうとした時に強烈な吐き気に襲われ、用意してあった、たらいに吐いてしまった。ハイエンジェルになってから特にこの死者蘇生がきつく、 吐かない時も有るが、嘔吐する事が多い。俺がゴホゴホしていると彼女は慌てて俺の背中をさすっていた。俺は彼女に


「すまないがそこの水を取ってくれ」


 そうして水を受け取ると口を濯ぎ、うがいをしてから、一気に飲み干した。

 ありがとうと一言いい 立ち上がろうとしたが、まだ早かったようで、ふらついてしまい倒れかかったが、床に倒れる直前に彼女に抱き寄せられ床に倒れるのを防いでくれた。

 彼女が俺をベッドに座らせてくれたが、俺は胸の感触に悦びを覚えつつ


「 ありがとう。死者蘇生を行うといつもこうなんだ。 なので、近しいものか、俺が必要と思った者にしか知られなくし、行わないようにしているんだ。 俺の命を削る位に体の負担が大きいんだ。まあ見ての通りだけどね。いったい君はどうして自殺をしたんだ? 大体の予想はついているけどさ」


 彼女は申し訳なさそうに 涙を流しながら俺に語った。


「はい、私が人質になっておりまして私の母が魔物を率いて近隣の街をお襲わさせられるそれを避ける為のことでした。私が死ねば、母もまた死ねるそう思ったからです。」


 等々俺が思っていた事を彼女は話し始めた。


 俺に感謝をしつつも、俺に対してお恨みしたいと言い出した。どうして死なせてくれなかったのかと俺を責め出し泣き出した。俺は一言ため息をつき、


「君の母親の事を聞いていないのかい?この屋敷にいるぞ!」


「えっ?」


 彼女が驚いていた。


「じゃあ今から会うかい?この屋敷にいるんだよ」


「 どういう事なのですか」


 先の戦闘で俺が捕らえて、今は俺の奴隷にしているんだ。そして部屋に軟禁させてもらっているよ。話を聞くと君が人質にされていて、やむ無く魔物を率いてこの王城街を襲いに来てたと。捕らえた後で君の事を助けてくれと言ったのは、紛れもなく君の母親なんだ 。だから俺の事を恨む必要はないんだよ。死ななくても解決するんた。それに、真っ直ぐここに来たから、まだ、人を殺していないんだよ」


 そう言い俺は ゆっくりと立ち上がる。

 時間が経ってた為かだいぶん楽になった。意識を取り戻した影響か、魔力が急激に回復してくるのがわかる。 既により魔力切れによる体の不調も急激に改善していった。


 そして彼女を母親のいる部屋に連れて行き、母親は何も知らされていなかったのか、驚いた親子の涙の再会となったのであった

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