第236話 魔法陣

 俺は急ぎ皆をまとめ、城へ向かった。城門にレニスが迎えに来てくれて、その慌て振りから急ぎ案内される場所に向かう。


 そこは城の中にある広間だ。


 謁見の間でも無く、何か儀式でもする様な場所っぽかった。

 そして連れて来られた場所を見て絶句した。


 地下に有るこの部屋の大きさは20m四方だろうか。高さは4m程だ。


 階段とドア位しかなく、このフロアはこの広間の為だけに存在している。 一際大きな魔法陣がそこには描かれていた。

 それだけでは 大して驚きはしなかったがルシテルが俺を慌てて呼び寄せたのはその魔法陣が今も光り輝いており、術式が発動している事を示していたからである。

 魔法陣が大き過ぎ、立っている所から見る限りどういう魔法陣か分からなかった。その為、俺は 天井の高さすれすれまで飛んでみた が、魔方陣を上から俯瞰して見ると概ねどういった魔法陣が理解できてしまった。 俺は顔を青ざめながら 皆の所に戻り、オリビアを伴い、もう一度上から魔法陣を眺めた。

 やはりオリビアもどういう魔法陣か理解出来たようで 震えていた。

 そして俺は 皆に告げるのであった


「この魔方陣は生きている。 しかももの凄く危険な術式だ。そしてこの国で見てきた一連の異常事態に繋がるものであると俺は確信した」


 レニスが俺に聞いてきた

「一体この魔法陣は何なんですか?」


「本来の目的は勇者召喚をするような魔法陣であったと思われるが、術式を一部間違ってしまっており、大変恐ろしいものに変貌してしまっている。しかもこの大きさだ、かなりの魔力を必要とし、召喚に伴う生贄の数も多かった筈だ。 今ここにある魔法陣により何かを召喚した筈なのだが、おそらく直径300から500 km メートル位の範囲内のありとあらゆる生き物の命や体の全てを差し出し、それを生贄として 大変強力なものを呼び出したと思われる。この城の中を捜索しよう!何かこの魔法陣に関する資料が出てくるかもしれない」



 それと念の為に俺はルシテルも抱えて俯瞰して魔法陣を見る事にした。やはりルシテルも 一目見てどういった魔法陣か理解できたようだ。 実はルシテルの方が詳しかったのだ。バルバロッサで魔法陣を書いたのはそもそもルシテルだ。バルバロッサの 召喚が失敗したのは魔王が降臨する前に、召喚を無理やり行ったからであった。ルシテルが成功したのはその時には既に魔王が呼び出されていて魔王が降臨した状態であったからであると説明された。

 そしてこの魔法陣は 本来の目的はともかく、俺達がいた地球ではなく別のどこかの世界と繋がっており、そのゲートが常に開放されている状態だと言う。

 その為そこにいる何か恐ろしいものがいたとしても、ずっとこちら側に来れる状態が続いているという。


 一刻も早くこの魔方陣を 止めた方が良いと判断し、俺は左手を魔法陣に触れながら魔力を込めて魔方陣の停止を命じた。

 するとバチッという大きな音と共に俺の左腕が吹き飛んだ。

 幸い魔法陣は何とか止める事は出来ので、すかさず欠損修復を行った。

 またルシテルが言うには ゲートが開いていたのはおそらくこの大陸の別の所からと言う。

 ゲート から出てきた者も どこでゲートを召喚したか そらく分かっていないだろうと言う。

 この魔方陣は危険な為ウィンドカッターを出せる者でこの魔方陣を切り刻んだ。

 おそらく中途半端な知識で 魔法陣を書いた為に誤りに気付かなかったのであろう。 その代償はあまりにも大きい。

 一国の生命がまるまる失ったのである。

 問題なのは 生命が失われた事もあるが、この中途半端な知識で勇者召喚を行おうとした訳にある。

 何か切迫した理由があり勇者召喚に頼らざるを得なかったのであろうと想定される。

 それはつまり、バルバロッサによって召喚された魔王が活動を開始した事を意味するのではないかと思われた。そして城の内部の調査に繰り出すのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る