第229話 エレクトラ
魔物の対処も終わり一息つける。
そう、放置していた二人に刻印の儀式を行いたいと伝えると泣いて喜ばれた。
年齢から今日はエレクトラ、明日はマイアだ。
この日は俺をほぼ独占できるのだ。
俺は休日宣言をし今日の早朝のミーティングで伝え、今日と明日は緊急時以外は連絡を不可とした。
ただ、移動はセレナが出来るので今日の移動担当ははセレナになった。
朝食後出掛けるのだが、エレクトラはお嬢様チックな丈の長いワンピースにカーディガンを羽織り麦わら帽子を被っている。
可愛らしいお嬢さんだった。
俺を始め玄関への見送りに来ていた面々が口をポカーンと開けていて特にプレアデスの面々は震えている位驚いていた。
「では参りましょうかお嬢様」
そっやって腕を差し出し腕を組んで歩く。
彼女は実家に行きたがった。家族に会って貰う事が出来るかと聞いてきたので勿論と言い実家に向かおうとしている。
カービング地方の街にあるという。
幸い以前立ち寄った事のある所だったのでそちらに向かうのだが、折角なのでボレロのお土産を持てっていく。
高いと驚かれるので地の物の海産物と民芸品にした。
彼女は普段と違いあどけない少女の様に喜んで選んでいる。
俺は変化の指輪で姿を変えている。そうしないと街中を歩けないからだ。
ついでに採れたての魚も買い込んだ。今から行く所は内陸で海が遠い。川魚や干物位しか手に入らないのだ。
そうして準備を済ませるとエレクトラの実家に向かうのだが、様子がおかしい。
借金取りが来ていて若い男と口論になっている。
エレクトラに聞くと弟という。
エレクトラの姿を見て見守っていた両親と弟が驚いていたが、俺が間に入る。
「何があったか分かりませんが双方の話を聞きましょう。家に入らせて頂きますね」
そうして双方の話を聞いた。
どうやら弟君の婚約者が魔物に襲われ、瀕死の重症を負った。腕を無くし、一時は危篤状態だったと。
そして駆け込んだ治療院がまずかった。腕がない上にぼったくりで今日が治療費の返済期限だと。
話を聞くとこういう手合が先のスタンピード以降多いと。これは後日対処をさせねばと思い治療院の場所と代表者を確認しエレクトラが費用を出すと言いその場で払った。
俺が言いかけると止められた。
そしてこれからその婚約者の所へ行く。
その前にエレクトラが俺を紹介し指輪を外すと大層驚かれた。
そうして婚約者が辛い思いをしているのだから一刻も早く行くとして案内される。
親が出てきたが顔も大怪我を負っており婚約も解消してと言われ、合わす顔がないと弟君は追い返される。
エレクトラのご両親が自分の娘の旦那が国一番の治療師で無料で治療してくれるから俺と助手としてエレクトラに見させてくれというと渋々部屋へ通された。
カーテンを閉め陰気臭い状況だ。無理もない。火傷を負い明るい所で顔を見たくないと。
俺に顔を見せる見ない条件で部屋に入り、エレクトラには俺の方へ背中を向けて座らせるように指示をした。顔が分からないので母親の顔立ちからある程度想像しいつもの少しだけ綺麗になあれと思い後ろからおでこに手を当てながら欠損修復開始と発する。不要だが患者に対して治療中を伝える為だ。
彼女は胸も喰い千切られていて酷かった。
俺はもう弟君と契を交わしたのかと聞くが首を振る
鏡を渡し顔が綺麗になったのを見て驚き俺は
「恥ずかしいだろうけど裸になりなさい。腕と胸を修復します。エレクトラ、下腹部に何か掛けてあげて準備が出来たら呼びなさい。後ろを向いてます」
エレクトラが彼女にかつて自分も修復して貰ったと、俺はいやらしい変な目で見ないと言っていた
準備が出来たというので向き直る。
「えっと胸が喰い千切られているので元の大きさや乳首の感じが分からないのでしっかりり乳首の形をイメージしてください。大きさはどれくらいですか?もし変えたければ言ってください」
彼女「あの、彼の好みが良いです」
俺はわかったと言い彼を連れて行き家の裏で好みを聞く。元々は絶壁だったらしい。好みというより彼女が余りにも胸の大きさを嘆き、姉貴の胸にそれは憧れていたという。
この弟君は頑なに好みを伝えず彼女の事を思う話のみだった。俺は決めた。エレクトラより少し大きくしてやろうと。
そうして腕と見事な双丘を弟君へプレゼントする事になるのだが、それはそれは物凄く喜び泣いていた。
エレクトラも大泣きしていて凄い事になりおまけに俺の正体が当然ばれたものだから玄関先で皆平伏してしまった。俺は皆に立って貰い、俺の妻の親類の証になる書類と俺の血を垂らしたギルドの緊急カードを渡した。万が一の時はギルドに持っていけば俺のカードと分かると、助けを呼ぶようにと。
夜はお土産の魚の料理を頂いた。この世界で恐らく初めて一般家庭の手料理を食べた。
素朴な味だが俺は泣いて食べていたという。
お風呂が無いそうなので工事を手配し、大量の魔石を置いていく。恐らく30年は持つが、それをしまう物置も作らせる。豪華なのにはしないが、せめてこれ位はとお願いした。
今日は皇帝宮のお風呂に招待した。
そして家に帰り夜を迎える。エレクトラは自室がいいと言い、家を出た時のままのその部屋を選んでいた。
そうして儀式を執り行い無事刻印者となった。両親はエレクトラが俺の刻印者となるというと涙を流していた喜んでいた。やはり市井の人々にとってありえない幸運という。俺も貴重な経験をした。今まで一般家庭と接する機会がなかったからだ。色々な課題も収穫もあったすばらしい日々一日であった。
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