第219話 300階層

 あれから約一週間経過したが順調に進んでおり、今は300階層に来ている。

 そう、これからボス部屋だ。俺は今回は何が出たか確認せずにコンボを決める。


 ボス部屋に入ると中央にボスが顕現を始めたのが分かる。中央が光り出したからだ。

 俺は以前のようにアイスウォールで囲み、熱湯を注いでから仕上げに蓋をする。

 その後ウォールに魔力を込めて強化をしていく。


 そうすると顕現が完了したようでウォールが攻撃されている。

 ドンドンと叩く音がするから分かる。

 事前に予測した事とはいえ、今とんでもない事をしていて一刻も早く解除して中の者を助けなきゃという想いが頭の中を支配している。


 既にウォールへの魔力供給は精神的に出来なく、魔力を注ぎ込んでいない。


「裕美!まずいよまずいよ!解除しなきゃやばいよ!なあ頼むから解除してくれ!後生だから!ううううう」


 そう、既にレジストが出来なくて精神攻撃に負けているのだ。

 予測できていたので、発動した魔法を裕美に譲渡しており、今魔力を込めているのは裕美だ。

 道中の実験で発動中の魔法を譲渡出来ないか試した所成功したのだ。サラマンダーも引き継ぐ事が出来た。


 裕美も同じ魔法を使えるのだが、キングの体の影響と思われるがファイヤーボールは禍々しい威力の物を放てるのだが、アイスウォールは思い描いた通りの形にする事がどうしても無理で、隙間が発生するのだ。その為にターゲットを囲んでお湯や水を注入する事が出来なかったのだ。

 魔力量は志郎と遜色ないレベルなのだがコントロールに難があった。コントロールの良い豪速球を投げられないピッチャーとコントロールが悪いが豪速球で翻弄するこういった違いだなと志郎は考えていたのだ。

 但し引き継いだ後の魔法とはいえ強化は裕美の方が上で、志郎が破壊しようとしたが破壊できなかったのだ。だから裕美に頼むしかなく、聞き入れられず今は泣いている。

 勿論裕美を攻撃すれば強化をストップし破壊できる。しかし精神攻撃の影響下とはいえ裕美を攻撃する事はない。何故なら影響が出ているのは女を大事に愛でたいで、今ウォールの中にいるのも女認識だからだ。裕美にはこういう場合足蹴にしてでも相手にしないでと!ものの例えで足蹴と言ったのだが、文字通り志郎がしがみついて懇願する度に足蹴にしていた。はい!ものの例えの分からない天然さんと判明しました。


 それはさておき、志郎がレジスト出来ない事さえ分かっていれば大した事が無かった。

 結局壁を破壊できず数分で発光現象と共にボスを倒した事と志郎への精神攻撃が解除された事が理解できた。

 しかし心に傷を負ってしまった。自らの魔法で愛する女性を殺した事になっており、殺してしまったとずっと呟いていた。


 裕美は志郎にシェルターを出すようにお願いし、言われるがままにシェルターが出てくる。ドロップは裕美が回収しており、急いで志郎をシェルターに入れ、体を直接洗い入浴させる。

 その後食事も食べさせて早々にベッドに入ると志郎はずっと胸をしゃぶっていた。そう、赤ちゃん返りをしていたのだ。裕美は一言も言葉を発せなかった。勿論介護状態での右脚を上げてねとか万歳してね、お口あーんしましょうね等は別だ。発せなかったのは会話だ。会話をすると泣いてしまい、今の志郎に更に精神負担を掛けてしまうから無理に作り笑いをし健気に面倒を見ていたのだ。予め二人で予測していたがそれでも裕美にはかなり辛い状況であった。


 そうして裕美に頭を撫でられながら志郎は眠りに落ちるのであった。

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