第143話 刻印の成否

 俺は朝の微睡みにあった。


 朝日が心地よい。

 傍らには愛する女性がいるのを魂で感じている。


 そして頭を撫でられていた。


 段々意識が覚醒してきた。


 がばっと起きてメイベルを確認するとキスをしてくる。

 ステータスを視ようとすると話し掛けられたりして、中々視れない。ちょっと焦ってきたので、


「おはようメイベル。刻印はどうなった?」


「えーっとね、あのね、その、ちゃんとランスロット様の物になりました」


 微妙な言い回しだ。

 夜中目覚めた時は3時間しか経過していなかった為、まだ刻印が完成していなかったから気が気じゃなかった。


 しかしステータスを視るとちゃんと印表示があり、念話もできた。


 おもわず抱きしめて泣いた。


「良かった。刻印が失敗した夢を見たんだ。絶望的だったんだ。君だけが老いていくのを見なければならない所だった。共に生きようね」


 メイベルは俺の態度にかなり驚いていた。きょとんとしていて可愛らしい。


 そして俺は絶賛甘えていた。


 暫く戯れていると、メイドが朝食が出来た旨をドア越しに伝えていった。


 食堂にメイベルと行くと女性陣が拍手で迎えてくれた。


「メイベルおめでとう!」


 メイベルは泣いていた。

 俺も泣きたい。嵌められたからと。今回は肝を冷やしたから。入れ替わりに完全に気がつかなかった。生娘だから合体で気がついたが、そうじゃなかったら気がつかなかった。


 彼女達は完全に見た目が一緒だ。アリアとロトナは胸の大きさが違うから分かりやすい。しかし、ドロシーとメイベルは性格は違うのだが、演技で分からなくなる。


 この二人は幼少から頻繁に入れ替わっており、年季が違う。


 食事の後、二人を執務室に呼んでいた。


 二人を正座させた


「分かっているのか?刻印の儀式が失敗する所だったんだよ。悪戯じゃあ済まない所だったんだ。分かっているよね」


 二人はしょんぼりしている。余り責めても仕方がないので、


「今後入れ替わりは寝室以外ダメです。いいね?」


「ごめんなさい。反省してます。今度お詫びをちゃんとします」


 俺の左右に立ち、ステレオで喋るから、堪らない。

 俺はキスをして許してあげた。


 そして皆を執務室に呼んで今日の話をする。


 クロエは留守番、他は皆カービングに行く。クロエには今晩留守番をお願いした事のお詫びをする。


 そして王と面談だ。


 ゲートを出して城に向かう。

 メイベルを部屋に連れて行き、寝かせた。今日は1日辛い筈だ。セチアを付き添わせた。



 カービングの町は酷くやられていた。王都の人口は300万人位と言われている。いわれているというのはきちんとした統計がないからだ。


 ただ、10万人以上が亡くなったらしい。

 街の復旧と魔物の殲滅、死体の回収と結構忙しい。

 カービングの兵は死体の処理、ワーグナーの兵で魔物の討伐だ。


 今回の魔物の魔石の俺達の取り分は復興及び、亡くなった方の見舞金に充てて貰う。幸いギルドは無事だったから、魔石を持ち込んだ。ダンジョン攻略分は追加の特別依頼となる。


 多くの貴族もまた亡くなっていた。そんな中の貴族の一人で、スタンピードが始まった時、王からの招集令に背き、逃亡を図った者がいた。しかし無理やり外に出た途端魔物の群れと対面したという。取り潰しが決まっているので、その貴族の屋敷を俺の屋敷にどうぞと言う。メイドや執事はそのまま雇用すればよいかと思う。しかし問題があるという。

 因みに国王の従兄弟だとか。



 取り潰しの理由は、逃亡と、屋敷に行けばわかるというが、王はそれを聞いた俺の事を思うと怖くて言えないと言うのだ。それとできれば急いで欲しいと言う。王も知ったのは今回の騒動だという。

 他に色々やらなければいけない事が多いが、まずはその屋敷に行く事とした。


 それと王権譲渡の儀式は、1週間後を目処に執り行うと。復興次第だが、明るい話題も必要なので敢えてすると言う。



 ドロシーとーアリア、ロトナ、オリヴィア、バトルシップ、ユリア、ラニーニャを連れて件の屋敷に赴く。


 屋敷は立派な外観で、皇帝の住まいとしても問題ないと王が言っていただけの事はある。白亜の宮殿風の屋敷で、三階建で紅の屋敷の倍位ありそうだ。因みにワーグナーの皇帝の居として建築中のは更に大きいという。設計にクロエが意見を出しているから、まあ間違いはないだろう。


 まずは執務室と主の居室を見る。そして寝室。

 特に問題ない。既に布団は入れ替えてあるという。

 風呂や食堂等とても良かった。大きなホールもあり、舞踏会が開催できるというか頻繁に開催していたという。


 俺は首を傾げた。何が問題なのか。屋敷の殆どを見た筈だが分からなかった。


 執事がおどおどしながら


「ご主人様、問題はこの地下室でございます。今回前の主が亡くなるまで私も入室を禁じられておりました。それだけ覚えて頂ければ幸いです。一緒に行くのは心が強くないと行けません」


 執事はロトナとアリア、ユリアに目を向ける。俺は大体の予測をつけており、この三人は居室の確認をさせるようにした。


 そして地下室に降りていくのであった。

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