第122話 戴冠式

 謁見の間は正にザッツ城のイメージ通りだった。


 通路の脇に円柱の柱が左右にあり、等間隔に並んでいる。


 その端の壁際には槍を構えた近衛兵が並んでいる。


 突き当たり、則ち王座があり、そこには玉座に座わった王がおり、隣には王妃が立っている。更にその横にロトナが居た。


 追悼式の後に引き続き戴冠式となっていて、参加していたアリアは王の後ろに控えている。


 王座近くからアレイ殿や各貴族が爵位の順に通路を挟んで男性と女性で別れて椅子に座っていた。


 貴族の後ろに騎士団の幹部が儀礼装備で並んでいた。


 1000人は居ると思うが良く分からなかった。


 通路を進むと騎士と貴族の間に俺の屋敷のメンバー全員が居た。


 そしてそこで一度止まり、左右から儀礼用の鎧を着たアリゾナとオリヴィアが俺の斜め後ろに加わった。


 ホーネットがいつの間にか作った旗を持って旗手として俺の前に入った。


 シカゴとアリゾナは俺の斜め前に陣取り歩きだす。

 貴族の一番前にクロエとドロシー、セチアがいる。


 玉座の前に着くと旗手は所定の場所に行き、オリヴィア達は俺の後ろに儀丈兵として並んだ。


 俺は片膝を着き、一目例をすると王妃が


「よくぞ参られた勇者ランスロットよ。此度の目的を我が王に述べよ」


「この度は私に対する王権委譲を執り行う要請に従い、承諾の証として訪問致しました」


 そういうと王が


「よくぞ承諾して頂いた。感謝をいたします。本日これより我がワーグナー王国は勇者ランスロットに王権を譲渡し、その庇護下に入らんとする。その証として、我が娘ロトナとアリアは勇者ランスロットの妻として嫁ぐものとする。ロトナよ我が王冠を勇者ランスロットへ被せるのだ」


 そういい、外した王冠をアリアがトレイに恭しく載せ、俺は玉座の階段を登り、アリアから王冠を受け取ったロトナが俺の頭に冠を載せた。王が


「これによりワーグナーの国王は勇者ランスロット様が引き継がれた。勇者ランスロット様万歳」


 と言うと全員が万歳を始めた。


 暫くして俺が


「新国王になったランスロットだ。先の混乱をこれから鎮めていく。これからカービング帝国へ向かい、大陸統一に向かう。一番の目的は混乱の元凶であるバルバロッサを討伐する事にある」


 皆を見渡し、一呼吸置いてから


「王に就任して最初の勅命を下す。前王レハルトよ、そなたに勅命を与える。ワーグナーのそなたが王をしていた領土の総督に命ずる。これより遠征に向かう我の名代としてワーグナー領を治めよ。それと兵2万を引き続きバルバロッサ討伐に従事させよ。

 又、我は自らを皇帝と名乗り、ワーグナー領からの皇帝への税負担額はこれより協議により決めるものとする。レハルトの爵位はワーグナー領にて序列第1位の大公とする。他の爵位の者も現状の爵位を認め、総督には大公より下の爵位の任命権を貸与する。但し大公は朕が任命権を持つ物とする。これより統合していくであろう各国にて敵対行為が無ければ同様の措置を取るつもりであるが、バルバロッサのみ現王家は取り潰し、皇帝直轄領とする予定である。皆に我の力を伝える。スキルにより我れ自ら一度訪れた場所には瞬時で移動出来るゲートを開く事が出来る。これにより例えばボレロとワーグナーを1日で往復する事が可能となる」


 せチアが俺に近づき水の入ったグラスを持ってきたのでうけとり喉を潤して続けた


「政策の一貫として我が配下の領土に対し奴隷に対する決まりを、つまり法律を制定する。これより併合する国々も併合後一律に定める。法律の施行開始はワーグナーではこれより30日後、併合したクニも併合後30日とする」


 皆を見渡すとざわめいている


 アリゾナが大きな声で一事


「皇帝陛下がお話しをされておる最中である。静まれい!」


 怒気をはらんだ声にシーンとなったそして俺は続ける


「服装の改善を図る」


 俺はくいくいと脇に控えている、奴隷の格好をさせた騎士を連れてこさせた


「こちらの騎士に一般的によく見られる奴隷が着ている貫頭衣を着て貰っている。すまないな。このような服を着せる事を禁ずる。粗末な履き物、裸足で外を歩かせる事を禁ずる。飲食店等で床で座って食べている者を見るが、床に座らせて食べさす事や待機させる事を禁ずる。奴隷食の廃止を命ずる。飲食店で奴隷を同行させる場合主人と同等な物を食べさせる事。抜け道を探そうとするな!奴隷を店の外で待機させたりしていて主人が店の中や、奴隷のみ外で食べさせるのも禁ずる。恐らくこういった事をしだすだろう。まともな人として扱うようにする事。奴隷を物扱いにする事を禁ずる。奴隷に一方的な暴力行為を禁ずる。罰などで手アシを切り落とす目を潰すし耳を切り落とすなどの行為が散見されるが禁ずる。性行為も暴力と見做す。同意無しの性行為を行う事を禁ずる。奴隷販売時は性行為の可否を販売時に明示する事。現在奴隷の立場の者は新たに作る奴隷局に登録する事。

 奴隷の首輪に本来備わっている機能に意図しない性行為行った場合首輪が発光すると言うのが有るのだ。これは奴隷の主人が責任を持って行う事を命ずる。この項目を設定する事。つまり奴隷を国に対して登録する事の義務化を図る。首輪が光っている奴隷は国で保護して、没収して奴隷開放を行う。奴隷以外の生活をして行く為に一定期間必要な教育や職の斡旋を行う」


 皆驚きと戸惑いの表情が、馴染ある。



「奴隷税を設立する。奴隷購入後、又は奴隷を連れて我が領土に入った場合そこを起点としてスタートする。犯罪奴隷は適用外とするが、再審査で犯罪具合を確認して、罪を償う期間を選定し直す事とする。

 登録奴隷に対して税金を課す。但し奴隷は取得後国に対して所有者登録の義務を課す。未登録の奴隷は発見次第没収する。奴隷局にて奴隷登録時何月が税金の支払い月か決定する。奴隷一人に対し奴隷税は1年目は年額金貨10枚として、以後年を重ねる事に前年の倍額が税金とする。5年目だと金貨160枚、10年目だと金貨5120枚となる。払えない場合は奴隷没収とする。これは奴隷商人に払い下げても変わらない。つまりある程度の年数で解放する仕組みにする為だ。他の国に出てもリセットはされない」


 周辺のざわつきが大きい。

 まあそうだろうな。奴隷制度に関わる話だ。


 俺は演説を終えて、後を総督に任せてゲートでカービングに向かっている一軍にロトナ達を連れて合流した。


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