第100話 修行の後に
マクギーが来るまで柔軟体操と受け身をしていたが、マクギーは俺に近付いて来たとたん手にしていた杖を急に振りかざしてきた。
そう言えば今日は朝姿を見てからが修行のスタートと言っていたな。そして本日の修行は終了と言うまでが修行中だと。
マグギーはそこらにいる冒険者の出で立ちで市井に紛れ込みそうな格好だ。
不意打ちになんとか対処して杖を避けたが驚いた事に仕込み刀のようで、鞘の部分が伸びてきた感じに2撃目が迫ってきたが、剣で受け流した。
「やあおはよう。ちゃんと反応できたね!素晴らしい。仕込み刀だが驚いたようだね。こんな武器も有るから見た目に騙されないようにと伝えたかっただけだからね。不意打ちは今日だけだから明日からはちゃんと挨拶してから修行開始だからね」
「いやー流石に不意打ちには驚きましたが、仕込み刀は見事ですね。改めておはようございます」
早速修行が始まったが、今日はひたすら基本の型のみ。
ゆっくりと打ち出される剣を指示通りに弾いたりカウンターを繰り出すだけだが、どうやら俺は一度やれば覚えてしまっており驚かれてしまった。
段々早くなり、キンコンカンコンガキーンと言う感じに気がつくとかなり早く打ち合っていた。
既に一般人には剣筋を追えないレベルだ。
普通は数年やらないと出来ないと呆れていたが、ちゃんとスキルは止めていた。
あまりに習得が早く、マクギーは獲物を槍に切り替え槍対剣との基本をゆっくりはじめて、早くも1時でキンコンカンカンと本気の打ち合いになっていた。
流石に俺もおかしいと感じはじめていて、原因を考えると昨夜の臨死体験しか思い至らないのだ。確かに日記にバルバロッサにて執事のセバスチャンや元騎士のフレデリカ嬢に剣技を毎朝教えて貰っていた筈だが、期間が短く素人に毛が生えた程度の筈なのだ。
考察するに何かのギフトの発動条件を満たしたようだ。
推測すると技術取得スピード200~1000倍位か、技術コピーの取得系統だろうか。
昼近くになり基本を再度確認して今日は終わったのだ。
昼はアレイ殿が知人と食べると言い、同行を求めてくるので応じたが誰と会うか内緒だった。期待と不安がよぎる中、馬車に揺られるのであるが、嫌な予感しかいしないのは気の所為だろうか。
もう少しで到着となる頃にちょっとした事件が起こったのだ。
馬車が急に止まって叫び声が上がったので咄嗟に剣を出して身構えて外に出ると一人の女性と子供が馬車の前で倒れているのだ。
事情が分からないが怪我をして骨折をしているようだ。
子供はこの女性に抱き抱えられていて無傷のようだがこの女性はこの子の母親だろうか?それにしては若そうだが、今はそんな事を気にしている場合じゃないのだ。
苦しそうに呻いていて脚もあらぬ方向に曲がっている。周辺の安全確保が最優先なので馬車の周りを一周して周辺を警戒していたがアレイ殿と御者が
「申し訳ありません。子供が急に飛び出して来まして間に合わなかったのですが、この女性が咄嗟に子供をかばった次第でして」
「相分かった。襲撃ではなさそうじゃな。ランスロット殿、大丈夫そうなのでその女性の治療と介抱をお願いしたいが良いかの?」
「ええそうですね、直ぐに直しますからもう少しの我慢です。治療の為体を触りますので失礼します」
と言い女性を抱き起こして傷を確認するも顔に深い裂傷と服が汚れてたのと脚の骨折位だろう。出血は顔からだ。脚と顔に触れヒール唱えると見る見る傷が塞がり女性も驚いていた。怖かったのだろうか、少し濡れていて当然臭っているので
「汚れてしまいましたね。今クリーンを掛けますから。クリーン」
と言うと臭いも取れ顔や服の汚れもすっかり取れた。そこには驚くしかない美女がいたのと、触れた時に見えた幻影が理解できなかった。彼女と共に一軍を率いて戦っているのだ。彼女は本陣で俺に何かの加護を唱えていた。俺が前線で戦えるように後方の業務をしているメンバーに指示を出していて、俺の為に不在の陣を回してくれる有りがたい存在で、恋人か妻の一人のようだ。
更に悩むのだ・・・・・・俺今度は何やらかすんだろと。
治療が終わり顔を撫でて傷がない事、脚を撫でて正常な事、腕と手の状態見て擦り傷が消えている事、前は控えたが背中をさすって大丈夫か確認し
「触った感じだと治った筈ですがまだどこか痛む所は有りますか?」
と言うと俺の手を取り胸に当てるので慌てて
「ヒール」
と唱えると彼女は顔を真っ赤にし手て首を振り
「失礼しました。傷は大丈夫で御座います。痛い所と言われましたので、そのつい私の心があなた様を素敵に思いドキンとして痛んだだけですので大丈夫です」
と俺の頬にキスをし、お礼を述べ貴族令嬢がする優雅なお辞儀をするとそそくさとその場から子供の手を取り子供を叱り付けながら涙を流して、怪我が無くて良かったと言いながら去っていった。
アレイ殿は何事もなかったかのように、その場を出発するように御者に伝えていて出発すると5分位進んで目的地に着いたのだが、着いた先を見ると項垂れるしか無かったのだ。
しかし何者だったのだろうか?粗末な服を着ては居たが、貧乏人には見えなかったが、心の清い素敵な女性だったな。旦那さんが羨ましいと嫉妬したのだ。
馬車が通されたのは食堂だったが、ただの食堂ではなく王城のそれも王族用の食堂だ。
嫌な予感とは当たるもので、待ち構えていたのはどう見ても王だ。
「忙しい所急に呼んで悪いな。彼がそうか?」
「ははは暇じゃてから気にしないでくれよ。で、こいつがクロエの心を射止めた勇者だよ」
「ほう。あのお嬢を落としたのが彼かフムフム」
俺はどうすれば良いか判断着かないので取り合えず挨拶してみた
「お初にお目にかかります。S級冒険者をしております異世界からの転移者で真の勇者らしいランスロットと申します。恐らくバルバロッサ王家との戦闘で記憶を失いこちらに強制転送しております。以後おみ見知り置きを」
王は満足していたがはっとなり
「おおこれはご丁寧に。ああすまんなワシが誰だか分からぬわな。一応この国の王をしておりますレハルトと申します。勇者様」
と立ち上がり目上の者にする礼をしてきたのでさすがに驚き
「あの、一国の王が非公式の場と言え一介の冒険者に対してまずいと思うのですが?」
「なあアレイよ勇者様は記憶を無くされておると言うから自分の立場を、それもワーグナー王家からの立ち位置をご存じないのではないか?」
「これは不覚じゃったわい。その可能性を失念しておった。兄者よ悪い悪い」
やはり兄弟か。しか立場ってなんだ?
そう思って居るとアレイ殿が色々説明してくれた。
勇者は厚遇される対象
伝説のハーレム王は元々この国の守護神となった
真の勇者は王よりも立場が上であり客人として最上級のもてなしをする対象
かつてこの国が魔王により正に攻め滅ぼされる直前にハーレム王が魔王軍を撃退して英雄となり伝説ではあるが史実としても伝承されている
勇者のハーレム入りは大変名誉な事で、例え王族の娘でも側女でも妾でも良いので寵愛を頂ければ国家の安泰に繋がる
等だった
つまりこの国に居ると俺は安全に過ごす事が出来そうだ、王の庇護下に居れば貴族からのちょっかいもないだろうな程度に思い軽く見ていた。
王の目的はやはり真の勇者による刻印にあるようで、王の元にも未婚の娘が居るらしく、俺の人となりを見極めたいようだ。そういえば噂で王女は絶世の美女で容姿端麗性格の良さで国の人気者と話もある。
話題を変えたかったのでダンジョンについて依頼を出したのが国王自身と聞いていると話したりした。
王はアレイ殿から俺のことをかなり知っていて、隷属契約のこともアレイ殿に話していないのに知っていて驚いた。それは
「何でもダンジョンに行ってくれるそうで有りがたいです。何でもランスロット殿のギフトに奴隷契約をしているととんでもない成長補正がかかるのが有るとか。是非我が娘にも刻印を授けて娶って頂き、主従契約もお願いしたい位じゃ」
と時折メイドの一人をちらちら見ているのが気になるが
「ははは既にクロエさんとオリヴィアさんも私の所に来る事となって居るのは既にご存知でしょうし、20人以上を娶って居るのですよ。王女様もそんな相手は御嫌でしょう?私は好きな相手以外、例え絶世の美女で見た目が私の好みでも抱きませんよ。特に政略結婚は有り得ません。まあクロエさんはアレイ殿に社交辞令で言われていましたが、たまたま知己を得てお互い好きに成ってしまったので結果として希望を受け取りましたが、偶然ですからね」
「ほほほ。我が娘はな親バカと思うかもしれんが、母親に似て絶世の美女で、穏やかな性格で時折孤児院の手伝いや奉仕作業を行っていてな、ワシに似ずそれは出来た娘で人格者と呼ばれておる。娶れとは言わんが一度会ってやってくれまいか。珍しくのう娘が勇者様会わせてほしいとねだるのだ。それになまだたかだか20人程度じゃぞ?かの御仁は3桁じゃぞう!うはははは」
「そういう事でしたら大丈夫ですが、流石に3桁は無理かと思いますが」
そうこう話していると時間が過ぎていき本日はお開きとなり俺が出来ればこの国に本拠地を構えて欲しいと言われ、まず生き別れになっている妻達と再会すべくボレロを目指す事で理解してもらい、隠しても仕方ないのでゲート魔法の事を伝えるとメイドを呼び俺のゲートポイントを城内に幾つか持たせるので城を案内せよと伝えている。寝室もと言うので流石に断ったが。溜息の数が増える一方だ。
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