第91話 運命の悪戯

 特に急ぐ必要が無いのでぶらぶらと街並みを楽しみながらゆっくりと腕を組んで歩いていく。

『バルバロッサとは建物の作りが違うんだなあ。色が違うのかな?』

 と呟く。


 建築材が木とレンガの組み合わせの建物の比率が違うのだ。

 ふと思うそう言えば何故城壁もそうだが、街並みもバルバロッサと比べれたのだろうか?

 ギルドの位置や武器屋の位置もはっきり判るが、店主の顔が思い出せない。


 ふと気が付くと道の片隅でセチアが抱き付いて背中をさすってくれていた。どうやら急に呆然として呟きだしたらしい。少し考察したいと喫茶店に入り紅茶を啜る。バルバロッサの記憶は街並みは思い出すがどういう行動を取ったか思い出せないし、ゲートも開かなかった。

 はっきりとここは来た事がある ”はず” と思うも駄目だった。例えばビデオやテレビで見て景色を知ってはいても訪れていないから知識だけ有るそんな感じと解釈した。


 自己完結して満足するとセチアにお礼をして店を出て真っ直ぐギルドへ向かう事にしセチアの腰に手を回して歩いて行くのだった。


 程なくしてギルドに着いたのでまず受付に並ぼうとしたが、空いている時間で空いている受付があるのでそこに行くと10代後半から20代前半の年齢不詳な感じのサバサバした闊達そうなショートカットの受付嬢がおり


「いらっしゃい若いお兄さん!ギルドへ!ようこそ」


 と意外と若い声だったが、丁寧に喋っているが、周辺の冒険者の目が俺を睨んでいた。テンプレ発生かなと思いつつ先手を打っつことにした。そう、ギルドカードをおもむろに出して少し大きめの声で

「S級冒険者のランスロットだ。今日はこの子の初心者講習の日程の確認と、俺がこの子と一緒に初心者ダンジョンに入る許可と、昨日持ってきた討伐した盗賊団の報酬を受け取りに来た。」


 と言うと後ろに近づいてきていた奴らが散り散りになって行くのが分かる。受付嬢が俺のカードを見て驚き、


「あっれ?ランスロット様はS級ですが、ナンシーと言う職員はおりませんが?」


 と言うのでカードに指を指し所属を伝えると


「こ、これは失礼しました。遠方よりご苦労さまです。が、こんな遠方までどう為されたのですか?」


 とうるうるした目で聞いてくる。立ち上がったので分かったが身長は175cm位と俺よりは低いがここにいる女性の誰よりも背が高かったがやはり胸に目が行くが、あれがびゅーっと出ちゃいました。



 名前 オリヴィア(本名表示不可偽名)

 種族 ヒューマン(隠蔽中堕天使)

 性別 女性(処女)

 B83 W56 H84  身長175c

 年齢 19



 あっ意外と若いんだな!20代に見えたのは色気の所為か。

 つい呟いてしまった。『堕天使・・・偽名』


 彼女は見る見るうちに青ざめて震えているのが分かる。おまけに失禁しているのは俺が怖がらせたのだろう。ツーンと匂いがしてきたのだ。

 肩に手を当てクリーンを唱えて


「ちょっと込み入った話があるので会議室か何かで話が出来ませんか?」


 と言うとクリーンを掛けられた事のお礼をして3人で会議室へ向かった。


 会議室に入り適当に腰を掛けると彼女は一言言い俺にしがみついて泣きながら言うのである。


「私を殺しに来たのですか?出来れば痛くしないで下さい」


 震えながらまたもや怯え失禁が止まらない。再びクリーンを唱えて


 彼女の頭を撫でると俺は吹き飛び彼女も驚き泡を吹いて気絶していた。


 直接触れたときの反応としては異例だろう。手帳にもこれから起こる事を幻覚で疑似体験すると有るがそんな生易しいレベルでは無かった。


 彼女が天使として天界に居るのだ。どうも俺が彼女の立場を回復して戻したらしくそれと俺が召喚された事に関わりがあるらしい。

 俺は天界の者に命令を下して居るっぽいんだ。

 一体俺何やるんだ?流石について行けない。


 オリヴィアを抱き上げるとほっそりとしているが柔らかく温かだ。触れると神々しさすら感じられるのに驚いた。

 髪の色が青から美しい銀髪に変わっている。顔つきも闊達なサバサバした感じから優しいお姉さんというか美人の雰囲気だ。顔が変わったにでは無く、表情から雰囲気が変わったのだ。


 頭を撫でて、口に付いた涎を拭き取ってやり、セチアに体を触らせて異常は無いか確認するものの特に何も無い。


 5分位で意識を取り戻したが、俺の顔を見るなり俺の服が温かい何かで塗れてきたのが分かったので二度グリーンを唱えてステータスカードを渡して


「天使族の方よ、貴女を害する気は無いので落ち着いてください。貴女は何者ですか?」


「本当ですか?本当に殺さないのですか?私は大丈夫なのですか?」


「信じろと言うのは無理でしょうが、私は転移者です。しかも真の勇者認定ですし何より貴女を殺す理由が有りません。こんな素敵で美しい女性を愛する事があっても害することは有りませんよ。良かったら事情を教えてくれませんか?」


 彼女は安心したようで簡単な自己紹介をしてくれたが、ここでは無理なので夜仕事が終わったら話をしますとなった。18時に終わると言うので二人で迎えに行くのだが、表向きはセチアと友達になり食事をするがセチアの彼氏の俺が同席する感じにして欲しいと頼まれ、二人とも頷いた。


 とりあえずセチアの初心者講習の日程を確認して貰うと二日後なのが分かったので申し込みを確定してもらい、先の盗賊の報酬の話しになるとギルドマスターの所に行き、会議室に戻ると後を付いてくるように言いギルドマスターの部屋に3人で入っていった。


 相変わらずボディコンで胸がこぼれ落ちそうだ。


「遅かったわね。まあ座ってちょいうだい。オリヴィア貴女もね。」


 有無を言わせずオリヴィアを隣に座らせ話を始めた。


「まず盗賊だが流石にS級だな。兄者からも聞いているが情け容赦ないようだな。全部で8400万になるよ。カードに入れておくが良いかい?」


 わざとらしくミニスカの脚を組み換え、デルタゾーンを見えるようにして、挑発してきているが平然として会話を続ける。


「大金貨二枚と金貨200枚を現金で、残りをカードに出来ますか?」


「ほう。誘いに乗らないか。これでも見た目には自信が有るのだがな」


「やはり、わざとなんですね。今からセチアとデートなんですよ。俺が一人の時に誘って貰えれば、貴女に落とされる自信がありますよ。」


「ははははフラれたね!いやーフラれるのなんて初めてだよ。流石はハーレム王の二つ名を持つだけの事はあるし言葉もやはり上手いな。でだ、本題に入るが良いか?」


「あ、あの、その二つ名を何故?バルバロッサからはかなり距離が有りますよ?」


「ああそっちか、ギルドの通信網を舐めるなよ。バルバロッサのランスロットと言えばこの前Sに上がったハーレム王しかいないだろうに。週に一度全世界のギルドにS級以上の冒険者の動向が発信されるんだよ。尤もAランクの魔物の魔石がいるからそうほいほいとやれるような簡単な事じゃないがな。おまえバルバロッサじゃ賞金首だぞ。召喚勇者を拐したとしてな」


 俺は驚いたのだ、そんな事が出来る事に。


「どうもそれ絡みで王城と戦い俺は敗れたのかこの国に文字通り飛ばされたようなんだ。」


 勇者召喚の事を手帳に書いて有ることを説明して、まずボレロに向かい、妻達と合流してバルバロッサの王家を打倒する覚悟をしていて、記憶をなくしたと説明した。ステータスカードの称号を見せると


「やはり貴方様が真の勇者様でしたか。それに既にオリヴィアの事をある程度知っているのでは?改めて挨拶をさせて貰います。私がワーグナー王国ギルドマスターのクロエ・アールグレイです。」


先程までの粗野な態度とは一転して丁寧で妖艶な女その物だ。右手を差し出してきたのでつい右手だけじゃ無く両手で握ってしまった。恐らく仕事の習慣だろう。うっすら思い出すのだが、仕事が上手くいくと両手で握手をしていた気がする。そしてクロエは俺の手を握り返してきたのだ。お互い電気が走り見つめ合ってしまった。一瞬意識が飛び何を感じて見たかお互い思い出すのは数日後だったがこの瞬間からクロエは運命の糸に繋がれていると確信し猛烈に好意を持ってしまい、何故かお互い求めてキスをしてしまったのだが何事も無かったかのように


「改めて俺はS級冒険者のランスロットで転移者です。以後お見知りおきを。それとオリヴィアさんの事は殆ど知りませんが、今晩色々教えて貰える筈です」


「オリヴィア、今この場で君の事を彼に話して置いた方が良いと思うがどうだ?」


 オリヴィアは頷いて観念したようで話してくれた。


 自分は天界を追放された天使であり、異世界召喚のギフトとスキル付与担当者で、俺の召喚の時に大きなミスをしてそれを隠蔽した罪で人界落ちになり、力を全て奪われ人として生きる事を強制された。天界に戻る手段は、


 1)魔王を討伐

 2)ミスをしてこの世界に転移した者のサポートをして能力を完全解放させる。


 この2つの片方を達成する必要がある。

 もし途中で死ぬと天使とは言え本当に死んでしまうと言う。


 俺を見て恐れたのは恨まれていて殺しに来たと思ったからと。


「本当なら異常が有る時点で高位天使に相談する必要が有りました。しかし、私はミスをしたと思われたくなく貴方様の転移時にエラーが出ていたのを隠して、つまり隠蔽してしまったんです!その結果天界に恐ろしい事が起こり、私は貴方様に救いを求め助けて頂くか、貴方様の手で私を殺して頂く必要があります。私が死ねば天界の事件も終わる筈です。」


 彼女の話は概ね理解はしたが、話しの展開についていけていなかった。


「じゃあ君が俺を召喚させたのか?」


「いえ、私はオーダーされた転移をされる方にオーダされたスキルやギフトを付与して調整して最後に送り出すだけなので、召喚の儀式には関わっては居ませんが、貴方様を辛い目に合わせたのは私の所為なのです。申し訳ありません。天界を助けて頂けるならば、この身も心の全てを差し出します。例え性奴隷にされても、腕を切り落とされても構いません。どうかどうかううう。」


 最後は泣き出した。


 さて困った。天界の展開に頭がついてきていないのだ。既にキャパオーバーで笑えないオヤジギャグだし。


 ギルドマスターは何故かオリヴィアの素性を知っていて俺に引き合わせたのだが、しかしきちんと話をしなきゃだがオリヴィアを殺せば天界が収まると言うのは眉唾だな。


 何かが引っ掛かる。

 手帳にオークキングとの会話について書いてあった。真の敵が魔王じゃないと言っていたと重要なマークまでしてある。

 天界に何が起きている?手帳に有る水樹の転移との時間軸のズレも何か影響してるのだろうか?俺はエラー的な存在なのだろう。俺が招いたのか巻き込まれたのかは定かでは無い男



 そしてオリヴィアの話が終わると握手の後から様子の一変したクロエが何故かモジモジしなが。


「先程は失礼しました。私の様な挑発するような年上の女は嫌いなのでは?先程痺れが走り運命を感じて少し驚きましたの」


「貴女のような妖艶で素敵な方は好きですよ!尤も目にやり場に困りましたけどね」


 意を決したような表示でクロエは続ける


「今晩オリヴィアに同行したですが良いでしょうか?」

「分かりました勿論構いませんが、夕食を何処かで食べながらにしませんか?」

「それではお店はこちらで決めておいた方が良さそうですね。来たばかりで知らないでしょうから」

「助かります!お願いして良いですか?」


 と訊くと少し首を傾けてから頷いていたが、しおらしくなったクロエという女性のフェロモンにやられてしまったのだ。

 夜オリヴィアとクロエを迎えに行くこ事となり一旦ギルドを引き上げル時帰り際にクロエを凝視して驚いた。30位と思っていたからだ。見た目とは裏腹に身持ちが良いようで独身だ。 

 金髪碧眼の白人で顔付きはきつめの男勝りの妖艶な美人な感じで、笑うとおっとりした美人で百面相謎の女性だ。先程からの男を見下した感じから一変して尽くして紐にされる勢いのお淑やかな雰囲気だがその存在感に気圧されていた。そんな大人の色気ムンムンなクロエが欲しいと思うしょうもない男で有る。クロエは貴族でギルドマスターなのだ相当に頭が切れるだろう。俺の所にこの世界での参謀が欲しい。手帳にもこの世界で生まれ育った者での参謀が居ないと殴り書きが有った。色んな意味で欲しいと俺は全力で行くと決意していくのだ。


 名前 クロエ・アールグレイ

 種族 ヒューマン

 性別 女性(処女)

 B89 W57 H86  身長166c

 年齢  26




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