第90話 セチアの想い

 夕食を終えて俺とセチアは宛がわれた客室に案内されたが、ベッドにて目下俺が押し倒されていた。

 どうしてそうなった?


 部屋に案内されてメイドが引き上げるとセチアが俺の手を引いてベッドに連れていき、


「抱いてください。」


 と鬼気迫る勢いでお願いをされて、あれよあれよと流されて押し倒された所だ


 むさぶるようにキスをされると思わず胸を揉んでしまい、火が付いて致し始めて、服を脱がせる直前に意識が戻った。トリップしていたようだ。


 俺は手を止め、セチアに囁く。


「思わず俺も意識が飛んだけど、今はやめようね。君は魅力的すぎて眩しいけど、まだデートすらしてないんだよ。俺はキザだからさ、ちゃんとデートして、セチアと思い出を作り、その雰囲気で愛したいんだ。今のように欲望の赴くままというのも魅力があるけど、俺はセチアを一生守りたいから思い出をちゃんと作りたいんだ。俺のお嫁さんになって欲しい。だから明日デートをしよう。ちゃんとしたいんだ。それに、今はボレロに行かなければならない。今は万が一君が身籠ると困るんだ。」


 俺はもうセチアを娶ると、愛していると気付いてしまっていた。もうこの思いは抑えられない。数日しか一緒に居ないけど、彼女の人となりは女性らしい女性で、陰日向に尽くしてくれて一緒に居ると心地よいし健気な姿は俺には眩しかった。尽くして貰えるなんて良いよねぇ!


 セチアは俺の言葉に驚き、何を言われたのか、自分が何をしたのか思い出して顔を真っ赤にしてただただ頷くのが精一杯だったようだ。嬉しいとも言っている。そんなセチアは美しく可愛かった。体の年齢は俺より4歳上だが、22歳と女盛りのピチピチ(死語)なのだ。姿も美しく、盗賊が奪いに来たのも頷ける。俺は45だから二回りも違う。


 幸い明日はまだ訓練は無い。師範代が出掛けており早くても2日後にしか帰ってこないのだ。どの道明日は暫くの間こちらでご厄介になる為にセチアの服を買う必要が有るので、デートを兼ねて買い物をする事に決めた。


 俺はふとトイレに行くと部屋を出て、見掛けたメイドさんにデートスポットを尋ねていった。

 そんな分かりやすい行動にセチアは気が付いており、涙を流していたが、セチアが気が付いてしまったのを俺は気が付かない振りをして今日はもう寝る事にした。


 布団に入りセチアが何も言わず俺を胸元に抱き寄せる。そして心臓の鼓動を感じさせてくれる。鼓動が心地良く一気に眠気に襲われて来たので、寝る直前にセレナに念話を送った


「セレナさん聞こえる?申し訳ないが王都で1月間位なんだけど、剣の訓練を付けて貰う。長い道中に死なない為の修行なんだ。君達に早く会いたいが、死んでは元も子もない。」


 と言いつつ見えない手を思い浮かべると発動したようで、やはり何かが出たが、今度はお尻を撫でたようだ。頭を撫でようとしたのだがお尻だったようで制御が難しい。


「ごめんね。見えない手、神の手はまだ制御が出来ない。こちらは順調なの・・・」

 魔力切れでブラックアウトしてしまった。


 ふと意識が戻ると、セレナが話し始めたが、泣いている。


「志朗さん、早く逢いたいけど仕方がないんだよね。頭では分かっているんだけど、ううう。あのね、明日オークションが有るの。日本人が居るから奴隷引換券で買って私達で保護するの。言われた通りちゃん」


 と場面が変わったのだ。


 四日目 day37


 またもや皆が集まっていたが、見慣れない女性が居る。どことなく背格好がナンシー嬢に似ているが顔が違う。丸顔で金髪の可愛らしい女性だ。側にセレナもいる。手を握りたいと思うと何か柔らかいのを掴んでついつい揉む。みるみるセレナの顔が複雑な表情をしているのが分かる。

 不思議な事にセレナの胸が勝手に揺れている。

 ふと手を止めると揺れが無くなった。どうやら神の手はセレナの胸を触っていた。


 周りが言う。


「ナンシー様どうか気をつけて下さい。」


 どうやら金髪の見知らぬ女性がナンシーと呼ばれている。

 と感じていると意識が戻りセチアの胸を揉んでいた。


「やあおはよう。ごめんなさい。寝ぼけてついつい胸を触っていたんだね。嫌だったろう?」


「ううん。むしろ嬉しかったんですよー。このまま私のふごご」


 何を言いたいか分かったので、挨拶のキスで先を言わさない。


 とスキンシップを深めているとメイドさんが朝食の準備が出来た旨知らせてくれたので、急いで着替えて食堂に向かう事にしたが、ついついセチアの着替えをチラ見して意識してしまいセチアに

「やせ我慢は体に毒ですよ。私で発散して下さい。私なんて性奴隷でしかお役にじょっふぁああ」


 またもやけしからん事を言うので口をキスで塞ぎ


「悲しい事を言わないでね。二度と自分の事を奴隷、しかもよりによって性奴隷なんて言わないで欲しい。ね。頼むから哀しい事を言わないで」


 俺は涙して懇願したが、心に響いたようだ。


「申し訳ありません。もう二度と性奴隷なんて言いませんから、だから、だから、どうかお許し下さい。」


 土下座して謝るので慌てて起こして抱き締めて二人で暫く泣いていたが、俺のお腹が鳴ったのを契機に我に返る事が出来て二人仲良く食堂に行くことが出来たその時に丁度アレイ殿とタオが現れ食事を頂いた。


 空気を読めないのかアレイ殿が、


「ランスロット卿よ。セチアさんにちゃんと刻印を刻んだのであろうな?」


「いや、昨日は疲れておりそれどころでは無く寝てしまいました。今日はギルドに行った後セチアとデートなんですよ!」


「ふむふむ。ちゃんと考えておるのだな。セチア殿よ、ちゃんとお強請りをするのだぞ!」


『この爺様要らん事を言ってくれるので、セチアは真っ赤じゃ無いか!デートの後の事を意識してしまうじゃ無いか!』

 と思うがその後のセクハラ攻撃はいっこうに止まる気配が無い。どういう風に男に尽くすのかと恐らく自らの性癖を暴露している感じで彼に対するメイドの冷たい目が面白かった。

 貴族って皆こんなんなんかなと思いつつも、真っ赤になったセチアを可愛いなと思うが助けてやらないゲス行動を発症していたが、途中から真面目な話になっていた。


 セチアの滞在中の扱いだ。

 一つはメイドの教育と、貴族の令嬢の教育をしてくれるという。当人も希望したのでお願いする事にしたのだが、またえらく気に入られた物だ。

 俺の訓練は明日からとなる。一日中じゃ無いので時折セチアとデート出来そうだが、この街を探索してみたかった。

 気になっているのが初心者ダンジョンだ。バルバロッサにも有り、俺も攻略していたようだが、セチアのパワーレベリングをいずれしておきたい。

 セチアはもう帰る所が無く、俺の居る場所が自分の居場所となっているので、ボレロ王国に行くのは問題ないのだが、道中が長い。2人じゃまず無理だろうし今のままじゃ命がいくつあっても足りない。セチアに強くなって貰い、盗賊如きに遅れを取らない所にまではしておきたい。


 小さくて良いので家を買おうと思う。移動して家で休み翌朝移動をリスタートする為だが、セチアの護衛や御者を行える者が欲しい。セチアを家に残す手もあるが、出来れば避けたい。


 仲間が欲しい。信用できてボレロ王国に行けるメンツ。そんな都合の良いのがいるわけが無い。欠損奴隷を購入して修復してボレロで解放かその後も仲間としておいておくかと言うところかな。


 タオとアレイ殿に相談してみた。

 小さな家なら貸そうと言うが、そこは俺の意地で購入したいと言い、不動産屋を紹介して貰う事となった。

 奴隷について聞いたら、奴隷商に行くと良いと言う。俺の能力で欠損修復が有ると伝えると他の所では喋るなときつく言われた。ひっきりなしに治療を求められて身動きが取れなくなると警告されたが、旅の仲間に対しては奴隷の購入が良さそうだ。


 それと近いうちに奴隷オークションが有るというので、戦闘奴隷を買えば良いという。バルバロッサは性奴隷で有名だが、ここでは戦闘奴隷をオークションの目玉にしているし、性奴隷向けもあるから両方買えば良いとしゃあしゃあと言ってのけた。何故かセチアも頷いている。

 俺の持っている物に奴隷引換券が2枚有り、高級奴隷をこれで確保できそうだ。使い方は手帳に書いてあった。

 さすがに今日は奴隷を買うのは無理だが、今日のデートは不動産屋を回ってみる事も考え始めた。


 家はボレロ王国目指して移動を開始する時点で必要と思う。

 ゲートで家に帰るので部屋がそれなりに欲しい。

 いずれの事だが、ボレロ王国に着いてもこちらに全員で移り住んでも良いかなと思う。中々良い国だ。


 と色々考えていると時間はどんどん過ぎていき考えに夢中で手が止まってしまい、途中からセチアに食べさせて貰っていたのだった。さりげなくなので食べ終わる頃に餌付けされている事に気が付いたのだ。


 食事の後セチアと腕を組みながらギルドに向かうのであった。

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