第87話 王都へ

 四日目 day36


 又もや 女神達が騒いでいた。

 金髪のロングヘアーで俺のストライクの綺麗な娘が嬉しそうに皆に話していた。


「ランスから念話が来たよー。ワーグナー王国にいるって。それだけ伝えて途切れたけど、流石ランスの魔力よね!私達からだとあーとかうーで魔力切れるもんね!」


 嬉しそうにしている彼女が愛しく涙が出てきた。

『シェリーに会いたい』

 不思議と彼女の名前が出てきた。


 又もや風景が変わる。


 シェリーやナンシー達が何処かに出発しようと馬車に集まっている。

 シェリーに触れたい。

 そう思って手を前に出すと、何か柔かな物に当たった。柔らかく暖かい。


「きゃっ」


 と誰かの声がした。

 シェリーだ。辺りをキョロキョロしていた。どうしたんだろう?


「な、な、何かがいます」


 周りが騒然となっていた。

 すると

 目が覚めた。


 隣にはセチアがいて、俺を眺めていた。どうやら寝ぼけてセチアのお尻を撫でていたようだ。

 朝の挨拶をすると謝罪をして着替えて朝の走り込みと鍛錬を行った。


 食事を終え、昼食用のお弁当を昨日注文していて受け取ると王都に向けて出発した。

 御者席は二人が座れる。

 馬車の扱い方を教えて貰いながら進む。だんだん慣れてきて、セチアに見て貰いながら御者をしてみた。セチアは自分が行うからと言うが、怪我や病気になった場合等の万が一の時に俺が馬車を動かせれないと困るから、最低限制御できるようになりたいとお願いして練習をしている。


 セチアは俺によくしてくれる。

 セチアの髪はストレートで、今は俺がブラシ掛けてあげている。

 今日はセチアが御者をやって貰っている時に1時間ほど行った。おかげで超サラサラだ。

 手櫛も行って引っかかりが無くなった。

 セチアは大人の女性だ。雰囲気もだいぶ変わった。

 村に居るときは、自分の見た目に自信はあるが、手入れは無頓着だった。


 今は俺に好かれる為に化粧をしたりしているので良い香りがしてクラクラに成りそうだ。

 綺麗だけどおぼこと言う感じだったが、今は何処に連れて行っても恥ずかしくない。レディーだ。


 時折猛烈に淋しくなり、人肌が恋しくなる。そんな時に後ろから抱き付かせて貰っている。温かくて落ち着く。


 お昼になり彼女と弁当を食べて、馬の世話をする。

 こんな生活も悪くはない。

 彼女は時折俺の体を労ってくれる。お尻が痛くないかと。

 俺も肩を揉んであげたりする。言っとくけど御者をしている時にどさくさに紛れて胸を揉んだりしていないからね!今はまだ。


 14時過ぎだろうか?異変を感じた。前方から良くない雰囲気の奴らがやってきていた。俺は不覚にも荷台でうとうとしていて、接近に気が付かず、セチアに起こされて焦った。

 囲まれていると。

 慌てて鎧を着て戦闘の準備をする。

 向こうは馬車を3台連れている。前方からは商隊を装っては居るが、道の脇や後方からも大勢が居る。20人位だろうか。


 セチアが異常に気がつき、震えている。ツーンと匂いがしてきた。恐怖で失禁したようだ。無理も無い。どう見ても盗賊団だ。

 そいつ等の一人が、


「うほー、お、お綺麗な女じゃ無いか!よお兄ちゃん!女と金目の物置いて何処かへ行けや!」


 と下卑た声を出す。俺は手帳からスキルを色々確認して練習や試しをして戦う算段は出来ている。


 無詠唱でアイスアローをぶち込む。


「残念だったな。あーS級冒険者に手を出したんだから、お前等皆殺しな!嫌なら身ぐるみ置いて土下座しろ!」


 とアンタレスを引き抜き、馬車の前に出た。そしてアイスウォールで馬車を囲った。


 これでセチアは大丈夫だろう。

 盗賊達も一斉に俺に群がってきた。アイスアローを撃ち込みまくり、一瞬で3名にまで減らして、ハラパンを決め込み無力化した。そいつ等を奴隷にしてカードを回収し、死体を収納にしまった。

 そして捕まえた奴にアジトへ案内させた。

 馬車は俺達のより良い物で荷馬車では無く、人を乗せるようなのだ。


 クリーンを掛けてそちらに移り、捕まえた2人に乗ってきたのと確保した馬車を操作させ、もう一人に俺とセチアが乗ていた馬車の御者をさせた。


 街道を外れて10分位でアジトに着いた。

 アジトには15人位居るそうで、ボスも居るという。

 二人にセチアの護衛と馬車の護衛を厳命して馬車から20m以上離れる事も禁止した。

 馬車はアジトから30m位に置いた。


 捕まえ得た奴にボスを連れてくるように命じて入り口で待つ。


 出て来たところをアイスアローにて撃ち込むが感づかれて、ナイフを投げてきた。俺は避けられず、腕を掠った。俺は怒りに燃え、そいつにアースホールを出して万歳をさせ首を刎ねた。


 俺はアジトに入りアイスアローで次々に倒して、制圧を完了した。大したことは無かった。


 制圧後はご褒美タイムで有る。取りあえずカードを回収し、死体を収納に入れていく。


 お宝を収納に入れていると、まだ生きてる奴の気配がした。

 ふと見ると牢屋が有り、裸の女が3人と、男が一人居た。

 声を掛けると


「貴様何をやっている!早く助けないか!」と偉そうに言う。


「いきなり偉そうにあんたなんなんだ?」


「冒険者風情が、貴族で有る私にあんたと無礼を働くか!」


 うわー面倒くさい奴だな。


 こいつ盗賊に捕まっていた奴隷と言う事で良いよな。


 女は何者だろうか?


「君達を助ける。君達は何者だ?」


 と女性に聞く。


「はい、ここにおりますタオ様のメイドで御座います。」


 20台半ばと30台前半、30台半ばの3人だ。

 格好や状態から既に盗賊に犯され酷い扱いを受けたようだ。


『この小男助けるの嫌だなあ。』


 と思い、


「俺は旅のS級冒険者だ。あんたらを助けたら俺にメリットは何かあるのか?」


 とでかい態度で聞くと


「貴様何を偉そうに。早くここから出さないか。街についたら謝礼をくれてやるから早く出せ!」


「お前ふざけているのか?女は助けてやるが、お前を助ける義理は無い。人に物を頼むときの態度とは違うんじゃ無いか?それに命令じゃなく助けてくれとお願いするのが人と言う物だろう。」


 と言い、女が捕まっている牢屋を壊して出してやる。

 裸ではずかしがっているがどうにもならない。


 手招きして


「こっちに来て着れそうな服を探すんだ」


 とお宝を回収した後の荷物の中から適当な服を渡してやった。


 セチアを呼んでメイド達の面倒をお願いした。


 貴族の男は王都に居を構えるこの国の男爵だそうだ。

 どうすべきかセチア聞くと、王都に連れ帰れば結構な謝礼が出るという。

 取りあえず服を確保して男爵の所に行く


「服を持ってきたのでまずは着て欲しい。」


 と渡すとふんと息巻いて奪って着てぶつぶつと文句を言っている。盗賊の生き残りで虫の息のが居たのでセチアに


「人を殺したことは有るか?」


 と聞くと首を振る。短剣を渡して


「君がトドメを刺すんだ。こいつはもう長くない。いずれ殺す必要が有る。そんな時に殺しに経験が無く躊躇されると命に関わる。俺は君に殺しを強要している。まあろくな死に方しないんだろうな」


 と言うとやりますと言い、トドメを刺した。


 貴族もぎょっとしている。


 見えないところにセチアを連れていき、土下座をして謝った。しかしすぐに抱き起こされて泣きながら許してくれた。


 俺は貴族に、


「王都まで連れていってやる。お前を連れて行った報酬はどうするんだ?」


 と聞くと、偉そうに


「ふん、がめつい奴め。盗賊が私から奪った物をくれてやるから好きなの選ぶがよい」


「はあ、何言ってるんだ?盗賊のお宝が有るとしても盗賊を殺した俺に所有権があるんだぞ。それにまあ見て来いよ。既に金目の物は無かったぞ」


 言うと慌てて見に行って、


「お前が何処かに隠したのだろう。馬車の中か?」


「無いよ。それにさっきも言ったが、こいつ等が何か持っていたとしても俺のだ。残念ながらこいつ等が持っている小銭の入った財布くらいしか無いぞ。まあ馬車も好きに見ると良いさ、で、今のところ一文無しのあんたを王都まで連れて行く俺のメリットは?」


「何を言う!庶民が貴族で有る私に尽くすのは当たり前の話だ。有難く連れて行くがよい」


「はあ、何言ってるんだ?あんた頭大丈夫か?さっきから俺の話し聞いてるか?分からないならばはっきり言う。王都まで連れていってやるには対価が必要だ。どれだけ出す?嫌ならここに置いていく」


「貴様何を抜かすか!


「当たり前の事を言ってるんだが分からないのか?」



「貴様!庶民が何を抜かすか!」


「話にならないな。行こう。もうここに居る意味は無い。馬車を1台置いて行ってやる。ここから近くにある街まで3時間程度の筈だまあ頑張っていってくれ。メイドさん達はどうするんだ?」


「私達はタオ様のお付きのメイドで御座います。タオ様と一緒に王都へ向かいます」


 と言うので手を振り


「まあ頑張って向かうんだな。俺達は先を急ぐんでここまでだな。じゃあな」


 と馬車に向かって行くと慌てた男爵が


「悪かった。金は屋敷に着いてから払うから王都まで連れて行ってくれ。大金貨10枚だそう」


 と言うので俺は了解した。


 先に馬車に皆を向かわせて俺は死体とカードを回収した。


 そしてこれ見よがしに特大なファイヤーボールをアジトに撃ち込むみ燃やしたのだった。メイドと男爵が唖然として俺を見て怖がっていた。


 馬車の一台はこの貴族のだったのでそれに乗せ、もう一台は質素な乗用馬車で、俺とセチアで乗る。貴族の馬車は返してやった。メイドが御者をする。


 俺達のは盗賊に御者をさせて、もう一台は護衛をさせた二人に乗ってこさせた。


 3時間ほどで街に着き、先ずは服屋に行き、服を買ってやった。次に一番高い宿を聞き、一番良い部屋を貴族にと借りてやったら、


「貴様を誤解していたようだな。助かったよ」


 と謝辞を言うので


「さっきはこちらも礼儀が無かった。戦闘中で気が立っていたんだ」


 言うと満足して部屋に入っていった。メイドも同じ部屋だ。多分愛人だろう。


 金貨20枚が飛んでいった。まあ仕方が無いか。

 セチアは高級宿に目をきらきらさせてはしゃいでいた。

 大人の落ち着いた女性と思っていたのでギャップにやられてしまった。


 部屋に入ると抱きしめて殺しをさせたことを謝った。



「セチアにはとんでもない事をさせてしまった。謝ってゆりごああ」


 彼女の唇が俺の口を塞いだ。


 謝罪は要らないと。


 俺達は明日に備えて早々に休む事にした。

 寝る前に今日は如月さんに念話を送った


「如月さん、志郎です。実は記憶を無くしています。手帳に書いた日記で何とかしている状況で、明日にはワーグナー王国王都に入ります。それと何故か念話後の1分位の貴女達が夢で見える。魔力切れる」


 と気絶する直前に念話を切った。

 魔力がほぼ無くなりセチアに抱き付かれながら寝ていった。

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