第88話 王都到着

 四日目 day37


 如月さんが皆に叫んでいた。


「志朗さんから念話だよ。途切れてから1分の間は私達の事が見えてるんだって」


 驚いた事に見た目が変わったのだ。

金髪おっとりさんからきりっとした黒髪黒目ストレートの超絶美人だ。

 如月さんが言うには記憶を喪う前の俺の指示に従いボレロ王国王都に向かっている。


 皆元気だと。それと、シェリー嬢が何かにお尻を触られたが心当りがないか?触られ方が俺の撫で回し方だったと。

 思いっきり心当りが有る。


『制御出来なく、何かを触った感じだった。あれはシェリー嬢のお尻だったのか。検証しないとな。』


 俺が居ない以外は順調だと言う。

 皆が愛してると訴えていたら

 場面が変わった。


 如月さんが寝起きにトイレに入っていたようで、出てきた所だった。


 綺麗だなと思い如月さんに触れたい。手を握りたいと思うと見えない手が出た感覚があった。何か柔らかいのを触った。と言うか揉んだ。素晴らしい感触だが、何を触ったか分からない。パイ乙のような気がする。


『きゃー』


 如月さんが胸を抱き抱えて悲鳴を上げた


 どうやら如月さんの胸を揉んだらしい。


『志朗さんだよね?』


 と嬉しそうに問いかけてくる。

 更に手に触ろうとするが、頭を撫でたようだ。

 如月さんが頭に有る手?を触る。温かな温もりが感じられて涙が出た。


 ふと気がつくとセチアの頭を撫でていて、涙を拭かれていた。起き抜けに、


「真面目に聞くけどさ、俺寝てる時に君の胸を触ったり揉んだりしなかった?」


 と聞くと首を振って否定した。

 夢か現実か分からない先程からの事を話した。

 何か夢系統のスキルかギフトだろうか。


 如月さんに短時間念話を送った。

『不明な能力で君の胸を触ってしまい、頭を撫でたようだ。制御できない。触れられた所を触って』

 と伝えた。もう一度寝る。本来トレーニング時間だが能力テストが優先だ。


 やはり如月さんが見えた。頭と胸を触っていた。


 すぐに目覚めた。10分位だった。


 能力の確認をしていたと伝えて、走り込みを二人で行った。


 剣の訓練をしていると、貴族のタオが出て来て


「おはようランスロット卿。昨日は失礼した。しかし、酷い剣筋だな。よくあれで盗賊をやっつけたな!」


 と喧嘩売ってるのか?と睨んだら、


「すまんすまん。そんな怖い眼をしなさんな。親父の指南役を紹介しようか?国じゃ有名だぞ」


 興味深い。俺は話に食らいつき、


「ひょっとして教えを請うたり出来る物でしょうか?」


「興味有るかい?命の恩人の頼みで鍛えてくれと言えば大丈夫だ。」


「是非お願いしたいです。スキル任せで、ちゃんと習いたかったんですよ。宜しくお願いします。」


 俺は45度の綺麗なお辞儀を行った。結果としてタオの機嫌が著しく良くなっていた。


 間もなく朝食の時間が来るため部屋に戻り着替える事にした。


 食事は食堂か部屋に運んで貰うか選ぶ事が出来るので、タオの希望で全員分を部屋に運んで貰う。

 俺達の部屋は大した事はない。所詮二人だ。

 タオには一番良い部屋を手配している。


 四階建ての四階で、二部屋しかない。

 スイートというやつだ。

 リビングに寝室、応接室があり、リビングにある10人位座れるテーブルで食べた。


 きのうは興奮をしていたと後で話してくれたが、メイドに格好付けたくて威張り散らしてしまったと謝ってきた。


 根は悪いやつじゃなさそうだ。

 食事をしながら今日の予定を決めた。

 食事の後、奴隷を拾い王都まで急いで向かう。急げば15時には着くだろう。

 タオの客人として屋敷に招いてくれる事になった。意外にも犯されたメイド達に優しく接していて、惚れ直されて昨夜は凄かったと聞きたくない事を自慢して機嫌が良く、俺の事も大層気に入ったようだ。何故か女の好みや性癖も誇らしげに話しをしてきた。


 まあ、悪い気はしない。奴の性癖は知りたくなかったが、剣術を指南してもらえるのは有難い。


 奴隷は王都のギルドに突き出す。そして換金を行う事となった。


 屋敷に行く前に貴族御用達の服屋に行く事となった。

 父親に今のみすぼらしい姿を見せられないという。十分良い服を着ているのだが、駄目らしい。

 まあそんなに急ぐこともないし付き合ってやるかとそんな感じで移動を開始する。昼食は宿で弁当を注文しており、人数分と奴隷に奴隷食を準備して貰っていた。


 残念ながら新たにお得意様(盗賊)にも出くわさず、襲われている商隊発見のイベントも無く15時少し前にあっさりと王都に着いた。ゴブリンが数匹出ただけだった。


 王都の入り口は入都審査待ちでかなり並んでいたが、貴族王族用の入り口が有り、タオのお陰であっさり入る事が出来た。周りの目が痛かったが。

 一応犯罪者のチェックだけは有った。


 入り口は3つ有る。入都審査用と、通行許可証を持っている者の入り口、貴族王族用だ。


 王都だけ有り城壁も立派で有る。バルバロッサとほぼ同じレベルの建築だ。城門の兵士の練度はバルバロッサよりも高そうだ。


 先ずはタオを服屋に送った。何故か俺も店に引っ張られております。貴族が着るそういう服を買わされました。今着る為なので、ちゃちゃっと直して貰い会計をする。金額に驚いた。2人分で金貨150枚もしたのだ。これでも安い方という。


 服を整えてギルドに向かった。

 建物は木造の3階建で立派な作りで驚いた。


 タオがギルドマスターを呼びつけというより執務室に勝手に入っていった。


 驚いた事にギルドマスターを見るなり抱き付いていた。女性のギルドマスターだった。


 愛人か?と思ったら妹だった。抱き付いたのでは無く単なる挨拶のハグだ。

 メイドにこっそり聞いたら、父親の事は嘘だと。妹にみっともない姿を見られたくなかったらしい。20台後半だろうか。バリバリのキャリアウーマンと言うかボディコンチックな服で、その大きな双丘が今にもこぼれそうだった。美人さんである。色気が強く迫られたらころっと逝きそうだ。


 生き残った盗賊の奴隷(既に解放してロープで縛っている)について聞くと、犯罪奴隷として奴隷として売るという。

 また、死んだ奴のカードを渡した。今日は預けて明日お金を受け取ると言う事となり、俺のカードを見せたら大層驚いていた。

 俺がS級だからだ。


 セチアの冒険者の登録と初心者講習を受け付けで済ませたが、ギルドマスターが一人の受付嬢を強引に呼んで手続きをした。おどおどした14,15才位になる見習いか新人と思われる。


 ギルドを後にしてタオの屋敷に向かう。

 貴族街のその中でも一等地に有る一際大きな屋敷がタオの住まいだ。

 父親が大公という。しかし大公ってどんな階級か分からない志郎で有る。


 屋敷に着くと先ずは応接室に通されて、タオに待つように言われる。

 10分位するとタオが父親と思われるご老体を連れてきた。年は60になろうかという初老の細身の白髪が混じった爺様だが、年寄りというよりも強健な壮年と言う感じで活力に溢れている。

 応接室に入るやいなや


「これはこれはようこそ勇者殿。此度は愚息をお救い頂いたとかでお礼の申しようが有りませぬ。おっとこれは失礼した。私は当家の主アレイ・アールグレイと申す。以後お見知りおきを」


 と言うと右手を差し出してくるので握手に応じ、こちらも返す。


「S級冒険者をしておりますランスロットと申します。以後お見知りおきを。それよりどうして私が勇者だとお分かりに成ったのでしょうか?」


「ははははやはり勇者殿でしたか。なに、アイテムボックス持ちと、その年でS級となると勇者殿の可能性が高いと思いましてな」


「あいやーカマを掛けられていましたか。一本取られてしまったようですね。」


「気を付けられよ。私のような人畜無害な者ばかりだとは限りませんからな。」


「忠告痛み入ります。それより座りませんか?」


「おおそうじゃったこれは失礼したの。まあお掛け下され。何でも剣技を覚えたいとか?」


「はい実は私はまだこの世界に召喚されまして2ヶ月も経っておりませんでして、今まではギフトやスキルに依存して戦っておりまして、圧倒的に剣技が足りなく、タオ殿の申すには何でも高名な指南役をお抱えだそうで。ぜひ剣の使い方を覚えたく思っております。」


「そういう事であれば手配致しましょう。息子の命の恩人の頼みですからな。暫くの間当家の客人としてお迎え致しますので可能なだけご滞在下され。」


「これは有難い申し出ですね。宜しくお願いします。お言葉に甘えて1ヶ月位お願いしたいです。実はボレロ王国を目指しております。」


「良いのか?目的地を伝えてしまって」


「アレイ殿にお世話になるのです。隠しても仕方がありませんし、別段知られてもどうこうは無いと思います。実は記憶を無くしておりまして、日記に書いている内容ですと、ボレロ王国に妻達と私のハーレムがいる筈なんです。しかし今向かえば道中に死んでしまう恐れが大きく向かうに向かえず己を鍛える必要が有ります。バルバロッサ王国で戦闘があり、どうやら私だけ強制的にこちらに飛ばされたようなのです。」


「うむそうじゃなそれが宜しかろう。所でお連れの方は既に刻印を刻まれたのですかな?」


「彼女とはまだ知り合って間もなくというか先日助けたばかりでその村で対価として献上された奴隷で、今は解放奴隷なのですが、まだ済ましてはおりませんが、いずれ心から愛すればと考えております」


「お主ひょっとして勇者に刻印の事を知らぬのでは無いか?知っておれば連れの彼女の為に既に刻んでおると思うのだが?出来れば我が娘達にも刻んで欲しいくらいじゃて。出来たら今晩にでも彼女に刻んでやりなさい。もう20才を超えておるのであろう。彼女は既にお主を受け入れておるのであろう?そうであれば早いほうが良い。」


「えっ」


 と思わず呟いた。意味が分からなかった。日記にも念話が可能になるのと居場所が分かる、刻印持ち通しでも念話が可能と理解していた。セチアは真っ赤になり俯いていて、頷いていた。


「念話が可能になるのと居場所が分かる恩恵を勇者の魔力を取り入れることにより可能と理解しておりましたが」


「これは驚いた。知らぬのか。まあ何かの縁じゃ儂が教えてやろうかのう。ほほほほ」


 と俺の知らない刻印について講釈をして貰うのである。

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