第80話 旅の先へ

day32


 ナンシーとウリアに見つめられているとふと目覚めた。三人で朝の鍛練の為ランニングをすると言うと二人は驚いていた。

 5分程でウリアは早くもダウンしたのだがまだガリガリで体力が有る訳はない。しかも一回戦の後である!俺はしくじった。

 屋敷に戻り休ませる為ウリアを背負って向かっているが、胸の感触よりも体の軽さに涙が出そうだった。


 屋敷に戻りウリアを休ませて庭に出るとフレデリカ、トリシア、レフトアイ、エトワール、クレア等の戦士系が次々に出て来て皆で剣や槍の訓練を行った。


 クレアは中々面白い。

 一癖のあるデスサイズを悠々として振るうのだが、服を選べば美しき美の女神じゃ無くて、妖艶な死神に出来上がりという感じになる。


 朝から相変わらず皆に打たれている俺はしょんぼりしていた。

 そんな俺を慰めてくれたのはトリシアだけで、いきなキスをしてきたと思いきや、口移しで何かを入れてきて


「これでも吸って元気出せよ!」

 とチュウチュウしたら不思議と色々元気になった。果物だが食べるのじゃ無くて中身を吸い出して飲む感じの変わった果物だった。


 トリシアの俺に対する適切な扱いが恐い。ツボを押さえているのだ。元気を貰い礼を言い頭を撫でて皆で風呂に入り朝食に向かった。


 朝食の後ギルドに顔を出し、討伐した盗賊や小隊についてギルドに報告したが一応盗賊と成っていたので僅かながら報奨金が出た。

 ちょっと驚いたのは、自殺した商隊の主は王国騎士団に現役で所属していて俺達を裏切り襲った時点で盗賊となっているのだが、何かがおかしい。


 まともな馬車が2台増えてしまったのと残りの馬車は馬車屋で売却してお金はセレナに渡した。


 10時頃に隣国へ向けた旅を再開したが2時間程で街に着き、そこにあるお店で昼食を済ませて先に進むが、やはり時々こちらを遠くから見ている気配を感じる。

 隣町には馬車で1日掛かるという。俺達でも今の時間は厳しいので3時間くらい進んで本日の移動は中断して王都に戻った。


 家具店で完成した家具を引き取りに、先日ゲットしたロングソード15本とブロードソード5本に魔石強化を行っていたのをおっちゃんの店に売る事にした。強化値は3-6で各々15万~70万で売れ、合計600万程になりナンシーに預けた。

 おっちゃんが呆れた顔をしながら


「売って貰って有り難いがよくこれだけ持ってるな!」


 おっちゃんは大袈裟に手をひらひらさせて言う


「盗賊を討伐してさ、そいつ等が意外と溜め込んでるんだよ」


「出所は盗賊か。そう言えばお前さん二つ名が出来たそうだぞ」


「えっ!マジですか!」


「どうだ知りたいか」


「うーん知りたいような恐いような」


「ふふふ教えてやろう!聞いて驚け、すけこましだ」


「へ」


 と情けない声を出してその場に崩れ落ちたがおっちゃんはどや顔で腕も組んでご機嫌だ


「すまんすまん嘘だよ。驚くなよ!なんとハーレム王だよ」


「あんまり変わらんと思うが」


 とナンシーを見ると頷いてどや顔で


「ランス知らなかったんですか?かの伝説の勇者もかつてはハーレム王と崇められていたんですよ!」


 俺は何も考えられなくなり、呆然として屋敷に帰った。皆を置いてとぼとぼと歩いていたがそう言う道を辿ったか覚えていないが皆はそんな俺をそっとして後をずるずると金魚のフンみたいに着いてきていた。


 屋敷に帰るとトリシアが俺に体当たりをしてきてはじき飛ばされた!


「何辛気臭い顔をしてるんだい!ランスには似合わないぜじゃなくて似合わないわよ!」


 とデコピンをされてしまいそしてミザリィが追撃してくる


「ダメダメそんなんじゃ。そんな顔をしてるとお姉さんは悲しいぞ!」


 とほっぺたに両手を当ててうにうにとしてきて、キスと共に口の中に何かを入れてきた。トリシアもだが何故キスで口移しなのだろう?今度は甘いお菓子だった。


「それでも食べて元気出しなさいってば」


 と完全にお姉さんキャラで魅力的過ぎて頭がクラクラする。やっぱりエルフは素敵だなあ。

 しかも彼女はトリシアとはまた違った感じで遠慮無く接してくる貴重な存在だ。


「トリシアにミザリィありがとな。ちょっと武器屋でさ、二つ名を伝えられてショックだったんだ」


「何そんな事でうじうじしてるの!貴方は貴方でしょ!うじうじしてないでお風呂にでも入ってきなさい。準備してあるわ。ハーレム王ってあの伝説に名高い勇者と同じ二つ名って名誉な事じゃないの。誇りに思いなさいね!!何なら私が洗ってあげるよ!」


 と最後がはっきり聞こえなかったが、納得したようなしないような。そのままミザリィ達に風呂に連れて行かれ、気が付いたら風呂から出ていて、今まで拒否していた体を洗われていたのと着替えも誰かにして貰っていた。大人になってからパンツはかせて貰うのって恥ずかしいだろう。でもこの世界の貴族はメイドや奴隷に体を洗って貰ったり着替えや体を拭くのまで全てをやらせるのが当たり前と聞いて驚いた。


 余りのショックに茫然自失な状況だったがセレナにビンタされて正気に戻った。

 俺ははっとして場違いな事を言う


「あれ?セレナ、元の姿だぞ?」


「あれれ?またやっちゃった。てへ♪」


「てへ♪じゃないよ。可愛いから許すけど気をつけるんだよ」


「うん。ごめんなさい」


「素直で宜しい!じゃあ晩ご飯にしようね!」


 と二つ名のショックの為か、セレナの姿が戻っている事を軽く見過ぎていた。


 それはさておき、我が家の食事時事情は劇的に改善されている。料理人の二人がカテゴリーの違う料理人の為、メニューが豊富だったのと腕が良いのだ。流石は公爵の家の料理人と上級の貴族の料理人だったので若いとは言え腕は確かだ。キッチンが小さいと嘆いていたのには心が痛んだ。もっと大きな屋敷が良いのかな。


 食事の後一人で執務室に入り今まで放置していた俺とセレナの装備を見直す。


 先日のダンジョンのドロップの聖女の衣とアダマンタイトメイルだ。二つを収納から出し、薙刀を渡した後セレナからミスリルの剣を返されていたのでこれも強化を行い前衛のエトワールに渡すのと他にもミスリルのブロードソードが4本有るので1本は販売用、レフトアイとトリシア、ミザリィに渡すようにする。


 先ずは剣を一通りダンジョンのフロアボスの魔石で強化して

 行くと一番悪くて+8

 他は+10


「よしこれはレフトアイのだな魔力を込めると見えなくなる剣か」


 と呟くとレフトアイが


「わあ!素晴らしい剣ですね!頂けるんですか!!!嬉しいです!」


 と抱き付いてきて持っていった。


 そんな感じでトリシアには当たると麻痺、気絶、暴走、睡眠、5分間奴隷化、石化のどれかの状態異常を80%の確実で付与なのを渡すと


「変わった婚約の品だな!大事に使うよ」


 と言うのでデコピンの刑に処した。


 エトワールには攻撃が当たると30%の確立で隷属化するというとんでもないのを渡した。恭しく


「我が主の分身しかと頂きました。主の剣となり敵を討ち滅ぼしましょう」


 と剣を捧げてくるので受け取り、頷いて返した。うっとりと喜んでいるので普段の態度と違い驚いた。トリップするタイプには見えなかったからだ。


 ミザリィには剣の見える位置が剣の幅二つ分違うというけっこうエグい剣だ。受け流そうとすると受け止めたはずなのにすり抜けてくる感じになる。なまじ見えてる分見えないより防ぎにくいのだ。


「あら素敵な剣ね。お姉さんにくれるんだ!うん、これは素敵な結婚の贈り物ね。首飾りも嬉しいけど、ランスが強化してくれたこっちの方が断然嬉しいの!私が出来る御礼は子供を産んであげる位だけど、大事に使うね!ありがと!愛してるよ」


 とナンシーがするのと首を傾げる向きが逆な腕を後ろに組んで胸を強調するあのポーズを決めてくるので、心が見事に撃ち抜かれた。ナンシーと一緒にやったら気絶する自信がある。

 子供の頃からファンタジー物の小説を読み漁り、エルフに憧れている所謂エルフ萌を発症していて既にミザリィに心を奪われていた。


 次に聖女の衣にハイオークの魔石を使うと+12となる。

 能力付加は元々アンデットが触れる事が出来ない内容で触れると浄化するだ。魔石で害意ある魔法を術者に反射100%が付与できた。 

 あくまで害意ある魔法の反射なのでフレンドリーファイヤーは防げれ無い。防御力が120%アップして、傷が付いても自動で修復される。


「うん、セレナに絶対似合うな!文字通りこれ着たら聖女だよな。渡したら喜ぶかな?」


 と呟いたのだが、セレナが


「わあ素敵な衣装ですね!是非着たいです!」


 と喜んでいるのでセレナに渡すとその場で着替えた。

 最近分かってきたのか、俺が冒険者として真面目にしている分にはエロ目線が無いので裸になっても平気だ。

 恥ずかしがられると意識してしまって困るので助かるだが、勿論筋肉の付き方を見る以外は目をそらしはする。


 白いローブで、青いステッチが上品に入っており、清楚な衣だ。胸元も模様で強調されており、胸が大きく見える。しかし、名前の通りセレナは聖女そのものだ。胸の大きさは制限がなさそうで、術者のサイズに合わせて服のサイズが自動調整された。なのでオーダー服の如くぴったりとなり体のラインがはっきり出る衣だが、普通のフルプレートメイルより防御力が高い。


「うん、うん、似合ってる似合ってる!セレナが聖女に見える。やっぱりセレナは可愛いよね!」


 と褒めるとくねくねしながら赤くなり照れているが一回転して魅せてスカートもちょこんと持ち上げて貴族のお辞儀をするサービスもしてくれた。不思議な子だがトリップしてるから暫くは放置で良いだろう。


 次いでアダマンタイトメイルだ。

 不思議な金属で柔らかみがある。

 基本的に上下の鎧で、皮鎧をアダマンタイトにした感じで、腕は露出しているが、手甲セットされていて動きやすい。

 防御力はミスリルのフルプレートメイルと良い勝負だが動きやすさと軽さ、音がしない点が優れている。


「見た目はちょっとワイルドだよな」


「ランスロット様によく似合うと思いますよ。」


「そ、そ、そうかな?ワイルドすぎやしないか?北斗〇拳に出てきそうな格好な気がするんだよな。まあ似合うって言ってくれるんだから良いか」


 と呟いてオーガジェネラルの魔石を使う

 +13 過去最高だ

 魔力変換ドレインが出た。攻撃魔法を100%無効化して、魔法を魔力に返還して魔石か装着者へ供給できる魔力に変換して供給する。

 攻撃魔法なので他の魔法は関係ないのか。ふむふむ。


 俺がそうやって居ると、メイドと料理人以外が執務室に入ってきていたのに今更気がつき、さっきからの強化の作業を見られていて恥ずかしかった。


 さっきからおかしいと思ったんだよな。いつの間にか20人位に見つめられていたが、一人しか居ないはずなのに会話をしている時点でおかしいと思わなかったのは志朗の抜けている所であったりする。


 強化が終わると皆に拘束されて、アダマンタイトメイルを装着させられた。

 野蛮人にしか思えなかったが、伝説の勇者とやらも似たような格好と記録が有り、勇者の再来とちやほやされて俺も気分が良くなっていたが信奉者の目がやばかったので見なかった事にしようと心に決めた。


 既に21時頃に成っていたので解散して1時間位シェリーと勉強時間になった。今はセレナも一緒に行っている。

 先ずは自分の名前からスタートして何とかひらがな相当は読める所まで来ていた。


 22時になり解散して休む事となった。


 今日の添い寝当番はアヤメとエトワールだった。

 エトワールには改めて先程の剣のお礼を言われた。


 武器は余るんだが防具が中々ドロップしなくて、後方支援要員には市販品に強化をしたのしか渡たせれていない。

 今日は皆にちやほやされて機嫌良く二人とベッドを共にし今日の寝つきは良かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る