第40話 シェリー

 day12


 朝起きると微妙に知っている天井があった。

 自室の寝室である。

 昨晩は色々ゆっくり考えを纏めていた。


 シェリーと出会ってから常にシェリーかナンシーが一緒の布団に入っていただけにこの世界に来てから3回目の一人での夜だった。


 朝食を皆で取る。新人4人が準備してくれていた。贔屓目無しに美味しかった。


 食後4人には冒険者向けの服に着替えてもらい、予備武器の短剣を護身用に装備させた。フレデリカにだけは俺が最初に手にしたブロードソードを装備させる。元騎士である為唯一正式に訓練を受けているし、自分の脚を切る心配が無いからである。


 彼女にその剣の経緯を説明した。4人には成長と供に良い武器に替えていく。今は普通の武器。初めから良い武器を与えると武器の性能に依存する為だ。


 戦闘を苦手としていてもある程度までは強くなって貰う。その為暫くは家の事と冒険者と色々やって貰う事を説明した。


 俺は先日貰った服に着替えて4人を連れてギルドに向かう。

 ギルドに着くと皆の恨みがましい視線が痛かった。早速ナンシーと合流して専属部屋に入り4人をお願いした。そして今日はシェリーと二人で別行動と。


 ナンシーは頷いた。俺の格好を見て理解したようだ。シェリーとデートする事を察したのだろう。そしていよいよ自分が明日なんだと。


 4人には各々に用意しておいた財布とお金を持たせた。

 4人の前でナンシーにキスをして今日は4人を任せるよとお願いしてオレはシェリーとのデートに向かう。


 時間は待ち合わせの5分前。日本のリーマンである。5分前行動は身にしみている。


 中央広場の噴水前で待ち合わせだ。

 時間きっかりにシェリーが現れた。

 今日のシェリーは先日見せてくれた服だった。とても綺麗です。


 清楚な服が相まってクラクラする位です。


「おはようシェリー。似合い過ぎて眩しいよ」


「おはよう。似合っているわね。私の王子様!」


 とお互い恥ずかしい事を言うのである。

 うーんまさに天使。


 早速手を繋いで歩き出す。何処に向かうでもなく、気がつくといつの間にか服屋に来ていた。先日のドレスと高級ランジェリーや寝間着をシェリーの分を受け取る。ナンシーのは明日用意ができると。


 次に喫茶店でお茶をする。紅茶を飲んで少し話していた。俺の向こうでの事を聞きたかったらしく、うっとりと聞いていた。

 1時間位そうしていて店を出て予約していたレストランに行きランチを愉しむ。


 シェリーの食べ方が綺麗だった。俺は情けないが食器がガチャガチャとしていたよ。


 店を出て腕を組んで歩く。美人と腕を組むなんて優越感半端ない。


「何処か行きたい所は有るかい?」


 と聞くとこの街を知らないし6才からまともに街を見たことが無いのでよく分からないと言う。


 俺も分からないが、伊達に先日単独行動はしていない。


 街を適当にぶらつき、甘味の店でおやつタイムとついでに買い出しを行った。時折屋台で買い食いと買い貯めを行った。他愛も無いことが良かった。俺も彼女もこの国の人間じゃ無い。何もかも新鮮だ。


 やがて夕方になっていた。


 見晴らしの良い丘の上に来ていた。一応門の外だが俺には無限収納がある。武器は短剣を腰に差して帯剣を周りにアピールして無用なトラブルを避けた。


 街を見下ろす見晴台がある。そこから見える夕方に沈む街は幻想的だった。シェリーは


「綺麗」


 と涙を流していた。俺は夕焼けに染まるシェリーの横顔にうっとりとしていた。


 そんな彼女の涙を手で拭い、そっと唇を重ねる。


「シェリーいつも有難う。俺が今こうして生きているのは君が必死に助けてくれたからだ。愛している。俺の伴侶となってくれ」


 と言い彼女を見る。顔を手で覆い大粒の涙を流す。


「そんなの勿体ない。私なんて性奴隷で、欲望の捌け口で良いのに」


 と言うので軽く頬を掌で叩いた。


「そんな悲しい事を言うな。君が居るから俺が居る。俺の半身なんだよ。俺の女神様なんだよ。オレは君が欲しい。君じゃ無きゃダメなんだ。俺はシェリーに相応しくないかもだが、君は類い希なる女性だ。愛している。」


 と言うと泣き出して抱き付いてきて必死に頷いていた。何度も何度も嗚咽と供に。


 熱い熱いキスを10分位交わす。ちょっと胸もタッチする残念なゲスだがそれでもシェリーに対する想いは本物だ。


 KYって知っているか?と言いたくなるようなタイミングで俺のお腹が鳴ってしまった。危険予知の方じゃ無いからね。


 夜になる前に街に戻り、予約していたいつもの宿で夕食を愉しむ。知っている店で安心して食事をしたかった。そんな俺達を見知った4人組のパンティーが、いやパーティーが隣の席で羨ましそうに見ていた。時折聞こえた会話だと先日のオーガが出た森の定期調査の依頼に行くようだった。ちょっと嫌な予感がしたが、食事を終えてデートも終わり我が家に帰った。


 やはり家に帰ると何故か分かったが、4人がメイド服で出迎えてきた。


 その後シェリーと二人でシェリーの部屋に入る。チョットドキドキした。女の子の一人部屋なんて。と思ったらまだ荷物の整理が終わっていなかった。


 シェリーに服屋で買った注文服と寝間着をプレゼントした。


「今日は楽しかったです。人生で一番良かった日です。」


 と深々とお辞儀をされた。


 お互い別に風呂に入った。今日はシータとエリシスのお風呂当番だった。


 風呂を出てから俺もナイトガウンを羽織っていよいよシェリーに印を刻む決断をした。


 少し落ち着いてからシェリーの部屋に行く。

 ノックをすると返事が有り俺を迎え入れてくれた。

 今から勇者による刻印の儀式を行うと告げた。シェリーは


「ランスに刻印の儀をそれも勇者の刻印を刻んで貰うなんて夢のようだわ。」


 と初めて様付けじゃ無くなった。俺は嬉しくて有頂天になった。

 彼女は肋の浮きも改善し、すっかり健康になった。そし儀式を執り行った。彼女の全てが愛おしかった。


「有難うランス。ランスからの私への誕生日のプレゼント確かに受け取りました。刻印を刻んでくれて有難う。こんな素晴らしい誕生日プレゼントは無いよ!」


 と誕生日と言う。17になったのだ。


「おめでとうシェリー。俺も嬉しいよ。この世界に召喚された事を最初は怨んだが、今は感謝できる。君のおかげだよ!」


 と軽くキスをして力強く抱きしめて彼女の温もりと行いに感謝しつつ二人の意識はやがて闇に落ちていき穏やかな寝息を立てるのであった。

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