第41話  ナンシー

 日が昇ると共にふと目覚めるとシェリーに頭を撫でられていて、胸に抱き寄せられている。

 ドクンドクンと規則正しく奏でる心臓の鼓動が心地よい。


「おはようございます。ランスロット様。起こしてしまいましたか?」


「おはよう。大丈夫だよ。」



「愛してるよ。昨日は楽しかったよ。人生最良の日だよ。結婚しよう」


 とキスをしたが、シェリーは泣いており胸に抱きしめた。


「不束者ですが宜しくお願いします。愛してます。ランスの全てが素敵です。」


 と返してくれた。俺は有頂天だった。

 暫くまったりしていると、エリシスが朝食の準備ができた旨を知らせてきた。

 食堂に行き六人揃うと4人が


「シェリー様おめでとう」


 と拍手で祝っていた。シェリーは


「有難う」


 嬉し泣きして4人に抱き寄せられていた。


 朝食は美味しかった。大したこと無いのだが雰囲気が良いので美味しく頂けて4人に感謝をした。

そして今日は初心者講習があるので鎧を着て行くように指示をした。

 シェリーはまだ体力が回復しておらず辛そうなので今日は部屋で休むように言い、お姫様抱っこし部屋に送っていった。


「きのうは楽しかったです。是非奥さんにしてください。」

「プロポーズ受けてくれて有難う。今日は無理せずに大人しくしてるんだよ。」


 と頭を撫でると


「うん分かってる。ランスのお嫁さんになれるから幸せなの。今日はナンシーとのデートでしょ?行ってらっしゃい。」


 と言うので


「分かっている。今日は一緒にいてあげられなくてごめんね。行ってくるよ」



 と食堂を後にして着替えてナンシーとのデートの為出かけていったのだ。


 10分位前に待ち合わせ場所である広場前の女神像行くと既にナンシーが居た。


「ナンシーおはよう。早いんだね」


 と言うと満面の笑顔で


「うん、少しでも早くランスに逢いたかったの」


 と言うと周りの人を気にせずキスをしてきた。近くにいた冒険者の泣き顔が見える。


「その服似合っていて綺麗だよ」


 褒めるとくるっと一回転して今日の服を見せてくれて


「それ着てくれたんだ。格好いいよ!」


 と後ろ手にして胸を強調して首を傾げてのいつもの笑みにクラクラしてついつい人前だが抱きしめちゃいました。周りから


「ヒューヒューお熱いねえ」


 周りから茶化され我に返り慌てて走って場所を変えた。


「フフフ慌てちゃったね!」


 ナンシーが小悪魔見たいに微笑む。眩しいです!

 やはりナンシーは別格の破壊力です。


 今日はナンシーがリードしてくれる。


「街をよく知らないでしょ?折角だから私が案内するね!」


 早速手を繋ぎながらあちこちをまわる。さすがギルドの看板娘である。色々知っている。


 劇場や闘技場、何故か娼館まで案内する。


「ランスには用が無いだろうけど、冒険者って結構依頼の後こういう所に行くんだって。ランスは行かないよね?」


「勿論誘われても行かないよ。まあ弟子とか出来たらお金投げてさ、たまには行ってこいとかやると格好いいかな?」


「フフフ。ランスが行かなければそれで良いのよ。奴隷やハーレムを増やしても娼婦はダメだからね!」


 と言われて頷いた。


 騎士団の詰め所の前を通ると丁度トマスが見えたので声を掛けるた


「トマスさん!俺です」


 そうするとトマスは驚いて俺を道の脇に引っ張った。


「よく生き残ったな。それだけじゃ無くナンシー嬢と一緒なんて兄ちゃん何者なんだよ!」


 と呆れて笑っていた。


「色々あって何とかしぶとく生き残ったよ。あの時の短剣のお陰だよ。感謝しているよ。」


「そう言えば最近ナンシー嬢を落としたA級冒険者がいると聞いた事が在るが兄ちゃんだったのか」



「そうですよ。ナンシーは俺の正妻になります。それより俺って城ではどういう事になっていますか?」


「第二王女への暴行の罪で放逐され、魔物に殺された事になっているよ。」


 と言う。


「そうか、俺の事は内緒にしてくれると有難い。」


「勿論だ。城では余り良い話しを聞かない。気をつけろよ。」


 と言うので俺は強化済みの魔鉱石の短剣と大金貨一枚をトマスに投げた。


「こんな物で悪いけど、お礼だ。」


 と言うと受け取ったトマスが絶句している。


「いいのか?俺がしたのは金貨数枚程度の事だぞ」


「トマスが出来る精一杯だっただろう?お陰で俺は命を繋げれたんだ。こんな物じゃ足らない位だよ。」


「そうか、それじゃあ甘える事にするよ。よい行いをするとちゃんと自分に返ってくるんだな。」


「そうだな。恋人に指輪の一つでも買ってあげなよ。これでもA級冒険者だから何かあったらギルドに来てくれ。必ず恩を返すよ。」


「そうだな、その時は頼むよ」


 と握手をして別れた。ただトマスの表情は沈んでいたが今はその理由を気にしなかった。


 ナンシー

「あの方がランスの恩人なのですね。」

「そうだな。危ない橋を渡ってくれたんだ。この国も捨てたもんじゃないな。」

「ふふふそうね」



 とソロソロお昼を食べようとなったが俺が一人では行けない店に引っ張られていった。

 女子ばかりだ。又もや男子単独お断りでした。ケーキ&紅茶でのランチを堪能してお土産も買っていきましたよ。


 屋台で買い食いしたりしていると、ふと通り過ぎた店が気になった。ナンシーに声を掛ける



「この店が気になる。ちょっと寄っていこうよ」


 と言い腕を組みながら店に入っていった。

 どうやらアクセサリーを売っている店だった。

 ふと青い宝石の付いたネックレスが目を引いた。ナンシーに似合うなと思試着してみた。凄く似合う。それを買い先にナンシーは外で待っていて貰う。プレゼント用に包んで貰い、シェリーに似合いそうな赤いネックレスも購入して包んでもらった。

 各々金貨30枚とそこそこ値段がしたが、ナンシーとシェリーの為だから構わない。


 店を出ると早速ナンシーにプレゼントした。

 ナンシーは開けるとぱっと明るくなりネックレスを俺に渡して後ろを向いて髪を持ち上げた。俺は黙ってナンシーの首にネックレスを付ける。ナンシーのうなじはセクシーでそそられる。


「似合うかしら?」



「素敵だよ俺の女神様!とても似合ってるよ」



「ランス有難う。嬉しいわ。大事にするね」


 と満面の笑みだ。


 もう少しで夕方である。俺はナンシーの手を引き城壁に向かった。平時は城壁の上に上がれるので手を取り登った。そうすると等間隔でカップルが居た。デートスポットである。ここからの夕方の眺めが絶景で人気だ。

 俺達も場所を決めイチャイチャする。キスをして抱きしめ合う。胸にタッチすると


「エッチ」


 と言われる。そうしていると俺は表情を変え


「ナンシー、改めて言うけど、俺の妻に成ってくれ。君が欲しい。君の全てを俺の物にしたい。俺は君に相応しい人間になるように努力する。だから俺の横にずっといいて欲しい。」


 と言うとナンシーは涙を流しながら


「こんな私で良かったら是非貰って下さい。私の心は既にランスの物。」


 と言いキスをして抱きしめた。

 いつもの宿の食堂を予約していた。馴染みの店だが落ち着くので食事をした。あまりにもナンシーが艶っぽく眩しくて何を食べたか覚えていない。


 家に帰ると察したのか敢えて出迎えは無かった。各々風呂に入る。ナンシーは客間で休んでいた。

 客間をノックする。そっとドアが開きナンシーが迎えてくれた。


「とてもいい表せない位綺麗だよ。今日は楽しかった。こんなに楽しく過ごせれたなんて生きてて良かったよ!」


「待っていたわランス。ふふふ。私も今までで一番充実した1日だったわ。婚姻の品も頂けたし。」


「奥様。これから刻印の儀式を執り行いたい。この世の誰よりも愛しい奥様。」


 と言うと妖艶な顔になっていた。


「私もよ。ランス。刻印を刻んでね」


 と刻印の儀式を執り行った。あり得ないくらい充実した1日だった。

 俺はナンシーの胸に抱かれその心臓の鼓動が奏でる心地よいメロディを子守唄に眠りに落ちた。


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