第35話 最後の宿

 ギルドで奴隷商への支払い手続きを完了したので俺は服屋に向かう事にした。ナンシーは宿に向かう。シェリーと落ち合う場所と時間を決めていなかったので、入れ違いが嫌なのでシェリーと合流したら指輪での念話を行う事と成った。


 服屋に行くと丁度シェリーが会計をしていた。

 ナンシーに合流した事を伝えた後、服屋でナンシーのギルド服を貰った。それと店主のお姉さんにデートのお薦めの場所をこっそり教えて貰った。

 引っ越しが落ち着いたらシェリーをデートに誘い、次はナンシーを誘いたい。出来れば二人には違う事をしたいと思っている。


 ナンシーに服屋を引き上げると伝えたら、ギルドに戻って仕事をするとの事だ。

 俺とシェリーは家具屋に行き、最低限必要な家具を買う事にした。

 シェリーが俺の寝室用に100万Gの高級なキングサイズのベッドとその布団を即決した。躊躇いがなかった。

 因みに布団も扱っていた。


 シェリーの部屋用や客間と新たな奴隷さん用にと取り敢えず在庫のある5台のWベッドを購入。

 キッチンに高級な食器棚を選ぶ。


 テーブルと椅子を買う事になったが、貴族の食堂で使われる長いテーブルは複数のテーブルを並べているそうなので取り敢えず10人座るのを考慮して六人用のを2つとそれに会わせた数の椅子を買う。

 部屋の机とそれ用の椅子を5セット購入。寝室用の高級な机と椅子も。

 俺の書斎用に大きめの高級な机と椅子も発注。


 家の主たる俺の物は安物はダメだと頑なに主張していたので、お金にまだ余裕があるので良い物を買う事となった。

 一旦これくらいにして会計を行い、在庫がある分に関しては俺が収納した。アイテムボックス持ちと伝えるとほっとしていた。

 発注した分も含め金貨450枚を払う。配送が無い分は安くしてもらっている。

 流石に全ての部屋の分を買うのは物理的にも金銭的にも無理だった。なので追々決めて買い足す事になった。


 宿に帰る途中にふと甘味の店が目に入ってきてた。ついついシェリーと入っていった。幸せそうにドーナツみたいなのを食べている。頬に食べかすが付いていたので取ってやり、俺の口に運んだ。シェリーは少し照れ笑いをしていた。そんな彼女の笑顔を守りたい。

 こんな何の変哲の無い日常が俺には眩しかった。

 程なく店を出て宿に戻り、宿主に明日屋敷に移る旨を伝えた。


 今晩は宿泊者として最後の食事となる。

 部屋で休んでいると、もうじき宿に着くとナンシーから念話が来た。シェリーは俺の背中をマッサージしてくれていた。ずっと緊張しっぱなしだった為かかなり凝っていた。極楽極楽。


 席に着くと程なくナンシーが現れ、最後の?三人での食事を楽しんだ。


 やはりナンシーも泊まりになり、その日は他愛もないギルド職員の恋愛話で盛り上がった。


 そして俺は風呂に入った。

 今日の風呂は趣向が違った。

 いきなり二人が入ってきて俺を洗い出した。

 そこまでは良い。どさくさに紛れてバクンチョされたがご愛敬。そして先ずはシェリーが体を洗ってとおねだりをしてきた。ねっとりと洗いましたよ。特に胸を。

 次はナンシーもすがってきた。やはり念入りに洗う。至福の時だ。

 そして二人してご奉仕してきた。意識が飛びそうだ。極楽極楽と思っていたら俺は意識を取り戻す。湯船に浸かっていた。何の事はない寝ていたようだ。

 そう、ご奉仕されたのは夢だった。願望かな。妄想だった。


 普通に風呂を上がるも俺の妄想以外はイベントは何もない。寂しいもんだ。


 二人も代わる代わる風呂に入る。 俺は二人に代わる代わる真面目なマッサージをして最後の宿を堪能した。


 既に元の世界に帰るつもりは全く無くなっていた。

 二人と一緒に布団に入る。腕にしがみついてくる。

 俺はうとうとしながらふと思う。

 名前が出てこない。

 そう自分のがだ。

 慌てて泣きながら起きる。呟いた。


「俺の名前が分からなくなった。くそー」


 と。シェリーとナンシーは俺を布団に戻し後ろから抱きついて


「シェリーがついています」


「ナンシーは何があろうとランスの味方だからね」


 と優しく頭を撫でて抱き寄せてくれる。どちらのだろうか胸元で泣いたのだがいつの間にか落ち着いて眠りに落ちた。直前に二人に


「有難う」


 と一言言い、意識を手放した。

 意識を手放す前に明日は大変な日になるんだろうなと思った。


 心臓の鼓動が心地良くあっさり落ち着き、やがて眠りについた。

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