第24話 新人研修と専属受付嬢

 朝目覚めると何故か裸のシェリーがそこに居た。あれ?寝るとき服着てたよな?


「言っとくけどまだ一線は越えてないからね。今はまだね」


 って誰に言ってるんだろう。思わず激しくむしゃぶりつくし体を貪っていく。欲望の赴くままに。


 day7


 ふと、目が覚めた。さっきのは夢だった。願望かな。

 シェリーは、ちゃんと寝巻きを着ていて、俺の頭を抱えていた。落ち着くんだそうだ。暫くシェリーの鼓動を聞き涙を流していた!シェリーを起こし、着替えて朝食を取り、少し早いがギルドに向かった。

 ギルドに着くと先ずはナンシーに挨拶したかったので受付に行く。しかしカウンターにはナンシーの姿が無かった。ちょっと不満であった。


 残念と思いつつ研修会場の会議室に入る。既に何人かの冒険者が居たが女性の方が多いな。

 そんな中4人組のパーティーが目についた。先日のテーブルが吹き飛ばされた方達だ。

 線の細い女顔の戦士風の男と、女性三人組が居た



「先日はどうも」


 と挨拶したら、


「大丈夫だったんですか?」


 と心配されてしまった。

 受付嬢を庇い、その為殴られた事を周りから聞かされていたそうで


「紳士の鏡ですね。こんな彼氏が欲しい」


 そう言われちゃいました。全員シェリーと同じか少し下だった。高校1年生位かな。手を出さないよ!俺ロリコンの気は無いから。


 三人の美女を連れて羨ましいな。というかけしからん。そう思いつつ、『既にこの子らは俺に惚れ始めたぞ!うへへへ』と下卑た思いが少し浮かんでしまった。

 取り敢えず席に座った。参加者は俺達を含め全部で15,6人かな。

 人数を数えてみると男性7名女性9人だった。


 開始を待っていると俺の左隣に誰かが座ってきた。というより気配からナンシーだ。何故か分かった。

 座るとすぐに


「おはようございます、ランスロット様、シェリー」


「おはようナンシー」


 三者で挨拶をした。わざわざ挨拶にきてくれたんだなと、先程受付にナンシーが居なかった事が不安だったので、会えて嬉しかった。『ギルドでは様付けなんだな』そう思ったが実はそうじゃない事をこの後に知る。


 隣に座っているナンシーから漂う、心地良い匂いにドキドキした。昨日あんなに格好付けて、気障ったらしく交際を申し込んだのに既に心を奪われたっぽい。今日も両手に花である。


 あれ?何でさも当たり前のように、ナンシーはそのまま座ってるのだろうか?よくよく見ると俺達同様に、冒険者の格好をしており、服の上に所謂ビキニアーマを装着していた。

 等と思っていると、どうやら開始時間が来たので講師の男性職員が来た。


 ギルド職員の殆どが女性である。1階の受付業務に関わるスタッフに至っては全て女性だ。

 数少ない男性がギルドマスターと戦闘講師、倉庫の解体スタッフ位だった。女性の比率が高いのは、非戦闘職に女性が参加しないと街の運営に支障が出るからだ。

 また、受付嬢の採用基準は容姿端麗、算術、読み書きが出来るとの条件の為、美人だけではなれない、女性にとっては華形職業の一つ。そして、人気が有る為に倍率も高い。

 また冒険者に女性が多いのも、男女比率の影響と、より強い男性を求めてである。パーティーを組んでいたらそのまま男性+妻達というパーティ構成がわりと多いのだそうだ。


 職員が挨拶をして一同を見渡して


「おいナンシー、受付嬢のお前さんが何してるんだ?」


 俺も思っている事を尋ねた。


「ギルドマスターに今まで参加してないんだったら今日の講習に参加してこいと言われたんです」


 そう返答して了承を得ていた。


 周りも人気受付嬢のナンシーに驚いていたが、ギルドマスターに言われたんじゃしょうが無いよね、と皆さん納得し、講習が始まった。午前は座学、午後からは訓練場での戦闘訓練、魔石の抜き取り、魔物の解体実技、講師との模擬戦となる。


 配られたテキストに沿って座学は行われ、冒険者の心得と、よくある採取依頼のノウハウ、魔物を殺した後に魔石を抜き取る事の必要性と義務、等と話していった。俺はテキストへ必死に日本語で書き記していった。


 特に何も無く午前の講義が終わり、お昼になった。

 三人で近くのお店に食べに出掛けた。

 ナンシーが俺のパーティーに加えて欲しいと言うので、加わって貰った。


 早目に昼食から戻って来て、ナンシーはカウンターの中に入り、正式にブラックオニキスのメンバーとして登録手続きを行っていた。

 ギルドの職員は一応D級冒険者として登録されている。休日に冒険者として活動する者もおり、兼業は禁止されていないと教えてくれた。


 ナンシーから休みの日に、一緒に冒険者として連れていって欲しいと訴えかけられた。

 冒険に行く前にパワーレベリングをする必要が有ると思い、夜に大事な話をする旨をナンシーに伝えたら、にっこり微笑んでくれた。この笑顔に乾杯。


 午後からの講習は魔石の取り出しからだ。意外だったのはナンシーは経験者だった。ギルド職員は時折魔物の解体に付き合わされるので、解体全般も出来るとの事。


 俺もシェリーも魔石は取り出しているが解体は経験が無く、解体スタッフとナンシーに教えられ、研修で用意されたオークを解体した。オークは食用としても需要が多くそう言えば豚肉とほぼ同じ味だった。

 食卓の肉の主力となるのがオークで有る。


 その後戦闘訓練で、剣の基本的な使い方を教えられた。後衛向きの短剣の使い方も教えられた。

 後衛は普通弓やスタッフを持って魔法を用いるが、サブウエポンとして短剣を持つのは常識とされている。ナンシーの戦闘スタイルは、エルフの血が入っているからだろうか弓が得意で、弓とショートソード、予備で短剣を使うと言う。

 ふと思い、ナンシーに種族の事を聞くと、ハーフエルフなのは周りには隠しているそうだ。

 特にこの国は人間至上主義で、ハーフは冷遇される事が多いので黙っていて欲しいと、昨日は慌てていてつい口走ったそうだ。外観からは殆ど分からない。少し耳が尖っているがエルフの外観面の影響が少ないと言っていた。何せ耳は髪の毛で隠せば分からない。


 戦闘訓練の締めくくりは、講師との模擬戦闘だった。木剣を使い順番に行うが、皆数合も持たず致命傷となる箇所に一撃を貰っていた。俺達で最後で、先ずはナンシーから。

 他の冒険者同様で4合目で首筋に剣を添えられ轟沈。

 シェリーはステータスに物を言わせ善戦して、20合位は何とか頑張った。力はシェリーの方が強かったが技術的な地力の違いで、遂に手の甲を打ち付けられて武器を飛ばされて終わった。

 飛びきりの美少女が、B級冒険者でも有る講師に善戦し、一時は押していたので凄かったねと歓声が上がった。


 最後が俺だった。ステータスに委せれば瞬殺出来るが、折角の模擬戦闘の意味が無いので、力を押さえるようにした。お陰で10分位互角に打ち合っていた。剣技の上昇には実力者との模擬戦の効果は絶大だと痛感した。

 俺は負けず嫌いなので最後は倒すと決めていたが、俺も経験が浅いからか隙を突かれて武器をはじき飛ばされてしまった。講師がニヤリと笑い


「そろそろ終わりだな」


 そう言い放ち、突っ込んできた。

 俺はその勢いを利用して、巴投げを決め込み、間髪入れず縦四方固めで講師をホールドした。脱出できなくなった講師がギブアップし、模擬戦が終わった。

 皆の目、特に俺を見る女性の目が怖かった。まるで獲物を狙う狩人だ。そんな視線の中に、先の四人組みパーティーの男の目線もあり、寒気が走った。俺そっちの気無いから。

 所が俺が思っていたのは、講師による模擬戦の総評の話で間違いと分かった。

 先ずはこのパーティーだが、女性の四人組だった。

 彼ではなく彼女だった。女の子だけだと舐められるので、4人の中で一番背の高い彼女が男装して誤魔化そうとしていたのだった。僕っ子じゃなくて、男装の麗人だったんだとほっとした。


 講師は予め参加者の事は知っていたので、前衛の女性を集め、前衛の女性の戦い方をアドバイスしていて分かった。


 講師から俺が手加減していただろうと暴露し、既にA級冒険者以上の実力がある。シェリーの強さももう少しでB級と言い、皆驚いていた。

 休憩時間にシェリーとナンシーが四人組のパーティーと話し込んでいて、時折笑い声が聴こえる。

 近いうちに食事をする約束をしていたが、嫌な気がして成らない。時折意味ありげな視線をこの4人から向けられていた。俺の事をスケコマシとでも言ってるのかな。

 そんなこんなで講習は無事終わり、解散となった。

 この後3人でギルドマスターの所に出頭した。いや、講習が終わったら顔を出すように言われてたんだよね。


 ギルドマスターに


「お前さんカヤックをあっさり負かせたんだって?報告が入ったよ」


 色々と規格外な強さに成りつつ有る事と、俺ならSSS級冒険者と成れるとも言われた。


 先ずは先日の盗賊団の、討伐功績でブラックオニキスのメンバーを、一律C級にランクアップさせる。報酬の準備が出来たとい言い、ナンシーにカードを渡すように言われた。実際は手続きの関係でごちゃごちゃしてたようだ。

 俺のとシェリーのとナンシーのカードと、ギルドマスターのランクアップ指示書を持って、ナンシーが手続きに行く。『あれ?ブラックオニキスのメンバー全員ってナンシーも含まれてるよね?ギルドマスターやらかしたな!』と心の中で笑っていた。


 パーティーとしての功績で皆はC、俺個人はB級になる。パーティーとしては、先日のオーガの討伐で既にC級に上がる要件を満たしているとの事だ。研修時点でC級に上がる貢献度を得ていた扱いだ。

 そして先の盗賊団の壊滅の功績は、戦闘力から俺個人の物と判断されており、新人研修での模擬戦で講師に勝ったらシェリーもB級に上がれたらしい。ランクアップ試験を兼ねていたようだ。

 ナンシーが戻ってきて、ランクアップしたカードを受け取り、ナンシーとの専属契約を結んだ。

 専属契約を結んだ場合、受付嬢は専属冒険者の報酬の10%程を得られる。元々ギルドの取り分が有り、その中から支出される。

 受付嬢が専属契約を結ぶというのは、その後結婚をしたり、ハーレム入りする場合が多く、受付嬢の目標となっている場合が多いのだそうだ。

 収入が劇的に上がるし、冒険者も専属契約者有りと成れば箔がつき、一流の仲間入りである。また、美人受付嬢を落とすチャンスが大きくなるので、仕事を頑張る傾向が強くなり、一般冒険者の悲哀以外良い事が多い。俺もそんな俗物だったりする。


 ハーレムを築く男は実力者であれば、社会的地位が高く、一種の英雄で、そこに入る女性も羨ましがられるんだそうだ。魔物との闘いで、強い男の子孫を残す事は推奨されている。


 専属受付嬢は、普段は窓口対応等の応援をして、契約者が現れると、一般冒険者対応中でもその場を離れ、専属者室で対応を行う。その為専属受付嬢は窓口を行う時は、カウンターに旗を立てるのと専用の服を着る。専用と言ってもデザインが少し違うだけなんだそうだ。専属契約を結んでいる受付嬢の窓口は、折角並んでも契約者が来てしまえば、別の所に並び直さないといけないので、比較的空いている傾向があるようになる。


 ナンシーの歳で専属契約を結ぶのは、異例中の異例だ。彼女の容姿だけじゃ無く、実力も高く評価されている証拠だ。


 ナンシーとの専属契約を結んだ最初の報酬が盗賊盗伐。

 2億4300万と俺は驚いた。ナンシーにも1割が入るとギルドマスターに言われ、ナンシーはその金額から気絶してしまった。

 俺はナンシーを受け止め介抱した。5分せずに意識を取り戻し、大丈夫そうなので続いて詳細を説明してくれた。


 騎士団が確認したら、 赤い狼団の幹部全員の死亡が確認された。未回収だった盗賊のカードも俺の報酬に加わる。ひょっとすると末端の盗賊が逃げおおせたかもだが、長年に渡り討伐できなかった賞金首の為金額も大きかった。

 盗賊団の壊滅の報酬が1億。

 盗賊団の首領が6千万、副団長(俺が最後に倒した3人の中の一人)4000万、1000万が二人と500万が二人で残りの賞金首で1300万。

 賞金首以外の一般員は、盗賊団の壊滅費用に含まれるそうだ。

 大金貨2枚と金貨100枚を現金で貰い、残りをカードに入れて貰った。他国のギルドでも引き出す事が出来るとの事だった。


 無事お金を貰い、何よりナンシーと言う貴重な人材を専属にして貰ったので、俺は有頂天になっていた。


 そんなこんなで3人でギルドを後にした。

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