第23話 ディナー
ギルドに着いたが、既にカウンターにナンシーの姿は無かった。暫く待つとナンシー様が現れた。
白の膝上のミニスカートに袖無しのシャツの上から袖を通さずにカーディガンを首から掛けていた。
とても清楚な格好だ。
彼女の長いすらっとした脚が惜しげも無くその存在を主張している。
素敵な脚だ。スリスリしたら気持ちよさそう。じゃなくて服のセンス良いなあ。
「こんばんはナンシーさん」
と言うとぶすっとした顔をして睨まれた。
「あの、ミスナンシー?」
更に口を尖らす。
「ナンシーちゃん」
あっやばい怒ってる~。やっぱり呼び捨てかな?でも可愛いなと思いつつ
「やあ、ナンシー」
と言うと
「よく出来ました。お待たせしました。迎えに来てくれて有難うランス」
と後ろ手に首を少し傾けて営業スマイルじゃ無い笑顔を向けてきた。この笑顔反則で有る。俺はランスと呼ばれた。ナンシーの笑顔に、シェリーには悪いがドキドキしっぱなしだ。
「ナンシーは服のセンスも良く綺麗だよ」
と誉めるともじもじしながら
「有難う」
と顔を赤くしていた。
シェリーが
「こんばんはナンシー様」
と言うと
「貴女もですよシェリー。私の事はナンシーと言ってね」
「でも、その、私奴隷ですからご主人様の恋人の方を呼び捨てなんておいそれた事は「ナンシーよ」えっと、ナンシーさん「ナンシーよ」ううう。 では、こんばんはナンシー」
「はい、よく出来ました。あのねシェリー、貴女も既にランスの恋人の一人なのよ。私達はランスを共有するソウルメイトになるのだから私達の間には遠慮は無くて良いのよ。」
とナンシーはシェリーの手を取り語っていた。なにやら意味不明な単語が出たが、既にナンシーとシェリーは俺の彼女らしい。
美人で聡明な女性が彼女に成ってくれるのは嬉しいが、彼女にした覚えが無いんだよな。
『何故だ!判らん。いつそうなった。告白しても、されてもないし、まだ出会って日が浅いんだが。』と苦笑をした。
今日は宿の食堂でディナーを頂く。相変わらず混んでいるが、予め宿泊者席に席を取っていてすんなり座る事が出来た。
今日は俺が先に座ったらすかさずナンシーが俺の隣に座り、シェリーはナンシーの前に座った。
料理を頼み会話が始まる。そう言えばナンシーは俺の事をランスと言ってたな。
「ナンシーは凄いなー。俺には出来なかったシェリーに呼び捨てにさせる事に成功するとは。どうかシェリーと仲良くしてやって欲しい。」
と頼むと
「勿論ですわ。ソウルメイトになるのですから」
「それと俺達付き合っていく様だが俺なんかで良いのか?」
と言うと、シェリーが
「ランスロット様今更何を言ってるのですか?既に求婚をなさって受諾されているでは有りませんか」
と身覚えの無い事を話してる。と言うかいつ求婚した?
求婚した覚えが無いと言うとナンシーが青くなっていたがシェリーが説明してくれた。
求婚の内容だが、まず独身の女性に握手するのは貴女に対し興味を持つ。
そして左手を添えるのは既にあるハーレムの一員に加わる事を検討して欲しいと伝える。
女性が強く握り返すのは検討を受け入れるとの回答
で少なくとも一度以上デートや食事を行い会話を重ねる。
女性から
「私のような女は好きか、又はお嫌いですか?」
と質問し、好きだとの返答が求婚の求めになる。嫌いだと言えば話がなかった事になる
そして女性がデートか食事を本人又は既存のハーレムメンバーに申し込み、その場に女性が現れ、お互いが呼び捨て又は愛称で呼べれば誤解無く婚約成立となる。よく貴族が行う駆け引きの言葉遊びな的な古くからある決まりがあり、俺は知らずにナンシーに対してハーレムの一員になるように求婚し、ナンシーが受け入れてしまったと言う事になる旨説明された。
俺がやらかしたと呆然としてるとナンシーが泣きながら俺にしがみついてきて、
「求婚は本心じゃ無かったのですか?私じゃ釣り合わないんですか?」
と必死に訴えてきた。
取り敢えず落ち着こうと三人で部屋に入った。
部屋に入るなり俺は人生2回目の土下座を敢行した。それはそれは自分で言うのも何だかだが見事な土下座である。俺は必死だった。マズイマズイこれはいかんやつだ。とてもまずいと。
慌てた二人に起こされてベッドに座った。
俺が勇者召喚された転移者であり、この世界の事に疎いことを説明し、求婚はしていない旨をえた。
ナンシーは泣き崩れた。
「運命の出会いなのに酷いよー。やはり私がハーフエルフだから、幸せにはなれないんだーうええーん」
とすすり泣いている
俺はそんなナンシーの姿に狼狽え、ナンシーを抱きしめ、
「君の事はまだよく知らないけど、今の所は好意を持っている。こんな女性が彼女だったらなとは思うけど、まだ知り合って間もない。でも人として好ましいと思っている。しかし出会ったばかりだからまだ人生を一緒に歩む事も子をなす覚悟決める所までに至ってないんだよ。だからナンシーの事をもっと知りたい。
彼女の前で片膝をつき、彼女の手を取ると、
「私ランスロットは銀髪の乙女たるナンシーに交際を申し込みます。君に私をちゃんと知って貰いたいし、君の事は一人の大人の女性として向かい合いたい。どうか俺の善き理解者となって私の横を歩いて欲しい。」
と述べた。
ナンシーは
「いいの?私が?貴方の様なたぐいまれな騎士、じゃなくて勇者様のお側に居ても良いの?」
と泣き止んだ。
「君が良い。君だからお願いするんだ。君が欲しい。君の笑顔を俺にくれ。」
と。あれ?これ言ったらまんま求婚か?失言か?と思うと、
「はい。改めてお願いします。ナンシーはランスロット様の全てを受け入れます。どうか私の事を見てください。」
と笑顔に戻った。あれ?様付けで呼ばれてるやん。
俺はナンシーを抱きしめた。そしてシェリーも泣きながら抱きついてきて三人で暫く抱き合った。
シェリーはナンシーに、
「ナンシー良かったねランスロット様がちゃんと受け入れてくださったね。」
ナンシーは頷いてうれし涙を流していた。
「私が選んだ方は勇者様。最初に握手した時に運命と感じたのは間違いじゃ無いのね!」
と明るい笑顔が戻った。
落ち着いたので食堂へ戻る。右にシェリー、左にナンシーが抱きついてきてテーブルに座る。二人に両手を掴まれている。文字通り両手に花である。男のロマンである。鼻の下伸びてるんだろうな。
どうしてこうなった。普通に食事をするだけだったはずだったのに。おかしい。
今日は子羊のシチューと香味野菜のソテー定食
二人が交互に俺に食べさせる。
周りの目が痛い。両手を掴まれてるので抗議したが、
「私達の事がお嫌なのですか?」
とうるうるとされて黙って逆らえずされるままにしていた。
勇者召喚された勇者は女性の憧れだそうだ。俺がそうだと知ったナンシーの反応は凄かった。夢物語のヒロインになった。夢みたいと言っていた。ステータスカードを見せて上げて称号をみて涙を流してた。
ナンシーが住んでる所を教えて貰った。ギルドの裏の独身用の宿舎の部屋だった。
笑顔の戻ったナンシーは素敵なレディーだなと段々惚れてきた。俺こんなに惚れっぽかったっけか?
食事を終えて、明日は研修だから早目に休む事にした。
シェリーに先に風呂の準備をして先に入るよう言いつけて、ナンシーを部屋まで送った。可愛いいなあと、大事にしたいなと思い、帰り際におでこにキスをして別れた。
明日早々に驚く事になるのだが今はまだ知らない。
相変わらずシェリーが床で寝ようとしたのでデコピンを喰らわせてベッドで一緒の布団に入って貰った。
「一人じゃ寂しいから添い寝してね」
と言いおやすみのキスをして程なく眠りについた。あっ、本当にただの添い寝だからね。そうしないとシェリーは床で寝るからさ。
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