第12話 楽しめないデートもどき
宿屋の主に一週間の料金を支払い、服を売っている店の場所を教えて貰った。シェリーの部屋を、俺の部屋とは別の部屋として用意して欲しいと頼もうとしたら宿の方が驚くし、シェリーも
「いけません。私は厩で十分ですから」
と言い始めるのには驚いた。普通奴隷は厩等が割り当てられて、草の上で寝るのが普通だそうだ。稀に一緒の部屋に泊まる場合があるが、それでも夜伽の相手をする場合以外はベットでは無く床だそうだ。取り敢えず今の部屋で一緒にとなってしまった。
『奴隷の扱いって酷いな』
シェリーに服を買ってから門番の所に向かう旨を伝えた。ちなみに食事は2人分で銀貨1枚と銅貨2枚だった。宿泊者サービスで半額だった。
宿泊しているのは憩いの森亭という。
但し字が読めないけど。
宿の位置は中央広場からすぐの大通りに面した宿が多く集まる一角にあり、3階建ての中級宿だった。
街の様子は大通りは2階建てでレンガか、木造の建築が多く、時折石造りも見られた。1Fが店で2Fが住居か倉庫になっている感じだった。
中央広場付近の大通りは商業地区のようだ。
人口がどれ位かは分からないが活気に溢れ馬車の往来も多かった。
あちこちの看板を見てもやはり模様にしか見えないが、文字である。
王城で貰った冒険者の手引きは読む事が出来た。それは、以前の召喚者が作成した物の写しのようだ。という事は以前にも日本人を召喚しているとしか思えんな。魔王が約1000年周期で現れそれに会わせた勇者召喚にしては準備が良すぎる。1000年前の書物が残っているのにも違和感を感じる。記載内容に違和感が無く、この世界の人が翻訳書を片手に翻訳したような内容では無く、日本語を書ける者が書いたとしか思えなかった。まあその当たりはおいおい調べよう。
人種は人間が多く、奴隷がそこそこ居るのが気になった。よく見ると人間の奴隷以外に獣人、エルフと思われる耳の尖った者の比率が多かった。人間以外の一般人はほぼ見なかった。というか見た記憶がない。
すれ違う奴隷の服が気になった。基本的に粗末な服で先程食堂で見たような貫頭衣が多かった。
奴隷の服としてはシェリーのでもまともな方だった。
もう一つ気になったのは履物。シェリーが履いているのは粗末な草履チックな、あまり歩くのには適してるとは思えない代物。見掛けた奴隷は裸足か粗末な履物が多く、そのような格好がまかり通っている事に怒りを覚えた。この国ろくなもんじゃ無いな。
目的の服屋には15分程で辿り着いた。5分位と言っていたが見落としてしまい、途中で引き返した為に時間が掛かった。
店は40畳位のそこそこ大きな店。
応対してきた店員は20代前半の可愛いらしいスレンダーな女性。胸は・・・・しかしテキパキと動き、颯爽とした好感の持てそうな感じがしたが、シェリーを見ると目がギラギラしていた感じで、ちょっと残念娘に思えてきた。
今日は俺の服を一着、シェリーのを2着と下着を2組ずつ見繕って貰う事にした。俺の方はすぐ決まったが、やはりシェリーの服を選ぶ時はシェリーに遠慮された。
「いけませんご主人様。奴隷の私如きに滅相も有りません」
などと言うのだ。恐らく正論を言って諭すのは今は無理そうなので、店員の居る前というのもあるが、取り敢えずシェリーには、
「美少女が綺麗な服を着飾ると俺の目の保養になるから、俺のためだからさ-」
と誤魔化したが
「美少女だなんて」
と照れながらではあるが渋々納得してくれた。ほっとしたのか目が輝きだしたのは気の所為では無かった。
一着は花柄のワンピース、もう一枚は柔らかい生地の膝丈のスカートとシャツを選んで貰った。追加で動きやすい冒険者風のシャツ、スパッツのようなアンダー、その上に履けるスカートをチョイスした。その場で一着を試着して、そのままの格好で店を出る事にした。下着選びはシェリーの分は店員にお任せし、俺の分はその間に選んでいった。全部で金貨5枚と銀貨4枚だった。作りは良さそうな服なので貨幣価値の参考にしよう。
シェリーの姿は見違えた!やっぱり美少女には綺麗な服が似合うよね!眼福眼福。
二軒隣に靴屋が有るとの事で、そちらに向かう。先程会計の時に奴隷の服を捨てておいてと言い掛けたら、
「ダメです持って帰ります」
と強く主張され、気圧されて思わず了解して一緒に袋に入れて貰った。店を出ると
「奴隷が生意気を言いまして申し訳有りません」
ぼそっと呟いた。片手を上げて了承を伝えた。
後で気になったので
「嫌な思いの有る服じゃ無いのか」
そう聞いたが、
「ご主人様と初めてお会いした時の服なので捨てられないです」
上目遣いでうるうるされて言われては、了解と言うしか無かった。
うーんよく分からんでしょう、この生き物。
靴屋はドワーフの職人チックなオヤジだった。
2人の分の外を歩くのに適した靴を見て貰う。
旅に適したのをと伝えお互い何足か確かめサイズの合う靴を少し調整して貰ったが、履き心地がとても良かった。
オヤジは俺の靴が気になったようだが珍しい靴だなと、一言言った以外何も言われなかった。代金は二足で金貨3枚だった。
そのまま新しい靴を履いて門番の所に向かう。シェリーは店を出ると
「申し訳有りません」
と頭を下げる。
「必要な物だから気にするな」
そう言うともう一度
「ありがとうございました」
そう呟いていた。
余りにシェリーが恐縮するので、本来は美少女との買い物デートなので気分はるんるんの筈なんだが、楽しめなかった。
取り敢えず身なりが整ったので、一旦宿に荷物置いて門番の所に顔を出した。
門番の所では10名位の兵士が街の出入りの者達の手続きをしていた。
シェリーによると対応してくれたのは昨日の門番で、40代前半でここの小隊長をしていた。
取り敢えず別室に連れられて、先ずはステータスカードを見せてくれと言うのでステータスカードを出した。
ステータスカードは王城で説明して貰ったが、簡単なステータスで名前や年齢、レベル、職業が表示されている。
魔法で作られたカードで『ステータスカード取り出し』や『収納』と念じれば顕現する。
死亡すると殆どの場合顔から出てくる。
ステータスカードを確認して犯罪者じゃ無い事が分かり、次は念の為オーブに手をかざすように言われ、特に反応の無い事の確認が取れて門番のおっちゃんはほっとしていた。
取り敢えず期限が7日間の仮入門許可証を俺の分発行して貰った。奴隷の分は要らないそうだ。主人の持ち物だからだ。物扱いに絶句した。
許可証は7日以上滞在するなら冒険者ギルド等で登録して、ギルドカードを発行して貰い一度持っていく必要が有るとの事だった。
調査隊は明日帰ってくる予定なので明後日にでも来るように言われた。
少し盗賊団の話をしたが、
「お前のレベルでよく盗賊の頭を殺せたな」
と感心していた。
結構有名な盗賊団で、頭はレベル50位の猛者だそうだ。
懸賞金は結構掛かっているという。
一通り話が終わったらもうじき夕方の為に宿屋に戻る事にした。
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