第10話  盗賊との死闘と運命の出会い

 奥に入っていくと、段々争いの気配がしてきた。

 藪や木でまだ見えないが、血の臭いを感じ、罵声と怒声、呻き声等が聞こえるのだ。


 『魔物じゃなく、盗賊に何者かが襲われてるっぽいな』

 不思議と心は落ち着いている。


「死なないように頑張ろう。」


 と思わず呟いた。某魔術師と呼ばれた男みたいに、凄い戦術がほいほいと出れば良いのだが、恐らく考える間もなく行き当たりばったりになるのだろうなぁ、と思うのである。


 この時、普通なら人を殺す事に葛藤するのだろうがまったく思わず、後で思い出しても不思議なんだが、やっぱり俺は壊れてるのだろうかと苦悶をした。


 いよいよその場が見える場所に来た。やはり野営している所を襲われていたようだ。


 馬車は三台で、荷馬車ではなく、人を乗せる馬車が二台と荷物を乗せるのが一台のようだ。


 そこかしこに死体が転がっていて、恐らく二十人以上だろうと思われる。中には首輪を付けた若い女性もいた。

 殆ど裸で犯され殺されたのだろう。酷い事をする物だな。

 服装がばらばらで、冒険者と思われる死体に混じって盗賊と思われる軽装の小汚い連中が見掛けられた。


 小型の天幕が数幕あり、一つを除いて崩れている。崩れた天幕の近くに身なりの良いでっぷりとした男が転がっていたのだが、商人か貴族だろうか。

 馬車を物色している盗賊の背後に近づき、一気に首を刎ねる。

 剣術レベルが上がったのか、森での戦いの時よりすんなり刎ねる事が出来た。


「罠解除強奪しました」


 馬車の近くで死姦している奴が居たので、それも首ちょんぱする。


「鍵解除を強奪しました」


 天幕の一角では、一人の冒険者が三人相手に戦っていた…が、遂に力尽きた所だった。盗賊の背後まで回っていたが、後一歩間に合わなかった。


「ファイアーボール・ファイアーボール」


 と二人に投げつけて、一番近い奴は首ちょんぱする。


 林の中からも悲鳴が聞こえる。逃げた人を盗賊が追いかけていったんだろう。


 天幕の方からも女性の声が聞こえてきた。


「いやー!やめてー!」


「おいおいおとなしくしやがれ 可愛い顔に傷つけっぞ。うへへへへ」


 下卑た男の声も聞こえてきたので、俺は迷わず天幕に駆け込んだ。


 そこには三人の人間が居た。

 女性に馬乗りになって自分のズボンを下げている最中の男が一人。入り口と反対側にいる男が一人。身に纏っている服をたくし上げられて下着が露わになっている、首に輪っかを付けた若い女性が一人…今まさに、犯され純潔を散らされそうになっていた。

 馬乗りになっていた奴は行為に夢中になっているのか俺が入ってきたのには気がついていなかったが、もう一人が気付き、


「テメー何もんだ!」


 と叫んだ。が、その時には俺は馬乗りになっている盗賊の頭部に剣を叩き込んでいた。そいつはそのまま脳漿を飛び散らせ即死したようだった。


『統率力を強奪しました。』


 とのアナウンスと同時、もう一人の盗賊が投げたナイフが俺の右肩に刺さる。血が噴き出し、女性に少し掛かった。


 うっと声を漏らすと共に剣を落としたが、痛む左手を咄嗟に無理やり盗賊に向け、アイスアローを3連射した。

 奴は一発は躱したが二発が命中して倒れたので、追撃のアイスアローを放って始末した。

『剣術(二刀流)を強奪しました。』


 と、いつものメッセージが流れる。

 盗賊を始末出来たので襲われていた女性に


「大丈夫か?立てるか?」


 と声を掛け近づいた。服は白いワンピースで、年は高校生位だろうか。

 金髪のロングですらっとした体系。

 服は捲り上げられていたが、今は必死に整えている。さっきちらっと見えた感じだと、小さくもなく大きくもなく、手のひらサイズで綺麗な形だった。

 服は胸元が少し破れているが、襲われている時に破られたのだろう。


 手を触れようとした瞬間


「お頭どうかしましたか?」


 と一人が入って来たので、すかさずアイスアローを投射する。そいつの頭部に氷の矢が刺さると


『隠密を強奪しました。』


 とアナウンスが聞こえた。座り込んでいる少女に手を差し伸べながら「脱出しよう」と声を掛けようとするが、少女は震えて身構えている。


「君をどうこうしようという気は無い。偶々、街道を通ったら争いの気配がしたから駆け付けたんだ。

 見ての通り俺は盗賊では無い。さあ立つんだ。」


 少女の手を取った瞬間、体に電気が走り痺れが一瞬起こり、運命を感じた。少女も同じようで一瞬固まったが


「はいよろしくお願いします。」


 と澄んだ声で返してきた。

 立ち上がった少女に怪我が無いのを確認したが、片胸がポロリだったので胸に指を指したら真っ赤になって隠した。

 取り敢えず天幕の中に有る上着を掛けてあげた所


「お優しいんですね」


 と返答があった。上着を掛けている時に首輪に手が当たる。その瞬間、首輪が光り


「奴隷1を獲得しました。」


 と聞こえてきた。


 少女は一瞬キョトンとなったが


「貴方様が私のご主人様になられたのですね。」


 と上目遣いでその潤んだ目を向けてきた。破壊力が有り過ぎる。

 彼女の背丈は160cmに少し足らない位かと思う。改めて見ると16,17才位だろうか、かなり整った顔をしている。

 美少女と言うより美女で、ぶっちゃけ俺のドストライク。

 金髪に蒼い眼で小ぶりな口。

 何でこんな子が奴隷なんだろう。

 ふと盗賊を見ると、顔からカードが出ているので、その子にカードを指で示すと


「知らないんですか?ステータスカードは死ぬと顔や顔から近いところからああやって出るんですよ。見た事無いんですか?」


「うん初めて見たよ。」


 首をキョトンとかしげる姿が可愛かった。


「盗賊を殺したらステータスカード回収して、街やギルドに届けると賞金が出るんですよ!」


 言われてカードを見ると、職業欄に赤く盗賊と出ていて名前が黒く囲われてる。


 取り敢えず3人のカードを集めて外に出る。

 肩に刺さったナイフを引き抜いたが痛みで倒れそうになり、思わず片膝をついてしまう。すると彼女が、掴まって下さい、と肩を貸してくれた。

 俺の剣は彼女に持たせた。

 俺は魔法があるから、と、取り敢えず自衛の為に使うように言う。渡した時に剣が使えるか確認すれば、一応使えるとの事だった。


 そうこうしている間に、戻ってきた盗賊が3人、俺に向かって来た。


「なんだてめえ」


 怒気を向けてくるのでファイヤーボールを数発ぶつけてやったら、3人共絶命する。


『剣術(片手剣)を強奪しました。隠密を強奪しました。生活魔法を強奪しました。』


 とアナウンスが流れた。


 馬車に向かうと、馬が繋がれている状態だった。盗賊が繋いだ所だったのだろう。

 彼女に


「馬車を動かせるか」


「うん」


 と頷いた。

 馬車は商人の移動用で、貴族の程では無いが機能的にしっかりしていて派手な装飾が無いし、けばけばしくない分好感が持てる。

 出発の準備をしつつ体から出ているカードを一通り回収したのだが、怪我をしている為か頭が回っていなかった。本当は林の中も確認する必要があったのだ。

 カードを回収して馬車に向かい出したら、矢が飛んできた。気付くのが遅く、振り向いた所で右足に刺さった。


「うがあ」


 呻きつつ、矢が飛んできた方向にアイスアローを数発撃ち込むと


『鍵解除を強奪しました。』


 とアナウンス聞こえてきた。


 何とか馬車に辿り着くも、俺の姿に驚いた少女が慌てて駆け寄ってくる。そこへ矢が少女に向かって飛んできた。咄嗟に少女を庇ったが、俺の背中に刺さった。


「きゃあー!」


 と悲鳴を上げたが彼女は無事だ。

 お返しにアイスアローをぶち込んだら


『隠密を強奪しました。』


 とアナウンスがあった。


 急いで馬車に乗り込み、彼女に馬車を出すように指示をする。すぐに追っ手が来た為、アイスアローを数発撃ち込んで追いかけてきた3人を始末した。

 どうやらそれ以上は居なかったようで、何とか街道に出られた。何のスキルを強奪したのかは覚えていなかったが、後日ステータスを確認したら片手剣と威圧と暗殺術だった。さすが盗賊、ろくでもないのばっかりだ。



 街に急ぐように話をして、馬車の中にあったお金を託し、街に行った時にもし俺が気を失っていたら治療院にて治療を受けさせて貰うようにお願いした。


「畏まりましたご主人様」


 彼女は、大丈夫か、俺が心配だ、と言ってくれた。お金は、馬車ごと回収しようと盗賊が掻き集めたものだろう。

 意識が遠のきそうだが、彼女は必死に色々声を掛け気を保つようにしてくれた。


「貴方は私の命の恩人です。絶対に死なないで下さい。」


 って俺死にかけに見えるんだろうな。矢も喰らったし満身創痍であり、実際死にかけてるんだろう。


「貴方は運命の人です」


 等と恥ずかしい事を必死に言っていたようだが、何と言っていたかはっきりとは覚えていなかった。

 そういえば、必死だった所為かお互い名前を名乗っていなかった。彼女は名乗ったような気がするが、何を言っていたかはっきり覚えていなかった。

 取り敢えず意識を失う前に、俺の名前をランスロットとステータスカードの名前を伝えた所


「ランスロット様は私が命を掛けて街にお連れします。貴方は・・・・・」


 と聞いているうちにブラックアウトしたのだった。

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