エラーから始まる異世界生活

第9話 街道へ

　転移三日目

　更に１時間程進んで長い直線に差しかかった。その先がどうやら森の出口のようだ。

　時間は早朝だろうと思われるが、この世界の自転周期など分からないので落ち着いてから時間を確認しないといけない。

　実は普段左手には手巻きの腕時計を付けていて、誤差は確か１日に１、２分程度だったと思う。スマホだとバッテリーが切れたら終わりだ。それを考えたら有難い。時計の方は、壊れるとまずいので今は装着せずに、鞄に入れている。

　一日が２４時間としたら、今は５時頃だろう。

　ようやく森を抜けられる、という所で、森を出ようとしているオークが３匹、３０ｍ位先を歩いているのが見えた。

　手は幸い剣を握れるまでに回復している。まだ少し痛いが何とかなるだろう。

　何とか２体を魔法で、残りを剣で倒そう、と思った所で相手方がこちらに気付いた。

「ブヒョー」

　と叫びながら突進してくる。１匹は槍のような物、もう１匹は剣、そして最後が杖を持っているのでオークメイジ？だろうか。

　２匹が突進してくるのでファイヤーボールをお見舞いする。剣を持った方には、頭に当たった。吹き飛ばしこそ出来なかったが、転がって悶絶してぴくぴくとし出した。

　槍使いの方には体に当たり、後方に吹き飛んで行った。その上、メイジが放った魔法がそいつに当たったのだ！これがフレンドリーファイヤーって奴か！

　メイジが使ったのは水魔法だろうか？槍使いについていた火が一気に消えた。しかし焼けただれて内臓が露出してるので、槍使いが死ぬのは時間の問題だろう。

　メイジまで１０ｍ程有るのでナイフを２本投げる。１本は杖に防がれたが、もう１本は左手に刺さった。

間髪を入れずファイヤーボールを見舞うも、水球で威力を削がれる。当たりはしたものの、ダメージは殆ど無い。

　但し魔法の発動が遅れた様なので、一気に距離を詰めて首をちょんぱ・・・出来ず半分チョイしか斬れなかったので、心臓に剣を突き立てた。

『水魔法を強奪しました。ウォーターボールを取得しました。』

　アナウンスが流れる。

　「うお！２属性行けるのか」

　残りの２匹も虫の息だった為、トドメを刺す。

『剣術（片手剣）を強奪しました。スキルストックしました。槍術を強奪しました。ラベルアップしました。』

　とアナウンスが流れた。素早く魔石と討伐証明をゲットして、森を出る。街に行った後金を稼がなければならないので、その為に必要な事をしている。

　森を出て２００ｍ程歩き、一旦休憩をする事にした。危険な森を抜けた安堵もあったが、腹が減ったのと、ひと段落したのでステータスの確認も行いたかったのだ。

　名前　ランスロツト

　年齢　１８

　ラベル　6

　生命力 60/161

　魔力 　147/161

　強さ　 225

　ギフト　

　スキルマスター２

　アイテム強化１

　スキル

　分析２

　気配察知２

　ナイフ術１

　棍棒術１

　投擲術１　　　

　体力強化１　　　　

　剣術（片手剣）

　弓術１

　火魔法１

　水魔法１

　スキルストック

　ナイフ術１　２

　棍棒術１　２

　片手剣１

　魔法

　ファイアーアロー

　ファイアーボール

　アイスアロー

　ウォーターボール

　職業 無所属

　称号

　彷徨える異世界人

　『なんかスキルマスターってあるけど何だろう？それにいつの間にか出て来てるのがあるし魔法はアイスアローってあるがアナウンスを聞き逃したかな？

　レベルアップも聞き逃したか？覚えが有るのと乖離していているが2アップとかかな。

　今の強さだと中級冒険者とか騎士団の中隊長レベルだろうか。中隊長位だとレベルも40超えてるって言ってた様な気がするが俺は6だけど。』

　比較対象が今は無いので、自分の強さが分からない。それより分析って何だろう？ゲームだと鑑定の上位だったような気がする。

　スキルストックの使い方ってなんなんだろうか？

　試しに剣術（片手剣）１を選んでみる。

　剣術（片手剣）１を合体させますか？　ｎ/ｙ

　取り敢えずｙと念じる

　スキルを合成しました。剣術（片手剣）２に進化しました

　うおお！剣術のレベル上がったようだ！この先役に立ちそうだな。

　この、スキルの合成とか、スキルを強奪するのって、スキルマスターって奴の効果なのかな。

　後はアイテム強化だなぁ。何だろうこれ。今はそれどころじゃ無いから街に着いてからだな。

　…この時は、たかだか森を抜けた程度だったのに「街に着くのは後もう一息」くらいに思ってたんだよな。自分の甘さに舌打ちする事になる運命が待ち受けている事は、全く予想しなかった。

　そうこうしていると少し体力が回復したように思うので保存食を無理やり腹に押し込んで出発する事にした。

　間もなく一本道が終わり街道に出た。所々低木が有るが、人の往来はそこそこあるのか道はしっかり踏み固められており、大型の馬車が十分すれ違える幅がある。石畳ではなく土なので、雨の日はきつそうだな。

　さて右と左どっちに行ったものか判断が付かないな。三叉路に看板が有るのだが文字が読めないので俺は焦った。

　文字数から左のような気がするけどこんな時はコインに聞くかと思い適当に硬貨を出してトスする事として表なら左、裏なら右でと決めた。

　コインは表だったので左に向かう事としたがここから王都まで馬車で半日位かな。徒歩だと着くのは夜になるだろうかな。

　この時のコインには感謝が絶えない。後にお守りに加工するとかしないとか。

　そんなこんなで歩き出し、夜通し歩いて思ったのが早急に靴を買う事だった。今の靴は旅に適さないし服も買わなきゃな。返り血と自分の血で結構グロい。

　30分位歩いただろうか、金属が当たるような音と叫び声や悲鳴のような声が聞こえて来た。何かが争っているようだ。

　丁度今居るところから馬車が何とか脇にそれて入っていける小道のようなのが有るのが分かる。

　城門が閉まる時間になってしまい野営でもしたところに魔物や盗賊にでも襲われたのだろうか？

　俺の理性が危険だ行くな、関わるなと訴えかけていた。しかし直感は、行かないと後悔するし行かなくても近くで騒ぎが有れば次襲われるのは己だと強く示している。

　迷ったのでここでも先程と同じコインでコイントスを行い…剣を握りしめトラブルに身を投じるのであった。