戦う手段としての剣がある、なんて自足

 筆者は日夜にちや、いかにして昨今のサブカル業界にみられる封建ほうけん的な体制を切りくずしていこうかと一人思案している。それがあまりに思い上がりのひどいことだと、自分のように何の実業的成果もなしていない者がそんな大業をなせるはずもないと、わかったうえで。それくらい目に見えて(特筆するならアニメ・ラノベという)日本のカルチュアの現状は腐爛ふらんしているわけなのだ。


 それではさっそく手をつけていこう。


 「イキり」厳密に言うなら、「はやりのファッションやカルチュアに目を暗ませ、ボキャブラリも知識・言語を深めようとする向学心もない幼稚だが声の大きな仲間たちと手を組むことで、絶大な力を持ったように錯覚し、イキがる人間ども」というもの。本文を読んでもらっている読者様の中に、一体どれほどの人数、このような人種を嫌悪している方がおられましょうか。できれば全員であることを願いたい。え? 前々から、気どって難解な語句をならべたててきた筆者わたしのほうが相当なイキりじゃないのか、ですって? お恥ずかしながら、それは否定し得ません。なぜならジャパニメーションを信奉する一人である以上、アニメやその原作たちへの愛はひととおりではありませんし、このように述べる言葉すべてに熱がはいってしまうことはまったく仕方がないのです。それを承知のうえでお読みいただけると有難ありがたいです。

 つまり今度の題目の主旨とは、筆者のようなキモヲタが、こういった悪質なイキりたちにどうやって対抗しようというのか。通常の理解や言語がつうじないのだからどうすることもできない。そういうイヤな昨今の世のなかに比べて、異世界には魔法や剣・銃など(正直いまどき、まともな中高生が思いつくにしてはガキっぽ過ぎる気がしないでもないが、)対人武器が明確に存在し、かれらと肩をならべる形で、自分の力を誇示することができる。ラブコメとか女子の価値基準わかんねえから面白くねえわ。……なんて、これも、俺TUEEEEに次ぐ人気上昇の要因なのではないか。そういうことだ。

 こう長々とかたっくるしい文章ばかりでは楽しくないので自虐に走らせてもらうが――筆者が過去2017年当時連載していた(現在永久休載中の)『OLDANDNEW GREATWAR/オールダンニュー・グレートウォー』という作品では、髪が白い以外にとくに個性のない主人公・楠森バジルが、ある日ナゾの美少女から襲撃されたことで「多量の血液を有し、それが絶えないかぎり死ぬことがない」という能力に目覚め、これを知った「新人類」と名乗るテロリスト集団から仲間になることを強要される。そこで「自在剣」という血液を噴射して刀身に代える、バジルの能力を最大限生かす武器を支給され、彼は2刀流で敵対する別のテロリストたちとの戦いの日々を送っていく。……ああ、要点だけ書くのだけでも疲れる。用語多すぎ。ちなみに宣伝する意図はないなぜならお粗末な作品だったから。これを着想するきっかけとなったのは、筆者が地元の映画館で観たお兄様劇場版である。ああいう込み入った設定の超大作を書きたいと、オレの厨二心がザワついたのだ。さらにいえば武器のイメージは、胸の三巴みつどもえ紋が特徴的なロボットに乗る主人公を声優柿原氏がつとめた無双系ロボアニメから得たし、オルグレ(初めて略した)の途中で出てくるHarderというロボットというか女子なんてバーストリンクしていそうな外見だった。筆者ももういい年なので名作にインスパイアされたとは言わない、堂々とパクったことを認めよう。明確にそれを意識していたので、これは糾弾されても返す言葉がないのだ。――さてそれはいい。要するに堅固けんごな宗教や思想をもたなかった当時の筆者は、問題解決に会話ではなく戦いにおける決着しかもちいようとしなかった。それは単純に表現力がなかったせいでもある。そこそこ辞書は読み物だと感じている自分なのでボキャブラリはとりあえず充分だったはずなのに、プロットによって定められたストーリを守り切ろうとするあまりに、描写も展開もセリフ回しも単調になり、つその潤沢な語彙ごいで、キャラクターや世界観をほり下げることもなかった。最低である。こんなものは小説になく、ただの設定資料だと酷評されたほどだ。けれど今となってはそれも正当なのだと自覚している。


 すべては、この目で、すくなくとも3年以上は、同様に設定資料化した異世界ファンタジーや現代アクションものを見て来たからにほかならない。


 去年、どこの馬の骨とも知れない気持ちの悪い男に「自分も小説を書いている。ラノベ作家志望だ」と迫られ、しばらく付き合っていた。筆者はラノベ作家志望ではなく単にアニメ化するための原作を書いているだけなのだが、そんなことはともかく男はその口でたしかに「ラノベっていうのは、自分が気に入ったアニメとかから気に入った(キャラや世界観などの)部分を持ってきて、それを骨組みにして作るものなんだよ」「ラノベで一番大事なのはストーリに決まってる」と言った。はきけがするほどよく記憶している。そして、そんな大それたことを公言しておきながら、自分の小説だといって手渡してきたものは、それこそオレの汚物をぶっかけてやりたくなるほどの汚物っ……失礼、内容だった。

 これはよくおぼえていないのでテキトーでよろしいだろうか。もらったテキストもとうに絶滅させたし。

 えっと、なんか巨大な鉄塔がおそらく東京だろう町のド真んなかに現れて、その下におっきな穴ぼこが開いてて、そっから得体の知れないモンスターが這い出してきた。不思議な力に目覚めた主人公(名前はシンプルすぎてかえって忘却)は俺の世界の平穏を守るべく、戦いはじめる。

 本当にテキトーで申し訳ない。でも頭にないんだもの。それに、上を読んだ方の全員が「絶対(話を)盛ってるだろ草」みたいにきっと思われるだろうが、冗談抜きで、このとおりだったのだ草。言葉もテキトーでない部分はほぼ全部そのままだった草。42字×34行の書面上にほんの10行ほどでつづられていた草。いや……これ以上書くとほんとうにただの悪口みたいになってしまうので、このへんでやめておく。


 (以降、わかる方には、かの絶剣ぜっけんが大勢の敵をまえにして、仲間にはなったあの言葉を思い出しながら読んでいただきたい)


 今の世はコミュニケーション力が必要とされている。たとえ仕事の現場でも、人間関係のあいだでも。

 われわれが生きているなかでどれくらいの数、肉体的な戦闘によって解決できる問題があるだろうか。まあたいていは上下関係とか経済力でどうにかなるよという意見もあるかもしれない。異世界ものの美点は、つまりそういう部分にある。人同士が承認し合って、魔法・剣・銃などの武器を使っての交流をよしとしている。これはたしかに幼稚かもしれないが、だれもが決められたルールのなかで実力を競っているという「公平さ」の面においてすばらしい特性ではないか。スポーツに野蛮さという香料を少し足したようなものだ。下の者は上の確実に力ある者に忠誠を誓い、上の者(昔の作品はいざしらず最近は社会的弱者が転生・転移してくるケースが大半か、)はそれに応えることで自信を保つことができる。目に見える利害関係が魅力的ではないか。

 もっとも、これは偏見なのであまり明記しない。ネット社会が完ぺきに整備された現代にもかかわらずネットトラブルが顕著に取り上げられるようになった原因が一切、前記のことに関係しないと、言い切ることができないのはもうわかってもらえていることだろう。

 もしも本当にその人が(今これを読んでいるあなたかもしれない、)書くべきものは、なんであろうか。つまり、自分にしか書けないものはなんだ? 執筆の直前にでもいい。一瞬考えてみるべきだと思う。「知名度を上げてから書きたいものを書けばいいじゃないか」そんな大人みたいなことを言える人間で、プライドを捨てて大衆向けのつまらないものをあえて書くというプライドがあるのなら簡単には否定できない。しかし、それで仮にも作品が売れたとしたら、ちまたの目に触れることで絶対的に「もう使い古されたジャンルだ」と決めつけられて、結果たくさんのなかの一つになり下がってしまうだことだろう、あっけなく、時間をかけずに。唐突だが自分はVirtualYouTuberをむしろ愛好している方だが、へたに流行のゲーム実況や萌え路線に走りすぎれば5年と持たない気がして、毎日ヒヤヒヤしている。メンバーになりたくともこの不安感からなりきれていない(だからにわか仕込みと言われて結構)。このことから綺麗事を言うようだが、今すぐに有名にはなれなくとも、自分の弱みや趣味をネットを利用して忌憚きたんなく発信し、なるべく長期間続けていくことが、自分らしさの真なる表現になると筆者は提言する。人間の個人性つまりその人らしさとは「歴史」にしか見受けられない。絶えず続けることでしか、自分を誰かに知ってもらうことはできないのである。


 だから、どうか武器をとって戦うのではなく、自分がこれまで獲得したり磨き上げたりしてきた言葉や考え方で、他人と向き合ってほしい。またそういう作品が世のなかで生きていってほしいと思う。ゲリヲンやから始める異世界生活のように。すごく私的でまたしても最低な言い回しになるが、自分が経験したこともない暴力をフィクションであえてもちいたりネタにしたりする人間はいなくなってほしいと思う。どうしてもそうせざるをえないときには、どうかキャラクターをぞんさいにあつかわないでほしい。登場人物たちは原作者の人格の一端いったんから生じているのだから、かれらの言動や行いは原作者そのものによってしか未来につながらないわけなのだ。

 たびたび、試読してくれた知人たちは筆者の小説が読まれない理由を「動かないから」と云う。それはまちがっていない。伝えたいことだけを書いているせいだ。余計に、パロディーや、むだなセリフのやりとりはできるかぎり排除している。それでもアニメ化できると豪語する理由は、キャラクターたちがつねに筆者の脳内で、いきいきと活動しているからなのだ。かれらはひどく無口で伝えるのがへただから、無理してこちらが解釈を書こうとする必要はない。読者のために書いているのならそれは大きな欠陥となるが、自分の創作のためならば価値基準を徹底すべきではないか。

 

 そういうことだ。長くなってしまった。あいだに挿絵でもはさみたいくらいだ。第1部分と比べると約1000字ちがった。あのキモい男の自称小説を上回ってしまっているではないか草。


 以上により、異世界終末宣言第2部は終了する。ようやくエッセイらしくなってきた。

 

 

 


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