第07話 帰路
四人は依頼を終え、帰路を歩んでいた。
今歩いている場所は
「結構な金額になったね」
ルークはそう言いながら、貨幣が入った袋をジャラリと鳴らした。
依頼料はギルドで支払われる。にも
ルークの手元に視線を向けたまま、クラリィは口を開く。
「かなりの数が居ましたからね。もしかしたら依頼料よりも多いかもしれませんよ?」
「そうだね。ギルドに戻ったら依頼料も含めて四等分しよう」
ルークのそんな言葉に、ベウロは若干の戸惑いを見せる。
「四等分? それは僕も含めて全員に等しく、ということですか?」
「うん。僕とフェミ、クラリィ、ベウロの四人で依頼を受けたんだから、それでいいんじゃないかな?」
フェミとクラリィは納得気な表情を浮かべていたが、ベウロはまだ腑に落ちないと言った様子だった。
「そんな、悪いですよ! 倒した魔物の数だって僕が一番少ないですし……」
「僕ら三人で依頼を受けるときは、いつもそうしてるんだ。だから気にしなくていいよ」
そんなことを言うルークを横目に、フェミは何かを思い出したように笑みを浮かべた。
「そういえば、クラリィも昔同じようなこと言ってたよね」
「誰だってこの状況になれば同じことを言いますよ。冒険者業自体が実力主義みたいな風習がありますし。同じクランに所属していないのなら尚更です」
それもそうか。そう言ってルークとフェミは頷いた。
「あの時、僕たちクラリィに何ていったんだっけ?」
「自分たちもそうして貰ったから。そんな話をしていただいた気がします」
それを聞いて、ベウロは興味ありげな表情を浮かべる。
「それって、ネロさんたちとの話ですか?」
「うん。確か、私とルークがまだ冒険者たちになりたての頃だったかな」
少し考え込んでいたルークも、そこまで聞いてようやく思い出す。
「僕たちがベウロよりも新米だった時、師匠たちと一緒に依頼を受けたことがあったんだ。確か、まだ実力を誰も知らないから師匠たちだけで依頼を受けられなかったんだよ。だからギルドマスターの紹介で、僕らと依頼を受けることになった」
「その後ルークとランドンのいざこざに巻き込まれて、師匠たちは『ロートを圧倒できるほどの実力者』として周知されるようになったんだったよね」
「うん。そこからは別々に依頼を受けてたんだけど、その時に師匠が受けた依頼の目的地がたまたまクラリィのいる村だったんだよね」
「はい。結果的に、私だけでなく村を丸ごと助けてもらいました。そして、私はそんなネロ様に憧れてギルドへと足を運んだ。そこでギルドマスターにルークさんたちと会わせてもらって、ネロ様の住居まで案内してもらいました」
「皆さんが巡り会えたのって、かなりの偶然だったんですね」
「そうですね。きっと、ネロ様がギルドに現れるタイミングが少しでもずれていればこうはならなかったと思います」
そんな思い出話に花を咲かせていた丁度その時、後ろから二頭の馬に大きな荷台を引かせている商人がやってきた。護衛のためか、荷台の前後には冒険者らしき人影がある。
四人は道の脇の茂みに動いて道を譲った。
四人が元の道へと戻った丁度その時、荷台から小太りの商人が降りてやってきた。
「もしかして、皆さんもギルドに?」
「そうですけど……」
突然やってきた商人に若干戸惑いながら、ルークはそう答えた。
それを聞いた商人は、それならばと荷台を指す。
「一緒に乗っていきませんか? 荷物と同じ場所に乗ることにはなりますけど、四人分のスペースぐらいならありますよ」
「……いいんですか?」
「実は私、あの街の出身でして――」
商人はそう言いながら、ルーク達がやってきた方向に視線を向けた。
「あなたたちが依頼を受けてくださったお陰で随分と助かったんです。せめてそのお礼にと思ったのですが、どうでしょうか?」
ルークは他三人と顔を見合わせると、笑みを浮かべて商人の方へと向き直った。
「そういうことなら、お言葉に甘えさせてもらいます」
☆
四人は少し窮屈な荷台で揺られていた。
窮屈とは言っても、ギルドまでの長い道のりを徒歩で移動するよりは余程ましだ。
時折前方から流れてくるそよ風を頬に受けながら、ベウロは
「こういったことはよくあるんですか? 僕はあまり遠い地域の依頼は受けたことが無いので、よく知らないんですけど……」
その問いにはルークが答えた。
「ほとんどないよ。そもそも、僕らみたいなのを乗せる余裕が無いのが普通だし」
商人というのは、町や村を物資を売買しながら経由する仕事だ。通常、人を乗せるような余裕が荷台に生まれることは無い。しかし、稀にどうしても荷台に余裕が生まれてしまうことがある。そう言った状況と、商人の人柄が重ならなければ乗せてもらえるようなことにはならない。
ベウロはそんな話を三人から聞いて、嬉しそうに口を開いた。
「じゃあ、僕らはかなりラッキーだったんですね」
四人を乗せた馬車は、ギルドまで不規則なリズムを刻みながら進んでいった。
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